改めての説明である。運賃100円を稼ぐのに、いくらのコストが生じたか?を示す「数字」である。
数年前のデータだが、東海道新幹線の営業係数は53であった。
すなわち、100円の運賃を稼ぐために生じたコストは53円で、残りの47円は利益となる。
一方で、営業係数が100を超えると赤字を意味する。
国鉄時代は毎年公表されていたが、JRになってから一切公表されなくなった。
理由は赤字が多いと路線廃止を心配する意見が出やすい事、黒字だと設備投資が消極的な場合お客から「新車を入れろ」等の苦情を受けやすいからだ。
先日の『東洋経済オンライン』で、鉄道ジャーナリストの梅原淳氏が独自に試算した最新のJR全線の「営業係数」を公開。
「”JR中央線”はどの区間で儲かっているか JR東日本・JR北海道の路線営業係数を独自試算」(東洋経済オンライン)
↑記事の内容はこちらを参照されたい。
算出方法は、国土交通省鉄道局監修の「鉄道統計年報」に掲載されている各事業者の営業損益に関するデータを基にした。
★札幌都市圏で大稼ぎ!一方で市街地では営業係数300円超えも
JR北海道の2015年度の決算が2016年5月9日に発表された。
同社単体の損益計算書によると、2015年度の営業収益は838億円であった。
そのうち鉄道事業における旅客運輸収入は685億円、営業費用は1,285億円で447億円の営業損失が計上。つまり、赤字だ。
これらの数値、そして同時に発表された同社の路線の区間別の平均輸送密度をもとに営業係数を梅原氏等が試算した。
下記JR北海道全線の「営業係数」を記す。
路線名の後に続く数字は、左側が1日1キロ当たりの平均通過数量(単位:人)、右側が営業係数(単位:円)となる。
紙面上では、区間を細かく分けて書いてあるが、当ブログでは路線全体の「数字」のみを記す。細かく知りたい方は上記リンクの紙面を参照されたい。
江差線・4,133人・175,4円
海峡線・3,706人・187,6円
札沼線・6,607人・133,3円
石勝線全線と根室線新得~帯広・3,870人・182,6円
石北線・1,142人・388,5円
釧網線・513人・582,5円
宗谷線・746人・489円
千歳線全線と室蘭線苫小牧~沼ノ端・44,784人・66円
根室線全線(新得~帯広を除く)・976人・424,2円
函館線・10,649人・104,5円
日高線・185人・811,6円
富良野線・1,477人・333,6円
室蘭線(苫小牧~沼ノ端を除く)・4,303人・171,6人
留萌線・154人・844円
↓
JR北海道全線・4,726人・161,7円
※北海道新幹線開業で他社移管した江差線も含んでいる。
※北海道新幹線の営業係数は試算していない。
※昨年JR北海道が公表した営業係数とは数字が異なる
↑721系
↑731系
↑特急「スーパーカムイ」の789・785系
いずれも札幌都市圏でしか運転されない電車だ。
「札幌都市圏」の定義は、函館線の小樽~札幌~岩見沢、千歳線と室蘭線の苫小牧~沼ノ端となる。
札幌都市圏各線の営業係数は、いずれも60円台と超優良経営だ。
しかし、JR北海道が公表している「数字」では札幌都市圏でも営業係数は100円を超える(つまり赤字)としている。
「60円台」と言う営業係数は全国見ても、数えるほどしかない。
札幌都市圏の稼ぎが北海道全体の鉄道を支えていると言って良い。
↑室蘭線室蘭支線母恋駅
↑室蘭駅。室蘭市の中心部はここ。
以外に営業係数が高いのが室蘭支線。349円と言う数字が出た。
理由としては、平均通過数量が1,366人と少ないため。
しかも、全線電化複線で維持費等も考えれば、こういう悪い数字が出ると分析している。
個人的に意外だったのが富良野線。1,477人に対して333,6円。
まさに「北海道らしい景色」が広がり、地元の人や観光客利用も多い。立っている人も多く出ていた。
私が乗った時はたまたまそうだったのかもしれないが、「数字」に置き換えた時かなり厳しい現実がわかってしまった。
いずれも、お客が乗ってくれそうな場所なのに、実際には乗ってくれない。それが逆に足を引っ張る形になっているため、非常にもったいない。ここでの営業係数を向上したい所だ。