★営業係数とは?

改めての説明である。運賃100円を稼ぐのに、いくらのコストが生じたか?を示す「数字」である。
数年前のデータだが、東海道新幹線の営業係数は53であった。
すなわち、100円の運賃を稼ぐために生じたコストは53円で、残りの47円は利益となる。
一方で、営業係数が100を超えると赤字を意味する。
国鉄時代は毎年公表されていたが、JRになってから一切公表されなくなった。
理由は赤字が多いと路線廃止を心配する意見が出やすい事、黒字だと設備投資が消極的な場合お客から「新車を入れろ」等の苦情を受けやすいからだ。

先日の『東洋経済オンライン』で、鉄道ジャーナリストの梅原淳氏が独自に試算した最新のJR全線の「営業係数」を公開。

「”JR中央線”はどの区間で儲かっているか JR東日本・JR北海道の路線営業係数を独自試算」(東洋経済オンライン)

↑記事の内容はこちらを参照されたい。
算出方法は、国土交通省鉄道局監修の「鉄道統計年報」に掲載されている各事業者の営業損益に関するデータを基にした。

★やはり首都圏で多く稼ぐJR東日本。地方ではもう少しで黒字になる路線が多い

JR東日本は各路線の営業収支自体は公表していない。
「路線別ご利用状況」と題して2005年度以降の同社の各路線、一部の路線では区間ごとの旅客 輸送密度(旅客人キロを年度内の営業キロで除した指標。平均通過人員ともいう)を発表している。
近年は路線ごとの旅客運輸収入も公にするようになったため、営業収支の試算に当たり、より誤差の少ない数値を求めることが可能だ。

JR東日本各路線の2014年度の営業収益のうち、旅客運輸収入は「路線別ご利用状況」に記されている数値を当てはめた。
総額は1兆7,262億900万円となる。
「2014年度期末決算について」によれば、同社は鉄道事業において1兆9,660億円の営業収益を計上。
その他の収入は2,397億9,100万円。この数値を営業キロの比に応じて各路線に分配した。

下記JR東日本全線の「営業係数」を記す。
路線名の後に続く数字は、左側が1日1キロ当たりの平均通過数量(単位:人)、右側が営業係数(単位:円)となる。
紙面上では、区間を細かく分けて書いてあるが、当ブログでは路線全体の「数字」のみを記す。細かく知りたい方は上記リンクの紙面を参照されたい。

吾妻線・2,364人・209,6円
赤羽線(埼京線の池袋~赤羽)・724,382人・68,3円
左沢線・3,327人・218,7円
飯山線・704人・248,8円
石巻線・1,187人・242,6円
五日市線・26,658人・113,4円
伊東線・16,816人・90円
岩泉線(※1)46人・758,1円
羽越線・2,557人・207,8円
内房線・20,500人・128,4円
越後線・6,185人・182,3円
奥羽線・5,140人・155,4円
青梅線・63,427人・86,2円
大糸線(※2)・5,691人・175,7円
大船渡線・635人・248,5円
大湊線・598人・245,6円
男鹿線・2,319人・235,9円
鹿島線・1,275人・234,8円
釜石線・870人・239,1円
烏山線・1,445人・242,1円
川越線・54,160人・89,9円
北上線・335人・256,8円
久留里線・1,262人・246,3円
京葉線・167,951人・71,4円
気仙沼線・275人・255,2円
小海線・1,176人・234,8円
五能線・629人・249,5円
相模線・26,911人・98,5円
篠ノ井線・11,468人・118,5円
上越線・6,225人・164,7円
常磐線・76,248人・73,4円
信越線・7,895人・160,8円
水郡線・1,743人・237,5円
仙山線・9,536人・158,1円
仙石線・16,843人・115,1円
総武線・200,339人・69,5円
外房線・35,188人・103,9円
高崎線(大宮~高崎)・114,691人・76,1円
田沢湖線・6,918人・111,4円
只見線・304人・257,5円
中央線(※2)・153,788人・65,3円
津軽線・2,575人・188,5円
鶴見線・13,942人・132,3円
東海道線(※2)・346,376人・87,4円
東金線・8,458人・172,4円
東北線・79,685人・83円
成田線・14,100人・124,1円
南武線・156,754人・76,8円
日光線・5,278人・191,7円
根岸線・176,932人・65,1円
白新線・16,464人・130,9円
八高線・8,680人・362,4円
八戸線・1,079人・235,8円
花輪線・403人・256,2円
磐越西線・1,923人・227,6円
磐越東線・1,522人・238円
水戸線・7,031人・178,4円
武蔵野線・108,086人・81,9円
弥彦線・2,485人・220,3円
山田線・279人・257,6円
山手線・1,077,568人・51,5円
横須賀線(大船~久里浜)・62,173人・81,1円
横浜線・224,687人・68円
米坂線・388人・257,3円
陸羽西線・409人・252,3円
陸羽東線・980人・245,3円
両毛線・11,089人・164,5円

在来線合計・51,411人・93,1円

東北新幹線・58,080人・55,4円
上越新幹線・43,584人・49円
北陸新幹線(高崎~長野)・21,250人・59,9円

新幹線合計・58,680人・54,1円

JR東日本合計・52,515人・82,1円

※1・岩泉線は既に廃止。2009年のデータを書いた
※2・JR東日本管内のみ



↑京浜東北線のE233系1000番台。「京浜東北線」はあくまでも愛称で、正式名称ではない。JR東日本の営業係数100以下の路線ではE233系が広く活躍する。

基本的な話になるが、例えば東京~大船は横須賀線と京浜東北線と湘南新宿ラインの電車は「東海道線」、同様に東京~大宮は高崎線・埼京線・京浜東北線の電車は「東北線」として計上。
山形新幹線の福島~新庄は「奥羽線」で、秋田新幹線の盛岡~大曲は「田沢湖線」で、同大曲~秋田は「奥羽線」として計上。

やはり首都圏では、お客が多いため営業係数100以下(黒字)が目立つ。「E電」(電車特定区間)ではほとんどが黒字だ。
一方で、東北・信越地方のローカル線はどこも100以上(赤字)となっている。平均通過数量も少なく、営業係数も100以上で「赤字の垂れ流し状態」。「数字」だけで見てしまえば、バスが妥当と思われる路線も目立つ。
東日本大震災の津波等で被災した東北地方のローカル線に対して、鉄道による復旧ではなくBRTで本復旧させたいと言う本音がよく伝わる。
それは、只見線でも言える事で水害から5年たった今も復旧しないのは、「只見線は辞めたい」と言っているようなものだ。なお只見線の営業係数は257円である。

県庁所在地周辺ではもう少しで100を切る事が出来る路線も多く、例えば信越線の長野~篠ノ井、東北線の仙台~白石、仙山線の仙台~愛子、仙石線、奥羽線の秋田~追分で、これら地域では鉄道利用も少なくない事を示す。頑張れば営業係数100以下で黒字達成もあり得る。
 
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