改めての説明である。運賃100円を稼ぐのに、いくらのコストが生じたか?を示す「数字」である。
数年前のデータだが、東海道新幹線の営業係数は53であった。
すなわち、100円の運賃を稼ぐために生じたコストは53円で、残りの47円は利益となる。
一方で、営業係数が100を超えると赤字を意味する。
国鉄時代は毎年公表されていたが、JRになってから一切公表されなくなった。
理由は赤字が多いと路線廃止を心配する意見が出やすい事、黒字だと設備投資が消極的な場合お客から「新車を入れろ」等の苦情を受けやすいからだ。
先日の『東洋経済オンライン』で、鉄道ジャーナリストの梅原淳氏が独自に試算した最新のJR全線の「営業係数」を公開。
「JR大赤字路線は100円稼ぐのに800円もかかる」(東洋経済オンライン)
↑記事の内容はこちらを参照されたい。
算出方法は、国土交通省鉄道局監修の「鉄道統計年報」に掲載されている各事業者の営業損益に関するデータを基にした。
★全体的に営業係数が悪化しているJR九州
JR九州の最大の課題は、「本業の鉄道事業を黒字化する事」である。
今年秋に株式上場を予定しており、同社全体としては過去最高の収益を更新し続けている。
しかし、収益の半分以上は鉄道事業以外の「副業」で稼いだもの。
鉄道事業は毎年150億円前後の赤字を計上しており、徹底的なコストカットを実施している。それが実ったのか2017年3月期決算で同事業は黒字計上出来る・・・と言う一部報道があった。
4月には「熊本地震」が発生しJR九州の鉄道施設も被害を受けた。修繕費等で余計な出費も生じており、一部不通路線もある事から黒字計上は微妙な所なのかもしれない・・・と個人的には思う。
JR九州は博多~鹿児島中央で新幹線を営業するようになった。博多に同社の新幹線が乗り入れたメリットは極めて大きく、新八代以南でしか営業していなかった2008年と比較すると、営業係数が112円だったのが、今回(2013年)が91円と大幅向上している。
ところが、会社全体で見れば悪化している。2008年が102円だったのに対して今回(2013年)は109円。
↑ポイントになるのが、「JR九州の山陽線」。下関~門司の1駅だけだが直流電化となっており、小倉方面に直通するためには415系(写真)のような交直流電車が必要だ。
製造コストは極端に高い。1駅のためだけに交直流電車製造を躊躇っている。JR東日本で不要になった415系を中古として購入しているほどだ。
個人的には、交直流電車が買えないならば、気動車にしても良いのでは?と思う。
もし、「JR九州の山陽線」のお客が多いならば交直流電車を導入したくなるだろうが、現実は甘くない。これがJR九州の現実を示している。
2008年は営業係数103円だったのに対し、今回(2013年)は同120円と大幅に悪化している。
こんな成績では、新車の導入は難しい。
営業係数が悪化する理由としては、少子高齢化で鉄道利用そのものが減少、高速バス等の他の交通機関にお客を奪われているためだ。とは言え後者と矛盾するかのように、平均通過数量は増えている路線が多い。
下記JR九州全線の「営業係数」を記す。
路線名の後に続く数字は、左側が1日1キロ当たりの平均通過数量(単位:人)、右側が営業係数(単位:円)となる。
指宿枕崎線・3,534人、231,5円
大村線・5,331人、150,7円
鹿児島線・33,905人、75,3円
香椎線・6,165人、182,4円
唐津線・2,393人、271,2円
吉都線・517人、416,2円
久大線・2,291人、227,5円
後藤寺線・1,354人、331,2円
篠栗線(福北ゆたか線)・21,170人、85,3円
佐世保線・6,866人、133,4円
山陽線(※)18,647人、120,4円
筑肥線・10,539人、146,6円
筑豊線(若松線・福北ゆたか線・原田線)・5,497人、148,5円
長崎線・14,531人、96,9円
日南線・797人、382円
日豊線・9,497人、115,1円
肥薩線・552人、378,7円
日田彦山線・1,429人、325,7円
豊肥線・3,439人、187,2円
三角線・1,634人、311,6円
宮崎空港線・1,636人、264,1円
↓
JR九州在来線全線・10,159人、114,1円
九州新幹線・17,311人、91円
JR九州全線・11,068人、109,6円
※はJR九州管内のみ
2008年と比較すると、平均通過数量はほとんどの路線で向上している。お客を増やそうとするJR九州の営業努力もあるだろう。
一方で営業係数は悪化している。前述の事が影響しているからだろう。
営業係数が200円以上となっている路線も多く、ほとんどはローカル線。ここの数字を良くする事もポイントだ。
同社全体的に徹底的な合理化が進行しているが、サービスダウンになったら意味がない。お客が減る一方だ。それをやりつつもサービスアップしてお客が増えるように努力されたい。