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 重大な国民への背信である。こんな稲田防衛相と自衛隊に、隊員を海外派遣する資格があるとは思えない。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣されている陸上自衛隊部隊の日報をめぐり、「廃棄した」としていたデータが、陸自内に保存されていたことが新たに判明した。

 しかも情報公開請求への不開示決定後に、データが削除された可能性が指摘されている。事実なら、組織的な隠蔽(いんぺい)行為があった疑いが濃い。

 問題の日報は、昨年7月の首都ジュバの状況を「戦闘」と記していたが、政府は「衝突」と言い続けた。「戦闘」と認めれば憲法との整合性がとれなくなり、派遣の正当性が崩れるのを恐れたからだ。

 その日報が情報公開請求されると、防衛省は昨年12月、「廃棄した」として不開示を決定。その後、統合幕僚監部でデータが見つかったとして一部を公開したが、じつは陸自にもデータはあったということだ。

 稲田氏がこのことを知っていたなら、明確な虚偽答弁を繰り返していたことになる。

 知らなかったとしても、陸自の「隠蔽」を見抜けなかったことになる。自衛隊の海外派遣という重要政策で、結果として国会で虚偽の答弁を続け、国民に誤った情報を示した責任は免れない。文民統制の観点からも、稲田氏の責任は極めて重い。

 陸自が「隠蔽」したとすれば、それはなぜか。

 自衛隊派遣を継続し、「駆けつけ警護」など新任務付与の実績を作りたい――。そんな政権の思惑に合わせ、派遣先の厳しい治安情勢を国民の目から隠そうとしたのではないか。

 その背景には、制服組の役割をより重視する安倍政権の姿勢もあるようにみえる。

 稲田氏は、直轄の防衛監察本部に「特別防衛監察」の実施を指示した。事実関係を徹底的に調べ、速やかに公表するのは国民への当然の責務だ。

 きのうの国会で稲田氏は「防衛省、自衛隊に改めるべき隠蔽体質があれば、私の責任で改善していきたい」と強調した。

 だが、稲田氏は「森友学園」の代理人弁護士を務めたことをめぐり、事実に反する国会答弁を繰り返し謝罪したばかりだ。

 自らの言葉の信頼性が揺らぐなかで「私の責任で改善を」と言っても説得力を欠く。

 稲田氏を一貫して主要ポストに起用してきた安倍首相は、どう対応するのか。「徹底して調査してほしい」と言うだけで済むはずがない。

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