16日、ジャスダック市場に新規上場したほぼ日株は買い気配のまま上場初日を終えた。終日買い注文が優勢で、取引が成立しなかった。同日午後に東京証券取引所で記者会見した社長の糸井重里氏は上々のスタートに「高く評価してくれるのは、『美人だ、美人だ』と言ってくれるようなもの。でも自分で鏡を見れば、そんなに美人じゃない、って分かっている」と話した。
■初日は気配値の上限まで
ほぼ日は、著名コピーライターの糸井氏が立ち上げた個人事務所が前身。ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の運営や、サイト読者の声をもとに開発した「ほぼ日手帳」など、生活関連商品の販売を手掛ける。
2017年8月期の単独売上高は前期比1%増の38億円、税引き利益は8%増の3億2900万円の計画。今期の年間配当は45円を見込む。小粒といえど、糸井氏の知名度もあり、株式市場で投資家の関心が高かった。
上場初日の16日、気配値は公開価格(2350円)の2.3倍の5410円。きょうの気配値の上限まで切り上がったが、糸井氏が経営トップをつとめている企業への「著名人ボーナス」とみる向きも多い。DZHフィナンシャルリサーチの田中一実アナリストは「業績や株主還元といったファンダメンタルズとはかけ離れた株価」と評価する。
■「化けの皮がはがれてくると思う」
売上高の約7割を占める手帳は季節性が高く、すでに市場が成熟期にある商品だ。田中氏は「販路開拓に力を入れれば伸びそうだが、ほぼ日は無借金経営の安全運転志向。成長性は限られる」と指摘する。
糸井氏自身、そうした見方を知っている。会見中、ほぼ日について「お相撲さんがちゃんこ屋をやっているような感じに思われていた」などと発言。「身に余る光栄。だんだん化けの皮がはがれてくると思う。でもそれがかわいいんだよねって言われたらうれしい」とも述べた。
上場で調達した資金は既存事業を強化するための人件費に充てるほか、新事業の投資などに振り向けるという。上場は「のほほんとしてる」(糸井氏)というほぼ日をビジネスとして印象づけるきっかけにすぎないのかもしれない。
(岸本まりみ)