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2016年10月21日(金)
緊急出演…米・戦略家 中国『新局面』を分析

ゲスト

エドワード・ルトワック
米戦略国際問題研究所上級顧問
小原凡司
東京財団政策研究調整ディレクター兼研究員

世界的戦略家が読む『世界』 ドゥテルテ大統領『米と決別』
反町キャスター
「ルトワックさん、ドゥテルテ大統領について聞きたいのですけれども、ドゥテルテ大統領はこういう発言を北京でしています。『軍事的にも経済的にもアメリカとは決別する。アメリカは敗れた』と。こういうようなことをドゥテルテ大統領が発言して拍手喝采を浴びていたのですが、まずドゥテルテ大統領の発言、どのように感じますか?彼のこの発言の狙いは何だと分析されますか?」
ルトワック氏
「私は、ドゥテルテ大統領はおそらく売りたいのだと思いますね。島の石、1個1個を10億ドルで売りたいのだと思います。中国がそれを払ってくれるのであれば、中国が大きく投資をしてくれるということであれば、それを受け入れるでしょう。もし受け入れないということであれば、最も反中国的な人に、アジアの中で1番、反中国的になるでしょう」
反町キャスター
「1個1個を売るというのは、つまり、問題となっているのは?」
ルトワック氏
「私が言いたいことは、たくさんお金がほしいということですよ」
反町キャスター
「このまま現在の状況で言うと、ドゥテルテ大統領は北京からたくさんの資金援助を取れるような流れに見ていますか?その可能性をどう見ていますか?」
ルトワック氏
「わからないです。だけど、これが起きた理由というのは、この人が非常に批判を強くしたからですね。同じ日ですよ。大統領になった同じ日に強く非難をされたと。オバマ大統領から強く非難されたと。それで強い政策を、薬物取締りということで。結局フィリピンの国民が、この大統領に投票したのはタフだからですね。強い姿勢だからです。ところが、強行姿勢だからと言うことで、外から批判をされたというのは、危険にさらされたと思ったんです。フィリピンというのは軍事クーデターが起きる国だからです。大統領というのは脆弱な立場だから支援が必要です。と言うことで、このように政治的な反応をしたんです」
反町キャスター
「最初の、アメリカのオバマ政権のドゥテルテ大統領に対する批判が、全ての失敗のもとであって、最初にああいうこと、人権を振りかざした批判をしなければ、こんなに事態は混乱しなかったと。つまり、現在の事態の、混乱の原因の1つは、オバマ大統領のコメントにあった。アメリカが悪いというような話になるのですか?もう少し丁寧にやれば良かった?」
ルトワック氏
「私の意見は、結局は非常に限定的な条件によっているものですけれども、私はマニラに行ったんです、大統領が誕生した最初の週に行きました。顧問に会いました。元のラモス大統領ですね。皆に、ラモス元大統領が非常に誠実な人間として尊敬をされているんです。元大統領のラモス氏が、新大統領のドゥテルテ氏というのは非常に弱いと。と言うのは、大きな家の出身ではないからということですね。デバー出身だと。これはマイナーな場所ですね。しっかりとした軍との関係もないということですので、外交的な支援が必要だということですね。外交的な支援を得るどころか、攻撃をされたと、批判をされたということが、この状況をつくってしまいましたね。だけれども、この関係です。フィリピンと軍との関係というのは、フィリピン軍はアメリカとの関係に依存しています。従って、私が言っているのですけれど、中国はフィリピンに黄金の投資をしないと。結局は反転するということです。1年か6か月か、ドゥテルテ大統領は、結局は中国を攻撃することになりますよね。お金が来なければ。それがフィリピンでは当たり前のやり方です。フィリピンのエリートというのは、実際には中国系の人達です。スペインの名前がついています。アキノとか、そういう名前がついているのはもともとは中国系の人達ですけれど。でも、アメリカ寄りではありません。しかし、軍はアメリカ寄りです。これまでの歴史、軍事クーデターの歴史です。ですから、大統領になった場合はここで、この国というのは、クーデターが起き得るということをわかっていなければなりません。ですから、アメリカの支援が必要なんです。アメリカから批判なんてもってのほかです」

安倍首相への『アドバイス』
松村キャスター
「ルトワックさんは一昨日、安倍総理と会談をされたそうなのですが、これはどんな話があったのでしょうか?少し教えていただけますか?」
ルトワック氏
「ダメです。これは内々の話なのでお話はできない。いつもの話題です。それ以上は言えません。それは重要ではないんです。日本の総理の政策は非常にはっきりとしているからです。ワシントンもよく理解をしていますし、モスクワでも、北京でもそうです。非常にはっきりしています」
反町キャスター
「ただ、来週、たとえば、ドゥテルテ大統領が日本に来る。ドゥテルテ大統領が日本に来るにあたってどう迎えたらいいのかとか、もっと長期的な年末に向けての総理の最大の外交課題はロシアです。ロシアとどのように接近していくことが、それが、たとえば、日米関係にどういう影響をもたらすのか。中国を視野に入れた時に、日露関係がどのように見えてくるのかという。そういう意味において、ルトワックさんのアドバイスというものが、総理の心にはまる部分がたくさんあったと思うのですけれど、中国のことだけではなく、アジアに関してのオールラウンドな安全保障について意見交換をされたと、こういうことでよろしいですか?」
ルトワック氏
「こう申し上げましょう。ロシアは戦略的な文化があります。簡単に申し上げると中国は何でもできますが、戦略はダメです。ですから、歴史において敗れてきたんです。繰り返し敗れてきたのです。3人の馬に乗った人達が中国を征服しました。それが中国の歴史です。その人達が、清朝、モンゴルなどです。ロシアは、反ロシアなんですね。ロシア人は良くないということは言えますけれども、ロシアは戦略が得意なんです。世界最大の国家を持っています。そして少しずつ自分達で獲得していったんです。日本の近隣諸国の中にはロシアがいます。ロシア人は中国が非常に強くなれば同盟国になる。日本の同盟国になる。アメリカの同盟国になると理解していると思いす。中国が強くなったら、わかりませんが、多くのことが起こり得ます。たとえば、ある点に到達して、そのあと成長しなくなるかもしれません。しかし、中国が一本調子でドンドン成長していけば、当然ながら、不可避でありますけれど、ロシアと日本がインドと連合を組み、アメリカも連合を組むことになるでしょう。ロシアの主導者は日本の指導者が嫌いだとしても、お互いに嫌い合ったとしても同盟国になるでしょう。チャーチルとスターリンと同じです、第二次世界大戦の時です。ニクソンも最も反共の大統領でしたが、毛沢東に会いました。最も反資本主義、反米の主席です。協力した、なぜか。それは旧ソ連が強すぎたからです。ですから、ロシア、戦略と、我々対応しているわけです。しかし、中国に対応をする時には非常に大きな自閉症の子供のような存在と対応をしているわけです。外交をまったく理解をしていない人達もいます。それが違いです」
小原氏
「中国も、ロシアも、実は東でも、西でもゲームをしている。ヨーロッパに行くとロシアの脅威しか聞かないし、東に来ると、日本は中国のことが脅威だと感じているということなので、もちろん、中国に対応する時はロシアと組むということは十分考え得ることだと思いますけれども、ルトワック氏がおっしゃったように、ロシアというのは戦略があるというのが、中国に比べてもっと怖い感じがします。中国というのは、単純な子供のようで、気に入らなければ暴力を振うというところはあると思います。ですから、そのバランスをどうとっていくかだと思います。単純にロシアと組むと今度はロシアの方が怖くなるかもしれない。ロシアは中国が一方的に勝たないように、南シナ海でベトナムを支援していますね。他のところでもそうです。ロシアは中国のことを信用していませんので、そういったことを、日本はうまく利用をするべきだとは思います」

中・露・北朝鮮&安倍外交
反町キャスター
「ロシアのどこを信頼すればいいのか?もしかしたら日本にとって1番大切な問題でもあるんですよ」
ルトワック氏
「ロシアの自国の利益を守るということについては100%信頼ができます。シベリアをロシアのままにしておく。中国に盗られないようにするでしょう。問題は人口です。ロシアの人口は非常に少ないですね。イルクーツクからウラジオストクまで800万人です。現在は600万人かもしれません。ロシアの大きな国益というのはシベリアをロシアに留めることです。投資が必要です。外国の投資を必要としています。日本の投資、その他の投資も。日本の視点からすれば、シベリアに投資することができれば、赤字を出さぬうちにですね。そうすればロシアはシベリアに留まるでしょう。ですから、日本の国益でもあるんです。ロシアにシベリアにいてもらう。中国に奪われないようにすると。ここで協力の基盤があると思います、ロシアと日本の間に。他の理由がないとしても、それだけで十分な理由になると思います。協力する理由になると思います。シベリアを、ロシアのものにしておくためにです。そのためには人々が必要です。人は仕事がそこにあれば残ります。投資があれば、仕事があります。投資はどこの国から来るかわかりせんが、日本から来るのが高いと思います。しかし、ロシアは公的な保証を与え、条件を整える必要があります。日本のビジネスマンがロシア、シベリアで仕事ができるようにです。官僚制や税金が高かったり、汚職の問題などなしに。そうすれば、日本政府は、ロシアとそれについて交渉をする必要があると思います。日本の企業、大企業も中小企業も、シベリアに安全に行って、投資ができる。遠くないわけですから。近いですよね。多くの資源があります。木材もありまし、石油もあります。多くのことがシベリアでできると思います。しかし、日本政府はロシアに要求をすべきです。ルールを変更し、日本企業が投資できるようにするんです。それは協力の確たる基盤となると思います。ビジネスでもありますが、戦略です。こうすれば、ロシアは中国と対面し、中国の壁だけと対面することではなくなります」
反町キャスター
「昨日、アメリカの大統領選挙のディベートがありましたが、優勢と言われるクリントン候補は、自分のメール問題の、ウィキリークスの背景にはロシアがいる、プーチン氏がいると言って、ロシアに対する嫌悪感を露骨に出していますね。ルトワックさん、中国の脅威に対しては、アメリカ、ロシア、日本、インドの連携というのは可能ではないかという話をされましたけれども、少なくとも次の大統領は、大統領になる前からロシア批判を大展開しているわけではないですか。アメリカとロシアの関係というのは、日本とロシアの関係みたいに信頼が築かれる可能性というのはあるのですか?」
ルトワック氏
「現在、非常に残念な関係だと思います。とても残念です。と言うのは、ロシアが行動を起こした時、ロシアらしいやり方で行動を起こしたんです。しかし、アメリカはアメリカらしい行動をとりませんでした。どういう意味なのかと言うと、アメリカの文化というのは強さの文化です。強さと行動の文化です。ところが、強さと行動を示す代わりに批判をしたのです。アメリカ政府がプーチン氏はギャングだ、悪いと批判をするわけです。これはとても間違っています。クリント・イーストウッドは映画で、ロシアを批判しませんでした。お前は悪いやつだなんていうことは言いません。ただ銃で撃つだけです。それがアメリカのやり方です。具体的に何が起こったか言うと、ロシアはクリミアを併合しました。ロシアらしいやり方でです。中国が尖閣諸島と叫びながら何もしないのとは違います。プーチン大統領はクリミアと言いました。クリムというのがロシア語ですけれど、クリムと言ったんですね。1度だけです。演説においてです。歴史についての演説の中でです。2回目には現代史について演説しました。3回目にクリムと言った時にはクリミアに入っていたのです。尖閣、尖閣と言って行動を起こさないのとは違います。ロシアはこうやって行動を起こすのです。ですから、アメリカの答えは、ヨーロッパの同盟国のところに行って、あなたは1万人、あなたは1万5000人、あなたは3万人の兵士を出してくれ、大きなNATO(北大西洋条約機構)の部隊をポーランドに、ルーマニアに展開すると言うべきだったんですね。ルーマニアはNATOの加盟国です。国境にあります。ポーランドもそうです。多くの兵力をそこに派遣します。多くの兵力を派遣すれば、それから交渉を始めるんです。ところが、何が起こったかというと、動員の努力は何も行われませんでした。フランスはそうしたくないと言いました。イタリアはビジネスにとって良くないと言ったんです。ベルサーチの服をモスクワで売りたいと考えていたのです。ドイツはポーランドに派兵はできない。我々はドイツ人だからと言ったんです。難しいことは確かです。ただ、冷戦時代は常に難しかったのですが、でも、毎回そうしてきました。常に難しかったのです。容易だったことはありません。この強い外交的な難しい努力をしなかったのです。大きな国も、小さな国も、ルクセンブルクは400人の兵士を派兵しました。しかし、冷戦時代はそうしてきたのです。デンマークから一部、ルクセンブルクから一部。この猫も犬もロシアの熊と対峙したわけです。でも、多くの犬と猫がいれば十分だったんです。現在はそうした努力が行われていません。プーチン氏を批判するだけです。彼はそんなことは気にしません」
反町キャスター
「中国とロシアの違い。ロシアというのは戦略的で喋っている間に軍隊を派遣の話。中国が喋っている間、尖閣と言ってもなかなか来ないのではないかと。中国とロシアの比較、どう見ていますか?」
小原氏
「まず中国が手を出さないのは勝てないからですね。非常にシンプルです。中国は、あるいは人によっては永遠にアメリカに勝てないと明確に言っています。勝てないけれど、それを何とかしたいと思って一生懸命に攻撃をする。威嚇をするのですけれども、実際にそれでやられてしまうとかえって困ってしまう。これは南シナ海の航行の自由作戦でも行われたことです。ロシアは躊躇せずに軍事力を使うということが影響力の源泉だと思いますが、それでもパワーの源泉、オリジナルのパワーは経済だと思うんですね。これがロシアはまだ回復していない。先ほど、ルトワック氏はアメリカが強く出なかったというお話をされました。もちろん、クリミア半島を併合されてしまったので、それは正しいと思います。ただ、その結果として、ロシアは西ヨーロッパの国々と経済協力をするというゲームは失敗しました。そのために現在、東へ来ているわけですが、これはルトワック氏が(言うように、ロシアが)日本から経済的な支援を引き出そうとしていると思います。日本は北方四島の話がありますから、どちらかと言うと、こちらからお願いをするような感じになりがちですけれども、本当はロシアが日本を利用したいのだと。必要としているのだということを、もっと利用すべきだと。ですから、先ほどおっしゃったような、シベリアの問題ももちろん、そうでしょう。ロシアは中国の方がこの地域において、人口でも、軍事力でも、圧倒的に圧力が高いということをずっと恐れていますので、そういったことを日本は反対に利用しかえさないと、ルトワック氏がおっしゃるような、同盟なり、協力ということにはなかなかいかないと思います」

中国『外交戦略』の変遷
松村キャスター
「ルトワックさんは今年の春、『中国(チャイナ)4.0 暴発する中華帝国』という本を出版されました。この中で中国の外交戦略について、ルトワックさんは2000年代以降3段階に分けて変化してきたと分析しています。まずリーマンショック後の2009年までが中国の、外交戦略の最初のバージョン中国1.0。平和的台頭です。他の国や国際秩序の脅威とはならない形で中国に経済発展をもたらしました。ところが、リーマンショックを経た2009年末頃から中国2.0。対外強硬路線に変化。周辺の国々から反発を受けることになります。2014年秋。北京でAPEC(アジア太平洋経済協力)が開かれた頃から中国3.0。選択的攻撃に変化したとしています。この外交戦略の変化は、中国のどんな側面を表していると見ていますか?」
ルトワック氏
「こういった区別をして議論をすることは可能だと思いますが、全ての人に明確なことがあります。つまり、中国の外交政策は変わったという点です。3回変わってきました。10年間で3回変化をしたのです。それが起きたのは、外交政策がよく変わるのですが、小さな国ではよく変わります、アフリカの独裁主義国では変わります。大きな国では外交政策はそんなに大きくは変わらないです。そんなに早くは変わらないです。中国の場合はどうですか。まず平和的な台頭です。平和的な台頭があって、政策が公的に発表されたということです。2004年に公表されました。その後リーマンショックがありましたね。金融危機が起きました。アメリカが崩壊したと思ったんですね。中国は台頭していると。中国は10%の経済成長率だと。アメリカはマイナス5%だと。そうなると、だったら、数年間でアメリカよりも大きくなるよと考えたんですね。それですぐにインドと喧嘩を始めました。北東インドと。また、ベトナムとも。日本ともです、尖閣諸島を巡って、対決するようになりました。要求を出すわけです。これはうちの領土だと。そして南シナ海ですね。南シナ海というのはずっと前からの問題ですね。それは1938年ですか、1945年ですか。そのぐらいからずっと、急に古い文書を出して、これは全部我が領土だと言い始めました。と言うことで、これは誤解ですね。グローバルなバランスを誤解しているんです。中国は完璧に読み間違いをしたのです。インドが押し戻し、ベトナムも押し戻し、日本も押し戻しということで、この3回目の外交政策ですね。つまり、もう強い国には押しませんと。ただ、フィリピンは押すと。フィリピンは弱いから。抵抗したというところで3つの政策をとりました。この本でも言っていますけれど、私は日本の戦略の専門家、奥山氏と一緒にこれを書きました。奥山氏は戦略論の博士号を持っていらっしゃいます。私だけの著作ではないです。今回は共同の作品です。私達はこの本で端的に述べています。しかし、1つ明確な点があります。つまり、誰も論破ができない点。つまり、論破できないというのは、中国が外交政策を10年間で3回変化した点。これは誰も論破できない点ですね。これまで誰も言わなかったような不安定性が大きな国にやってきたということを示しています」
反町キャスター
「外交政策の変化というのは、たとえば、政権交代して変化するというのであれば、わかるのですけれども、政権交代とは違うところで外交政策が変化している。それは、つまり、中国の意思決定というのがずっと一貫している。変化していながらも、同じ方向を通して、一貫しているものはないのですか?」
ルトワック氏
「とてもこれは見極めが難しい点ですが、はっきりわかっている点は中国の指導者、つまり、習近平氏の下では、常任委員会は7名からなるわけですね。皆が青いスーツを着ていますね。皆が同じネクタイをしています。皆が同じ髪型をしていて、皆が同じような髪の色にしているのですけれども、そうすると、この人達は、外交政策は目にないわけですよ。この政治局で外交政策に照準を合わせているわけではないです。外郭の人達ですね。国務委員会の周りの人達です。この人達はほとんど声をあげないんです。ですから、非常に奇妙な状態ですね。つまり、冷戦時代というのは非常に危険な時代でした。冷戦はとても緊迫した状態でした。常にソ連の意思決定が組織的に行われてきたのです。全ての外交の政策というのは政治局にもたらされました。ブロムイコ外相という人が非常に重要でした。全て外交政策を仕切っていました。KGBが諜報を持ってきました。それを見ながら耳を傾けたのです。それで意思決定しました。意思決定を紙に書きました。その紙が机の上を回って、皆が署名をしたのです。と言うことは、毎日、毎日、情報が、全てのことが、ソ連の外で起こっていることがわかっていました。ですから、ソ連の外交政策は非常に統制が効いているものでした。何も事件はなかったわけですね。ソ連はアメリカに対して何も衝突するということはなかったわけです。中国とは違うんです。海での衝突とか、空でのいがみ合いとか、そういったことはあるんですね。中国のシステムでは政治局というのはブリーフィングをされないです。外相のブリーフィングをしないです。外相は2段階下に置かれているのです。中国の外相というのは政治局の一員ではありません。また、常任委員会の一員ですらないです。政治局の一員でもありません。どこか外側にいるということで、近い距離にさえいないということで、そうなると、非常に奇妙な意思決定の仕組みになっている。こういった事件、船の事件ですね。また、空で非常に近接空域に入ってきたということもありました。アメリカと中国の間、日本と中国の間、よくあることですね。ベトナムと中国もあります。果たしてこういったことが起きるというのは、これは中国が決めたことかどうかわからないですよね。それはやれと言ったのか、それは、ただ、地元の人が決めたのかどうかもわからないです。本当にその船の船長が決めたということかもしれないですね。中国の現実はそんな感じです。ですから、非常に明確なメッセージを発しなくてはなりません。それがやるべきことです。そうでないと理解してもらえないです」
反町キャスター
「中国3.0という選択的攻撃というステージまで外交的戦略がきているとします。きている時に次はどう、中国は次のステップ、次の彼らの外交的な方針というか、基盤はどちらに向いて、どう外交方針をとる国になっていくのですか?」
ルトワック氏
「それはわからないですけれども、当然ながら。しかし、中国が賢ければ、知性があれば、平和的台頭に戻ると思います。それで威嚇はしないと。手を引くと。軍の行動です。空母は建造しないと。また、軍事支出も減らすと。世界に対して中国は投資をすると。観光もする。大きな市場であると発表します。そうすると、中国は拡大化できるんですね。成功ができるのです。経済的な能力において経済的な投資をするといったことが中国のノウハウです。中国は非常にそういうことには長けていたのです。中国は、常に才能があります。経済的な面においては商才があるわけです。また、こういった戦略的な面はあまりうまくはないですね。ですから、平和的台頭に戻れば、中国は最も強力な世界の国になるということが可能ですね。そうでなければ、ブロックされてしまうんですね。これは新たな話ではないです。古くからの話です。つまり、陸の権力が泳ぎたいと考えた時に、陸の大国が泳ぎたいと考えた時、つまり、ドイツは陸の大国でした、陸軍が最高でした。技術も最高、科学も最高、大学も最高。ところが、海軍をつくろうとした途端に問題が起きたんです。そういうことがあるのですね。つまり、陸の大国ということですね。ソ連というのはそれ自体が、つまり、陸の大国以外のものになろうとした時には、ソ連はロシア艦隊というのがウラジオストクだとか、日本海にやってきたわけですよね。しかし、これはどこにも行けなかったのです。ロシア艦隊は、日本には歓迎されませんし、中国も歓迎しませんし、フィリピンにだって歓迎されません。行ける場所はベトナムしかなかったんです。ですので、船は持っていました。戦艦を持っていました。しかし、海洋の権力、力にはなれなかったということですね。海洋力はなかったのです。つまり、この軍艦が歓迎されませんでした。1905年にロシア艦隊はそういう目に遭いました。つまり、日本海で戦うためにやってきました。大きな艦隊があったのですけれども、しかし、海洋国ではなかったのです。海洋パワーはなかったのですね。海洋パワーになるためには、多くの友好国が必要です。港で受け入れてもらわなくてはならないです。そうすることで、食料を補給するということができます。1905年はまったくそういうことができなかったのです。ロシアは大きな軍艦は持っていました。大艦隊を持っていました。しかし、港でのアクセスがなかったのです。ですから、この海洋パワーがなかったということです。完全に疲弊した状態で、バルト海からやってきたということで、補給もできなかった。食料もないと。また、石炭もないという状態で疲弊しきっていたのですね。それがシーパワー。船があるというのと海洋パワーの差です。中国というのは陸の大国ですね。とにかく陸ではたくさんの国境を接している国があるわけです。アフガニスタンはテロリストの国ですね。それから、ロシアとも陸の国境を接しています。非常に問題があるような隣国であるベトナムですね。ベトナムというのは非常に大きな問題です。それからラオスとも国境を接していますね。ミャンマーとも接しています。ミャンマーも非常に問題がある国です。つまり、陸の大国ということは陸の問題がつきまとっているわけです。海に行くと、既にハンディキャップがあるんです。隣国と喧嘩をすると、隣国と喧嘩が起きた場合には、海洋パワーがないということになってしまいます。アメリカというのは、好戦的ということがありますけれども、近隣とはしません。近隣と喧嘩はしないですね。たとえば、小さなカリブ諸国とは喧嘩しないですね。全部友好国ですね。決して、カナダには脅威にはなりませんね。メキシコもそうです。ですので、結局、海洋パワーであるというためには、友好国でなくてはならないということはわかっているんです。ところが、中国は日本と喧嘩をします。フィリピンとします。また、インドネシアともします。また、マレーシアとも、ベトナムとも問題がある。ということはアクセスがないんです。何もサポートがないと。それは1905年のロシア大艦隊、バルト艦隊、大きな艦隊があるのに、アフリカに行っても石炭がもらえないということで、どこに行ったとしても結局は敵国でどこからも補給はしてもらえない。これは海の問題です。中国が海洋パワーになりたいということであれば、全てのこういう国と仲良くなくてはならないです。まず日本です。それが仲良くならないというのは典型的な陸の国のやり方です」

北朝鮮『核・ミサイル』対応策
反町キャスター
「金ファミリーの世襲による統治は暫く続いていくと思いますか?政権交代の可能性をどう見ていますか?」
ルトワック氏
「私が日本人だとしたら、この政権が崩壊するという期待には頼らないと思います。北朝鮮と対話するという義務を受けれ入れます。北朝鮮の政権が崩壊することに期待しよう、ではないです。北朝鮮は我々がクレイジーと考える政策をとってきました。しかし、金一族の視点からすれば良い政策です。自分達にとってはうまくいくわけです。他の人達にとってはうまくいきませんが、自分達にとってはいいことです。ですから、北朝鮮のあるがままの姿に対応しなければなりません。我々が北朝鮮にこうあってほしいと考える姿に対応するのではなく。現在起こっていることは非常に重要なことだと思います。何も起こっていません。中国の政策はありませんね。北朝鮮の核弾頭を搭載したミサイル開発、日本に着弾する可能性もあるわけです。将来アメリカにも着弾するかもしれません。中国はそれについて政策を持っていません。ロシアも政策はありません。ロシアは北朝鮮と対話をしません。と言うのは、自分達にとって脅威にならないからです。北朝鮮は韓国、日本、アメリカを見ています。火事が起こっていても中国は何もしない。ロシアもしない。韓国も何もしない。韓国は北朝鮮を抑止していません。北朝鮮が韓国を攻撃したら韓国は反撃をしません。気をつけろと教訓を与えないわけです。北朝鮮が(韓国の)船を沈めた時も韓国の兵士を殺害した時も韓国は砲撃をしたんです。砂漠の島に対して。北朝鮮の船を沈めませんでした。だから、抑止が働いていないです。世界中で抑止力が働いています。紛争している国の間には抑止があるわけです。それによって平和が保たれているわけです。ところが、抑止が働いていないです。韓国の抑止もない。中国からの圧力も、ロシアからの圧力もありません。アメリカの政策は批判することです。ですから、日本政府は真剣に対応するために主導をしなければなりません。日本は韓国とアメリカの同盟国です。単独ではできません。ただ、主導することはできる。イニシアティブをとることはできるわけです。小泉元総理は北朝鮮に行って拉致された人達を取り戻しました。赤十字に行ったり、国連に頼んだり、ポルトガルの漁業組合に行ったりはしませんでした。北朝鮮に行ったのです。北朝鮮に何かをしなければいけません。私は日本市民ではありませんので何をすべきかとは申し上げません。ただ、誰かが銃で威嚇したらいろいろなことができますね。降伏することができます。投降することができます。あるいは先制攻撃をする。あるいは本当の防衛を行う。私の家族を威嚇するのなら、あなたの家族を威嚇すると言うわけですね。これが本当の抑止というものです。核抑止が実際、そうだったわけです。ですから、投降するか、防衛するか、抑止するか、先制攻撃をするのです。北朝鮮の能力を破壊すること、この1つをしなければいけない。何もしなくてもいいという政策は大きな問題につながるでしょう。1945年以来、全ての戦争は、誰かが大丈夫だと言ったことによって始まったのです。ですから、日本の指導者はもちろん、単独ではなく、アメリカと協力して、韓国と協力して、リーダーシップが必要だと思います。その機が熟したと思います」

エドワード・ルトワック 米戦略国際問題研究所上級顧問の提言:『STORONG RESPONSIBLE』
ルトワック氏
「つまり、強いということは、アメリカとの同盟、その他の多くの国との同盟を考えなさいと。日本の責任、ODA(政府開発援助)とかは尊重する。しかし、まず強くあれということです。日本だけでなくて、世界全体のために強い日本が必要です」

小原凡司 東京財団政策研究調整ディレクター兼研究員の提言:『国際情勢の大きな流れを把握せよ』
小原氏
「中国は止まらない、北朝鮮も止まらない。ロシアの態度も変わらないと。これから出てくる。さらに各国が内向きになりつつある。こうした状況の中で日本はどうするかということを考えなければいけない。1つ1つの事象に捉われないようにしなければいけないと思います」