映画「仁義なき戦い」やドラマ「十津川警部」など硬軟多彩な役を演じた俳優の渡瀬恒彦(わたせ・つねひこ)さんが14日、多臓器不全のため東京都内の病院で死去した。72歳だった。葬儀は近親者のみで営む。兄は俳優の渡哲也さん。

 兵庫県淡路島出身。69年に東映入社。翌年「殺し屋人別帳」で主演デビュー。「仁義なき戦い」シリーズや「鉄砲玉の美学」などでヤクザの若者の生きざま、死にざまを荒々しくかつ繊細に表現した。

 その後は演技派として活躍の場を広げた。「事件」「赤穂城断絶」で78年のキネマ旬報助演男優賞、80年に「神様のくれた赤ん坊」「震える舌」で同主演男優賞を受けた。「セーラー服と機関銃」「南極物語」などの大ヒット映画でも印象に残る演技を見せ、「時代屋の女房」では中年男のひょうひょうとした魅力を体現した。

 後年はテレビドラマに数多く出演。92年から「十津川警部」、02年から「おみやさん」、06年からは「警視庁捜査一課9係」シリーズと、様々な刑事を長期にわたって演じ、幅広い世代に親しまれた。NHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」(07~08年)では、落語家を目指すヒロインの師匠、徒然亭草若を演じた。

 15年に胆のうに腫瘍(しゅよう)が発見され、闘病を続けていた。所属事務所によると、今年に入り、4月に始まる「警視庁捜査一課9係」の新シーズンの撮影に向けて準備していたが、2月に左肺に気胸を発症、3月に入って敗血症を併発した。