The Economist

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

株価高騰が覆う不都合な真実

2017/3/15 8:04
保存
印刷
その他

The Economist

 投資家は根拠なく熱狂しているのか。これが今、世界の株式市場関係者の頭から離れない最大の疑問だ。大半の先進国では政治の世界で物騒なことが起きているのに、株式相場は天井知らずだ。米ダウ工業株30種平均は1月に初めて2万ドルの大台を突破し3月初旬、すんなり2万1000ドルを超えた。英国でもFTSE100種総合株価指数が高値を更新し、世界全体の株価動向を示すMSCI世界株指数も最高値を付けた。

NY証券取引所=ロイター

NY証券取引所=ロイター

 市場で警戒シグナルが点滅していることは一目でわかる。まだ黒字になったことがないインターネット企業、米スナップの最近の株式上場は、2000年ごろのドットコム・ブームを想起させた。同社株は上場初日に公開価格を44%上回った。過去の基準に照らしても、米国市場のバリュエーション(投資価値評価)は心配になるほど高い。

警戒シグナル顧みられず

 米エール大学のロバート・シラー教授によると、過去10年間の企業利益の平均から長期的な株価水準を判断する景気変動調整後のPER(株価収益率)「CAPEレシオ」は30倍弱だ。この水準を上回ったことは過去に2回しかない。1990年代後半のネットバブルの時と29年の世界大恐慌前だ。

 投資家がこうした警戒シグナルを顧みない理由は3つある。いずれも妥当なものだ。まず、彼らはこれまで長い間、我慢を強いられてきた。米S&P500種株価指数は年初から5.5%上昇した。だが、2016年は上昇率が10%に届かず、15年は下落した。5年続けて20%以上、上がった1990年代後半と比べると、いかにも見劣りする。

 投資家はすべての資産を株式で持っているわけではない。米国の株式投資信託は過去12カ月間、資金純流出が続いた後、2月に初めて週間ベースで純流入を記録した。同じく2月、米バンクオブアメリカ・メリルリンチが機関投資家を対象に調査したところ、彼らの現金保有比率が通常より高いことがわかった。投資家は国債相場の先行きを悲観的に見ている。米10年物国債の利回りは現在2.5%程度で、トランプ米大統領が選出される前は1.8%だった。彼らには国債より株式の方が魅力的に映っている。

 2つ目の理由は、世界経済に好転の兆しが見られることだ。投資家が中国経済の先行きと世界的なデフレを懸念していた2016年初頭とはかなり違う。国際貿易はここ数年、低調で、貿易量の年間伸び率は国内総生産(GDP)伸び率に辛うじて並ぶ程度だったが、ここへきて再び増え始めたことが指標などからみてとれる。韓国の2月の輸出量は前年同月比20%増と、伸び率では5年ぶりの高さだった。さらに、商品価格が1年前より10%上昇している。欧州の経済見通しも上方修正された。

 3つ目の理由は、トランプ政権が掲げる減税やインフラ投資の拡大、規制緩和への期待が、米国でアニマルスピリッツを呼び起こしたことだ。全米自営業者連盟(NFIB)の調査では、米国の小規模企業の景況感が昨年12月、ほぼ40年ぶりに大幅に改善した。S&P500種採用企業の利益は、原油安でエネルギー企業が打撃を受けたことなどでここ数年、減少していたが、17年は12%増加する見通しだ。

 一方、こうした明るい展望に水を差すような懸念材料も多い。各種調査から米国経済の力強さが感じられるようになったとはいえ、最近の経済統計は強弱がまちまちで、1月は実質個人消費支出と鉱工業生産がともに減少した。

 今回の米景気の回復は始まってから8年がたち、すでに終盤に差し掛かっている。トランプ氏の財政刺激策は連邦議会を通過するのに来年までかかる可能性があり、その過程で骨抜きにされるだろう。同氏の提案の中には、例えば移民の取り締まり強化や脅しのような貿易制裁など、成長を阻害するものもある。

 09年以降、株式相場の下支え役を担ってきた金融政策も転機を迎えつつある。米連邦準備理事会(FRB)は今月15日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切ると広く見られている。ユーロ域内の国債などを買い入れる量的金融緩和政策を続けてきた欧州中央銀行(ECB)は、4月から毎月の買い入れ額を減らす方針だ。米シティグループによると、世界の民間部門での信用創造は約8割が中国によるもので、その中国当局はすでに引き締め政策に転じている。

手元にはパラシュートを

 より深刻な問題は、政治と経済で人々が相矛盾するものを求めていることだ。オランダ、フランス、ドイツで今年、実施される選挙では、有権者が既存政党にはっきりとノーを突き付けることも予想される。米国でトランプ氏が選出された時と同様、労働者は経済活動の果実を少しでも多く手にしようと反体制派の候補を支持している。

 ところが実質賃金の大幅増加と、企業利益がGDPより速いペースで拡大するという期待に基づいた相場上昇は理論上、両立し得ない。グローバル化を拒絶するポピュリズム(大衆迎合主義)は、モノや労働力、資本の自由な移動の恩恵を受ける企業にとっては脅威となる。このため、ポピュリストを支持する有権者と投資家の双方を満足させるのは難しいだろう。株式相場はもうしばらく高値を追う展開が続くかもしれないが、いつ急落してもいいように、投資家は手元にパラシュートを用意しておく方がいい。

(c)2017 The Economist Newspaper Limited Mar. 11th, 2017 All rights reserved.


人気記事をまとめてチェック

「ビジネスリーダー」の週刊メールマガジン無料配信中
「ビジネスリーダー」のツイッターアカウントを開設しました。
GlobalEnglish日経版

GlobalEnglish 日経版

世界を目指す、全てのビジネスパーソンに。 ビジネス英語をレベルごとに学べるオンライン学習プログラム。日経新聞と英FT紙の最新の記事を教材に活用、時事英語もバランス良く学べます。

詳しくはこちらから

The EconomistをMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

保存
印刷
その他

電子版トップビジネスリーダートップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる、業界がみえる。非上場企業を含む4200社、67業界のニュースとデータを網羅

【PR】

The Economist 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

NY証券取引所=ロイター

ロイター

株価高騰が覆う不都合な真実

 投資家は根拠なく熱狂しているのか。これが今、世界の株式市場関係者の頭から離れない最大の疑問だ。大半の先進国では政治の世界で物騒なことが起きているのに、株式相場は天井知らずだ。米ダウ工業株30種平均は…続き (3/15)

トランプ大統領は「歴史的な国防費拡大」だとしている(2月27日、ホワイトハウス)=ロイター

ロイター

国防予算 「米国第一」には力不足?

 トランプ米大統領が間もなく議会に提出する2018会計年度(17年10月~18年9月)予算案では、国防費が540億ドル(約6兆円)増の6030億ドルとなる見通しだ。だが、これは同氏が信じていると思われ…続き (3/8)

ロボット課税は労働生産性の改善を遅らせる可能性も=ロイター

ロイター

ロボットへの課税 労働者に恩恵?

 産業革命時代の英国で、織機の普及を恐れた手工業職人が機械を打ち壊す「ラッダイト運動」が起こったように、米マイクロソフトがどれほど人々にパソコンを金づちでたたき壊したい気持ちにさせたとしても、同社の創…続き (2/28)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

今週の予定 (日付クリックでスケジュール表示)

<3/13の予定>
  • 【国内】
  • 1月の機械受注(内閣府、8:50)
  • 2月の企業物価指数(日銀、8:50)
  • 3月のQUICK外為月次調査(11:00)
  • 1月の第3次産業活動指数(経産省、13:30)
  • 【海外】
  • 1月のマレーシア鉱工業生産指数
  • 2月の米労働市場情勢指数(LMCI)
  • インド市場が休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<3/14の予定>
  • 【国内】
  • 閣議
  • 1年物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 20年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 小林経済同友会代表幹事の会見(13:30)
  • 東芝の16年4~12月期の四半期報告書提出期限
  • 【海外】
  • 1~2月の中国工業生産高(11:00)
  • 1~2月の中国小売売上高(11:00)
  • 1~2月の中国固定資産投資(11:00)
  • 1~2月の中国不動産開発投資(11:00)
  • 2月のインド消費者物価指数(CPI)
  • 2月のインド卸売物価指数(WPI)
  • 1月のユーロ圏鉱工業生産(19:00)
  • 3月の欧州経済研究センター(ZEW)の独景気予測指数(19:00)
  • 米独首脳会談
  • 2月の米卸売物価指数(PPI、21:30)
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC、15日まで)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<3/15の予定>
  • 【国内】
  • 日銀金融政策決定会合(16日まで)
  • 春季労使交渉の集中回答日
  • 3月のQUICK短観(8:30)
  • 3カ月物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 2月の首都圏・近畿圏のマンション市場動向(不動産経済研究所、11:00)
  • 1月の鉱工業生産指数確報(経産省、13:30)
  • 中西地銀協会長が記者会見(14:00)
  • 稲野日証協会長の会見(14:30)
  • 三村日商会頭の会見(15:30)
  • 2月の訪日外国人客数(日本政府観光局、16:00)
  • 東証マザーズ上場=ファイズ
  • 【海外】
  • 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が閉幕し、李首相が会見
  • オランダ下院選
  • 16年11月~1月の英失業率(18:30)
  • 2月の米小売売上高(21:30)
  • 2月の米消費者物価指数(CPI、21:30)
  • 3月の米ニューヨーク連銀製造業景況指数(21:30)
  • 1月の米企業在庫(23:00)
  • 3月の全米住宅建設業協会(NAHB)住宅市場指数(23:00)
  • 米エネルギー省の石油在庫統計(週間、23:30)
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC)結果発表(16日3:00)
  • イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が会見(16日3:30)
  • 1月の対米証券投資(16日5:00)
  • 16年12月~17年2月期決算=オラクル
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<3/16の予定>
  • 【国内】
  • 日銀金融政策決定会合の結果発表
  • 対外・対内証券売買契約(週間、財務省、8:50)
  • 池谷信託協会長が記者会見(14:00)
  • 日商通常総会(14:30)
  • 北沢損保協会長が記者会見(15:00)
  • 黒田日銀総裁が記者会見(15:30)
  • 国部全銀協会長が記者会見(16:30)
  • ジャスダック上場=ほぼ日
  • 東証マザーズ上場=うるる
  • 【海外】
  • 2月の豪雇用統計(9:30)
  • 16年10~12月期のニュージーランド国内総生産(GDP)
  • インドネシア中央銀行が政策金利を発表
  • スイス中銀が政策金利発表(17:30)
  • トルコ中銀が金融政策決定会合の結果発表(20:00)
  • 英中銀金融政策委員会の結果と議事要旨を発表(21:00)
  • 米新規失業保険申請件数(週間、21:30)
  • 2月の米住宅着工件数(21:30)
  • 3月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(21:30)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<3/17の予定>
  • 閣議
  • 2016年10~12月期の資金循環統計速報(8:50)
  • マザーズ上場=ビーグリー、ジャパンエレベーターサービスホールディングス
  • 3月のESPフォーキャスト調査(日本経済研究センター、15:00頃)
  • 1月のユーロ圏貿易収支(19:00)
  • 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(独バーデン・バーデン、18日まで)
  • 3月の米消費者態度指数(速報値、ミシガン大学調べ)
  • 2月の米鉱工業生産(22:15)
  • 2月の米設備稼働率(22:15)
  • 2月の米景気先行指標総合指数(23:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

[PR]