しかし今は大韓民国の政府が厳然と存在している。後に彼らが政権を握る可能性が高いとしても、今は彼らの主張に従って政策を進める必要はない。彼らが政権を握れば開城工業団地や金剛山観光を再開させ、国連による北朝鮮制裁の有名無実化、THAADの撤去、米国よりも北朝鮮を先に訪問するといった彼らの望みを次々と、あるいは堂々と実行に移すだろうが、今はまだ時ではない。また憲法と法律に従って職務を遂行する官僚たちに彼らが指示や命令を下すこともできない。考え方や政策が違っても、その主張には最低限の品位がなければならない。「何もするな」「反逆するな」という言葉は同じ国の人間同士で言うべき言葉だろうか。世界から「ならず者国家」とされている北朝鮮には非常に寛容で理解を示しながら、同じ大韓民国の国民や政府関係者に対してはなぜこれほどの憎悪を抱くのか、全くもって理解できない。
今も韓国軍と在韓米軍は北朝鮮のノドン級以上のミサイルから韓国を防衛する手段を全く持っていない。北朝鮮と交渉する場合でも、まずは最低限の軍事的備えが必要であり、これがなければ国とは言えないだろう。ところが彼らはTHAAD配備には反対するが、北朝鮮のミサイルに対する軍事的備えをどうすべきかについては何も語らない。つまり彼らの主張は「軍事的備えは諦める」ということだ。その一方でTHAAD配備については「夜中に泥棒に入るように武器を持ち込んでいる」などと批判している。国を守るために必要な対策を「泥棒行為」と考える集団が、今や次期政権の最有力だ。今、共に民主党ではこのような人間たちが少しずつ影響力や発言力を強めている。このままでは「何もするな」「反逆するな」以上の要求も次々と言いだしてくるだろう。