米FRB 去年12月に続き利上げ 米経済は緩やかに拡大

米FRB 去年12月に続き利上げ 米経済は緩やかに拡大
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アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は、15日まで開いた金融政策を決める会合で、アメリカ経済は緩やかに拡大しているとして去年12月に続いて利上げに踏み切ることを決めました。
FRBは、15日までの2日間、ワシントンで、金融政策を決める公開市場委員会を開きました。
終了後、発表された声明によりますと、FRBはアメリカ経済は企業の設備投資がやや堅調になり物価上昇率が目標の2%に近づいていることなどから緩やかな拡大が続いているとして、賛成多数で政策金利を引き上げることを決めました。
具体的には0.5%~0.75%の範囲となっている今の政策金利を0.25%引き上げ、0.75%~1%の範囲とします。

FRBは、おととし12月に、異例のゼロ金利政策を解除して利上げを始め、去年12月には追加の利上げを行いました。
今回の利上げはこれに続くもので、トランプ政権になってからは初めてです。
アメリカ経済は、トランプ大統領が掲げる、積極的な財政政策の規模や時期などがはっきりせず、期待先行で株価は上昇しているものの、FRBは経済に与える影響は不透明だとしています。
ただ、雇用の改善や賃金の上昇傾向は続いており、FRBとしては景気過熱への警戒感もあって、再度の利上げに踏み切りました。今後は一層の景気拡大を目指すトランプ政権と、景気過熱を食い止めたいFRBが足並みをそろえてアメリカ経済のかじ取りを行えるかが焦点となりそうです。

イエレン議長「経済の力強さに自信」

FRBのイエレン議長は、会合のあと記者会見し、金利を引き上げた理由について、「経済はよくなっていて、力強さに自信を持っている。消費者は今後、景気がよくなると感じている」と述べました。そして「世界経済はより力強く成長している」と述べ、中期的にはリスクが残っているものの、世界経済も上向いているという認識を示しました。

さらにイエレン議長は、トランプ大統領と短い会談を持ったことを明らかにしたうえで、政策の変化が経済に与える影響については「政策が実行される時期や規模に大きな不確実性がある」と述べ、具体的な内容が明らかになるのを待つ考えを強調しました。

一方、トランプ政権や与党・共和党が検討を進めている、法人税の仕組みを見直して、輸出の際の税負担を軽くする一方、輸入の際の負担を重くする案が経済や為替に与える影響については、「複雑でよくわからない」と述べ、さらに議論が必要だという考えを示しました。

イエレン議長は、今月17日からドイツで開かれるG20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議で、今回の利上げなどアメリカの金融政策を説明するとしています。

今後の金利 見通しは

FRBは15日、イエレン議長など金融政策を決める会合の参加者が予測した今後の金利の見通しを公表しました。
それによりますと、ことしの利上げの回数は、今回を入れて3回と、去年12月の段階の見通しと変わっていません。また、長期的な政策金利の水準の中心的な想定も、去年12月の段階と同じ3%程度で、変わりませんでした。
会合のあと発表された声明では、今後の利上げについて、「緩やかなペースで引き上げる」としていて、トランプ大統領の政策やドル高などの影響などを見極めながら慎重に判断する姿勢を示しています。

トランプ政権と金融政策

今回、FRBが、利上げを決めた背景には景気過熱への対応が遅れることへの警戒感があります。

FRBは、トランプ大統領が打ち出している大規模な減税や巨額のインフラ投資、それに積極的な財政政策などは、規模や実施される時期がはっきりせず、経済に与える影響は不透明だとしてきました。
一方でトランプ大統領が金融業の規制を緩和する方針を打ち出していることもあり、株式市場は期待が先行して、株価が値上がりしています。
また、雇用の改善や賃金の上昇傾向が続き、企業や消費者の経済の先行きへの見方も上向いています。
このため、トランプ大統領が積極的な財政政策などを具体化し景気の拡大政策をさらに進めればFRBは利上げのペースを速める可能性があります。

今後は、トランプ政権とFRBが経済運営のかじ取りで足並みをそろえていけるかが焦点となっていきそうです。
実際、金融市場では、トランプ大統領がFRBの人事をどうするかに、注目が集まっています。
現在、FRBの理事会は、定員7人のうち、タルーロ理事が来月に退任すると空席が3つとなります。さらに、イエレン議長の任期が来年2月まで、フィッシャー副議長の任期が来年6月までとなっています。
トランプ大統領は就任後、金融政策について言及していませんが、空席の理事にどのような人材を充てるかや、議長と副議長を再任するかは、アメリカの今後の金融政策を占う上でも焦点となりそうです。