(cache) 保健室で昼食を - 第一章　セーラー服の行方【３】

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第一章　セーラー服の行方【３】

物語の途中、精神疾患を示唆する表現があります。一応、書籍等で確認を取りましたが、医学的根拠はございません。予めご了承ください。

　職員室では、教頭先生の机の前に、まりも先生と、まりも先生のジャージを借りたわたしが立たされてます。なんか怒られてるみたい……。
「藤沢君、いきなり、救急車なんて呼んじゃ、困るじゃないか。一応、許可とってもらわないとね……。なにか事件が起きたと思われちゃうんだよ」とっ、教頭先生。
「生徒の命が危ないから、呼んだんですけど、何か問題ありましたか？」挑発的な先生。
「いや、それでも、一応、私の許可を取ってからに、して欲しいんだよ」
「はいはい。一応、今度から、気をつける事にしておきましょう」まりもせんせい……。
「よろしい。ところで、君は、体育倉庫で何をしていたんだね。えっと、１年の葉山亜衣里さん」急に言われて、ちょっとドキッとしました。
「無くなったセーラー服を、返してもらいに行ってました」
「君はセーラー服が無くなったから、体操服を着てるのかい？」
「はい」
「で、そのセーラー服はどこにあるの？」
「今、マコト先輩が着てます」
「マコト先輩って誰だい？」
「救急車で搬送された、元山真琴です」まりも先生が言ってくれた。
　教頭先生は、他の先生と話して、マコト先輩の事を確認してた。
「２年生の元山真琴君だね。彼は、君のセーラー服を着る為に、君からセーラー服を取ったのか？」
「いえ違います。取ったのは、他の人だと思います」
「誰が取ったのか見たのか？」
「いえ見てませんけど……」
「じゃ、元山君が、セーラー服を着たいから、取ったという事じゃないのか？」
「違います。マコト先輩……元山先輩は、無理矢理、着させられてました」
「誰にだい？」
「それは、わかりません」先輩達の名前がわからないと、言ったつもりだった。
「わからないじゃ、仕方ないね。結局、ふざけてセーラー服を着てて、転んでじゃったって事かな？」教頭先生は、そう言って、話を終わらせようとした。
　えっ、違うよ。そんなんじゃ無いよ。そう思ってたら、まりも先生が、サラっと言った。
「教頭、無理矢理セーラー服を着させられたなんて、イジメでしょ」
「イジメなんて、うちの学校に、あるわけ無いじゃないか」急に慌てて、教頭先生は、そう言った。
「あ、そう。じゃ、葉山さんのセーラー服を取ったのは誰です？　まさか、怪我した元山君が取ったなんて本気で言ってるんですか？　うちの女子更衣室は、男子生徒が簡単に入れるんですか？」
「いや、それは、ちゃんと調査しないとだね、なんとも……」
「あのね、どう考えても、同じクラスの女子の仕業でしょ。これもイジメですよね」
「めったな事を言うなよ。なにも証拠が無いじゃないか。それに、葉山君は、６時間目が終わったら、いきなり居なくなったって、担任も困っていたぞ。なのに、男子と遊んでたなんて、ちょっと、まずくないのか？」教頭先生、言ってる事が、酷すぎる。
「違います。セーラー服が無くなってて、探してたら、体育倉庫に閉じ込められたんです。わたしが困ってるの、みんな知ってるはずです」目に涙があふれて来た。
「いや、だれも知らないって言ってたぞ」後ろから、担任の先生の声がした。
「そんなの、酷いです。あんなに困ってたのに、誰も知らないだなんて……」
　もうだめだ。涙が止まらない。やっぱり、あのクラスで、わたしは一人なんだ。
「なんだかなぁ。葉山のクラスでは、だれも葉山の事を守ってくれないんですか。つまり、担任も、イジメに気がついて無いと……」
「そんな事ない。僕のクラスにイジメはないよ」担任の先生が、声を荒げる。
　うそだ。靴も隠されるし、教科書に落書きされるし、無くなる事もある。それはイジメじゃないの？　そう言いたかったけど、涙が出て何も言えない。
「そうだよ。イジメなんて、滅多な事いうなよ。いいね藤沢君」教頭先生が、まりも先生に詰め寄る。
「わかりました。お二人がそう言われるなら、葉山亜衣里は、明日から、保健室登校させます。私が預かります。いいですね」まりも先生がそう言うと、２人は驚いたような顔をした。
「そんな、保健室登校なんて、もっとちゃんと話をしてからでないと、問題がある学校みたいじゃないか」ちゃんと話も聞いてくれないのに、そんな事いわれても。
「問題がないと言われるんですか？　ほう、それじゃ今から、元山真琴から事情を聞いて、教育委員会に報告させていただきます。それとも警察の方がいいですか？」まりも先生の目が光る。
「でも、彼も入院してるので、調べるのに時間が掛かるんじゃないのか？」教頭先生は少し後ずさりした。
「そうですよねぇ、入院しないといけないくらいの事件、あら失礼。事故が起きたんだから、対応は慎重にすべきですよね」教頭先生の顔を見ながら、言い直した。
「そ、そうだよな。慎重にしないとだな」声がうわずってる教頭先生。
「はっきりわかりませんが、彼の症状には覚えがあります。たぶん簡単な怪我じゃありませんよ」まりも先生が、睨みつけると、二人とも渋々と了解した。
　職員室を出て、保健室に向かう途中、先生に言った。
「せ、せんせい。ありがとうございます」
「ごめんね、あんな事言っちゃって。あれで良かった？」
「ふぁい。あり、ありがとうございます」今はこれで、いいと思った。

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