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第一章 セーラー服の行方【2】
物語の途中、精神疾患を示唆する表現があります。一応、書籍等で確認を取りましたが、医学的根拠はございません。予めご了承ください。
これで、やっと、ここから出れると思ったんだけど、入って来たのは、2年生の男子が4人。どうやら、そのうち一人がイジメられている。わたしのレーダーが反応する。
彼からは、間違いなく、同じ匂いがする。イジメられっこの匂いがする。もしかしたらいい友達になれるかもしれない。
でも、これじゃ、やっぱり出られないよ。わたしは、そのまま、棚の一番下に隠れたまま。だけど、今度は、少し明るいから、さっきよりもほんの少し、ましな気がする。
で、でも、彼は他の先輩から、大きめの紙袋を手渡されました。ああ、あの紙袋って、あれですよね。さっき先輩が持ってた奴ですよね。それ、どうする気ですが? それ、ブラジャーまで入ってるんですけど。
イジメられてる先輩、マコトって呼ばれてますけど、とっても奇麗な顔してる。ほっそりしてて、目は大きめの二重。背は、わたしと同じ位かな?
マコト先輩が、シャツのボタンをひとつづつ外します。あっ、ちょっとドキドキしてきた。やっぱり、ぬ、脱ぐんですよね。シャツを脱いじゃうんですよね。
上半身だけだけど、男の人の裸見るの初めてなんで、なんか、恥ずかしいんですけど、目が離せないです。 でも、あの先輩、細いし、色が白くてキレイ。
で、でも、手にもってるのは、わたしのブラですよね。
それ。ちょっと、辞めてくださいよ。付けないでください。マコト先輩も抵抗してるけど、ボスみたいなのが何か言ってる。
「セーラーの夏服には、ブラスケが必須だろ。ブラスケ」いや、ボスの先輩それおかしいですよ。男のブラスケでもいいんですか? 見境なさすぎです。変でしょ。
マコト先輩が、仕方なくブラ付けちゃいましたよ。あぁ、なんて事。自分のブラを男の人が、付けてるのを見てるなんて、なんかゾクゾクして、寒気がしてきました。
おまけに、紙丸めてカップの中に入れてるし、それって、冒涜ですよ。冒涜。
女子の胸には、それなりにステータスとか、努力とかいろいろつまってるんですよ。それを紙丸めて済ますなんて、マコト先輩、間違ってます。機会があったらちゃんと言わないといけません。って、そんな事じゃなくて、わたしのブラが、男の人に触られてます。
もう、イロイロすぎて、ちゃんと考えられません。飛び出した方がいいかな? でも、そんな勇気ないよ。
あぁあ迷ってるうちに、次は、セーラーを着はじめましたよ。あぁ、あの先輩、細いです。すっぽり着ちゃいました。脇のファスナーも問題なく閉まってますよ。なんか、ボス先輩の目つきが怪しくてたまりません。
ボス先輩は、マコト先輩が、好きなんじゃないでしょうか?
もしかして、ボス先輩は、マコト先輩に、セーラー服着せて、体育倉庫でいけない事をするつもりなのでは?
それは、あまりにもイヤです。そんな事の小道具にわたしのセーラー服どころか、ブラジャーまで使わないでください。いろんな意味で汚れちゃいます。
そして、マコト先輩は、ズボンを脱いでしまいました。男の人の下着なんて、お父さんのしか見た事ないので、ちょっと恥ずかしいですけど、やっぱりしっかり見てしまいます。
だって、マコト先輩の足って細くて、とてもキレイなんだもん。マコト先輩ごめんなさい。
でもわたしも、かなり恥ずかしい思いしてるので、ココは、おあいこと言う事にしてくれませんかね? そうしてもらえるととても助かります。
そして、とうとう、やっぱり、わたしのスカートをはくんですね。もう、覚悟してましたとも。でも、少し遠目だけど、マコト先輩、すごくキレイです。
本当に女の子みたいです。
あぁ、ボス先輩が、飛び出しそうになってます。あの人絶対に変です。危険です。
今度は、さっきの女子の先輩たちが入ってきました。
「げーっ。なにコイツ。腹立つ。ノーメイクで可愛じゃん。メイクいらなくない?」
「でも、いいじゃん。ちょっとメイクしてみようよ」
なんか、そんな事を言いながら、マコト先輩を跳び箱に座らせて、よってたかってメイクしてます。
あぁ、足の毛まで剃っちゃって、どこまでやる気なんですか? っていうか、一体何をする気なんですか?
どうやら、ショートボブのウィッグをつけて、完成みたいです。呆然とするマコト先輩。横からしか見えないけど、とってもキレイです。わたしも興味があるから、メイクしたマコト先輩をもっと近くで見てみたいです。
「おーぉ。なかなか美少女じゃん」女子の先輩が言う。うんうん、そうですね。
「うーん、そうだね。このセーラーの持ち主より可愛いと思うよ」そこまで言いますか?
わたしが居る事、知ってるくせに。体勢を変える時に、思わず頭を、棚板にぶつけてしまいましたよ。
えーえっ。そうですとも。どうせ、わたしは男の娘にもかないませんよ。思いのほか、凹んでしまいました。
そして、マコト先輩を残して、他の5人は、向こうの跳び箱の後ろに隠れて行きます。
一人残されたマコト先輩は、真っ直ぐに背中をのばして、凛として座ってます。あぁ、あんな女の子だったら、イジメられないのかな。あぁ、でもマコト先輩もイジメられてるんですよね。
なぜだかとても理不尽です。あまり、幸せな出会いとは言いませんけど、一度マコト先輩と、お話したくなって来ました。いや、わたしが一方的に見てるだけだから、出会いとも言えませんね。これは……。
「松谷よかったな。ちゃんと居るじゃん」体育倉庫の入り口で、他の男の人の声がします。見ると二人立ってます。そのうち一人はなんか、そのまま行っちゃった見たいですけど、もうひとりは、残されてマコト先輩になにか言ってます。
声が小さくて、聞こえにくいですね……。
「女の子から、ラブレターって、初めてだったから、僕も嬉しかったから……」マツタニと呼ばれたその男子は、どうやら、女子から初めてラブレターをもらったみたいです。
おぉ、よかったですね、青春ですね。羨ましいですね。……って、相手は、もしかして、マコト先輩ですか?
マコト先輩は、今はとっても美少女ですけど、本当は男なんですよ。わかってますか?
マツタニさんの顔を見ると、少しうつむいて、本当に嬉しそうにしてます。やっぱりわかってないようですね。
あ〜ぁわかりました。今回の趣旨がわかりました。男子が、男の娘に告白するイジメなんですね。これでは2人がとっても可哀想ですよ。酷すぎます。
なんてことでしょう。ここからでは、5人が隠れている、跳び箱の後ろまで、ちゃんと見えないけど、きっと、笑いをこらえてるに違いありません。
あぁ、なんとかしたいけど、わたしには、何も出来ない。目の前のやらせが終わるのを、待つだけ……。
人がイジメられているのを見ると、ちょっとホットしちゃいます。とってもイヤな気持ちなんだけど、直接自分がイジメられないのは、助かった。って気持ちがします。
こんなに卑怯なわたしだから、余計にイジメられるのかも知れませんけど。
あっ、違う。わたしもです。セーラー服取られた、わたしもイジメられてます。だから、一度に3人もイジメられています。
そんな事を考えていると、どうやら、マコト先輩の女装がバレたみたいで、マツタニさんは、飛び出して行っちゃいました。
突き飛ばされた、マコト先輩は転んでます。あっ。わたしのスカートが石灰まみれ。紺のスカートだから、目立ちまくりです。……やだな。
マツタニさんが出て行くと、5人が跳び箱の後ろから出て来て、お金の話をしているようです。千円よこせとか、あと三十秒もたせろとか、一体何を言ってるんでしょう。
あっ、いきなり、マコト先輩が殴られてしまいました。どうして?
マコト先輩が、倒れた時に『ゴン』ってすごい音がしたと思ったら、急に叫びはじめた。
どうしたの? 先輩どうしたの? 手足をバタつかせ、体中が小刻みに震えてます。なにかとんでもない事になったのは確かです。
5人は、急いで体育倉庫から飛び出しました。マコト先輩はまだ声を上げて、震えてます。そ、そうだ。だれか呼んでこないと……。えっと、まりも先生のところがいい?
わたしは、棚の下から這い出ると、白目になって、まだ小刻みに震える、マコト先輩の横をすり抜けて、保健室に急ぎました。
まりも先生がちょうど帰って来たところだったので、説明しようとしたけど、上手く説明出来ません。うぅ、スペックが足りない。
とにかく、まりも先生の手を引っ張って、体育倉庫まで連れてきました。
マコト先輩は、口からよだれを垂らして、口の回りは血で汚ごして、静かになってます。わたしは死んじゃったと思って、恐くなり、その場でへたり込んじゃったけど、まりも先生は「亜衣里。だいじょうぶだから。大丈夫だから、落ち着いて」と言ってくれた。
まりも先生は、携帯電話で救急車を呼んで、マコト先輩の服を緩めてはじめて、ふいに手が止めました。
「亜衣里、この女の子、男子なの?」
「はい。男子です。セーラー服は、わたしのですけど……」まだ少し震えながら返事します。
「そういう遊びなの?」
「いえ、あのセーラー服とられたので、取りに来たら、マコト先輩が男子に告白して、殴られて叫んで、震えてたんです」
「もう少し落ち着いたら、もう一度話しを聞くね」まりも先生は、わたしのスペックを、十分理解してみえます。
3分ほどで救急車が来て、マコト先輩を連れて行ってしまいましたから、結局わたしのセーラー服は、帰ってきませんでした。
救急車が立ち去った後には、先生が数人と、野次馬生徒が一〇人くらい残ってます。残された、わたしと、まりも先生の所へ、教頭先生が慌ててやって来ました。
「藤沢くん、彼女をつれて、職員室に来てくれないか?」二人を呼びつけます。
Kindleセレクトに登録する為、二部以降を非公開とさせていただきました。ご了解ください。
Kindle版 http://amazon.jp/dp/B00KLMO7NI

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