長野県松本工業高校の生徒たち「自転車レーンの駐車に対処を」 高校生が市議会で交通環境改善を請願
長野県松本工業高校(松本市)の電子工業科1年A組の生徒たちが3月10日、松本市議会で登壇した。通学の際の鉄道と自転車の利用環境の改善を求める請願2件を提出し、この日、市議会建設環境委員会で趣旨説明を行った。請願提出は高校での授業がきっかけとなった。選挙権年齢の引き下げを受けて若者の政治に対する関心の高まりが期待されるなか、市によれば高校生による請願は近年例がないという。松本工生たちの請願は同委員会で無事採択された。
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緊張の面持ちでマイクを握った生徒たちは、時折原稿に目を落としながら請願の趣旨説明に挑んだ。
一つ目は、同校生徒が利用するアルピコ交通上高地線をめぐるものだ。朝の通学時間に運行される列車の本数が2本と少なく運賃が高いなどとして、朝の通勤・通学ラッシュの解消や高校生への運賃補助、個別駅のバリアフリー化などを訴えた。
二つ目は、市内の自転車専用レーンに止めて通行の妨げになっている車への対処や市中心部での無料駐輪場の整備などを求めた。
委員の議員からは「ラッシュの解消のため車両を増やすとなれば途方もない金がかかる」といった現実論も出たが、「高齢者には公共交通利用のための補助金があるのに勉学に勤しむ若者たちに負担が強いられているのは問題だ」などと肯定的な意見が相次いだ。
宮下正夫議員(67)は「松本工生だけの問題ではない。ほかの学校の生徒や市民たちも同じことを思っているだろう。声を上げてくれて良かった」と高校生たちの行動を評価した。
選挙権年齢の18歳以上への引き下げを受け同校は昨年12月、市議を招いて議会の仕組みや役割を学ぶ授業を行った。その中で、高校生が政治参加できる例として、公共交通機関に関する請願や陳情を市議会に提出できることが紹介された。
松本工によると、平成28年度の全校生徒568人のうち、公共交通機関の利用者は140人(24.6%)、自転車通学者は392人(69.0%)。生徒の多くが問題意識を持つ交通環境の向上をテーマに、現地に赴いて路上駐車する車の数を調べたり、鉄道会社ごとの運賃を比較したりして請願をまとめた。
市議会に登壇した同校1年の上野健太郎さん(16)は「議員に考えを聞いてもらえてうれしかった。自分たちの意見が反映されて住みやすいまちに変わればうれしい」と話した。
請願は17日の市議会本会議で採択される運びで、今後の市政の施策に生かされることになる。
(産経ニュースより)