連日の豪雨で脆くも決壊した鬼怒川は茨城県の流域に大きな被害をもたらしました。地域の皆様に心からのお見舞いを申し上げます。
今回、あらためて水の脅威と「アリの一穴」の怖さを痛感しました。水は例外なく高きから低きに流れます。カネ(投資)は低金利から高金利へと流れるのが基本です。もっとも最近の金融は複雑系で読めない場合も多いのですが。
人は低い治安から逃れ、高い安心と満足、絶望から希望を求めて動きます。最近、混乱のシリアから欧州を目指す人々がまさしくその一例です。
人口2240万人のうち死者22万人超、周辺国など国外に流出した427万人超といわれます。これを1億2000万人の日本に当てはめますと、2000万人以上が国外に逃れている計算になります。
先日、シリアから親戚の住むカナダを目指し、脱出を試みた一家を乗せたボートが難破。3歳の男児がトルコの浜辺に打ち上げられた悲惨な姿が報道され、国際社会を大きく動かしました。これまで見て見ぬふりをしていた各国も対策に乗り出さざるをえなくなりました。
新天地ドイツに続く国際列車の出発駅となるブダペスト東駅には数万人のシリア難民が殺到し、さながら駅舎は難民キャンプ状態となりました。東西冷戦の終結はいち早く民主化を目指したハンガリー政府が鉄のカーテンを開いたことがアリの一穴になったのですが。今回はさすがのハンガリーも国境にフェンスを張り巡らせるなど、厳しい対応をせざるをえず、行く手を塞がれた難民は次なる脱出口としてクロアチアへと流れました。
最近の難民の必需品はスマホ。どの国境がEUへ入りやすいのか、厳しいのか、たちまち情報は共有されます。わが国へのシリア難民が少ないのは、地理的に遠いことに加え、難民申請の壁が高く、厚いと認識されているからでしょう。
EU(欧州連合)は23日、ベルギー・ブリュッセルで緊急首脳会議を開き、難民の経由地となっている国々への2300億円規模の支援策や、各国で分担して12万人の難民を受け入れる案などを討議していますが、東欧諸国が猛反発。国境を復活させる動きもあり、EUの存在そのものが揺らぐ事態です。
わが国もわずか3人というシリア難民の受け入れではなく、将来の地域情勢を含め、難民対策を見直さねばなりません。
最後に、他国を狙う国や組織、そしてテロリストは無防備なソフトターゲットを狙います。彼らは「抑止力」を嫌い、「混乱・無防備」を好みます。今回の安全保障法制はそんな観点からも考えていただきたいものです。
(自民党衆議院議員)