「当代声優美人図 上坂すみれ」は、人気声優上坂すみれさんをモデルに、日本を代表するアニメーター江端里沙さんが原画を担当する浮世絵木版画の制作プロジェクトです。
メディア環境のデジタル化が進む現在、コンテンツはクラウドでいつでも手に入るようになりました。しかし記録媒体はすぐにレガシー化し、PCやスマートフォンは何年も経てば壊れてしまう。そんな中で、自分が何かを、そして誰かを好きだった記憶は、データの海の中でぼんやりしてしまっているのではないでしょうか。
こうした儚い記憶を普遍的なものに換え、残せないだろうか。このプロジェクトはそんな思いから立ち上げられています。そのためにはデジタルデータでなく、また最新の印刷技術でなく、私たちの記憶より彼方の昔からあり今も生き続ける「浮世絵」に取り組むのがふさわしいと考えました。
それは同時に、江戸時代の文化を現代に浮かび上がらせる試みでもあります。
浮世絵の「浮世」とは「当世風」を指しますが、現在において描かれる浮世絵は、江戸時代にあったもののパロディではなく、今の想像力を伝統において開花させたものであるべきです。そこで今回はアニメの想像力を活かそうと考えました。複数に重ねられたレイヤーで画を作るアニメの技法は、色の一つ一つを版として摺る浮世絵木版画との親和性が高いためです。
今回絵師として作画をお願いしたアニメーター江端里沙さんの美麗なグラフィックは浮世絵のジャンル「美人画」の系譜に繋がる品質をもち、躍動感溢れるタッチには現代性があって、現代から江戸を見通す視点を示します。
またモデルである上坂すみれさんのロシア趣味といった感性は、江戸時代の人々から見ればユニークなものかもしれません。しかし彼女は確かにその時代から続く日本女性の連なりの中にいて、そうした彼女への関心が江戸から現代を見通す視点をもたらします。
そして江戸時代からの歴史を背負った彫師さんや摺師さん達の匠の技、人の手の力が、こうした視点の間に道を作り、250年余の時を繋いでくれることでしょう。
無論こうした目論見が成功するかはこれから次第ですが、この作品を観る方が時を旅するような感覚をもって、自らが伝統から続く存在だと感じて頂けるように、そして手にとって頂いた方の記憶と共に生き続けるような作品にすべく奮闘中です。
浮世絵は1枚の版木から制作されますが、今回は版木の劣化が生じにくいと言われる200枚限定の摺りになります。予約販売はこのうち最も美しい1枚目から60枚目までを特別にご提供するものです。またこうしたもの造りには高いコストがかかるのも事実であり、アニメや浮世絵という文化、江端里沙さん、上坂すみれさんを本当に好きな方々のご協力をお願いしたい趣旨もあります。
フォトグラファー鈴木智哉さんによる上坂すみれさんの撮り下ろし写真やトークショー+お渡し会の参加券など、予約限定版だけの特典も、ご用意しております。ご支援のほど、何卒お願い申し上げます。
浮世絵文化製作委員会プロデューサー 宇野公章