強硬論者として知られる人民解放軍の羅援少将は、中国最大の国際紙『環球時報』(3月2日付)に寄稿し、「反THAAD十策」と題した提言を行った。それは、以下の通りだ。
①THAADを配備した韓国の星州の元ゴルフ場を、「対中国軍事脅威超危険地域」に指定する。
②中国国内にTHAADのレーダーに対抗するシステムを配備する。
③THAADの攪乱能力を強化する。
④「攻撃は最大の防御なり」で、THAADを破壊できるミサイルを開発する。
⑤ロシアを手を組み、THAADに対抗する合同軍事作戦を強化する。
⑥世界中で米日韓に対抗する措置を講ずる。
⑦THAADに関係する韓国の産業などに報復措置を取る。
⑧ロッテを中国市場から放逐し、THAAD配備の悪影響を見せつける。
⑨安全上の理由から、韓国を旅行する中国人の人数を制限する。
⑩国連代表部と世界中の中国大使館から、「THAAD事件」に対する反対声明を発表する。
このように、THAAD配備に関して、中国は本気なのである。今週のティラーソン国務長官の日本、韓国、中国歴訪が、大きなポイントとなるだろう。
これまで朝鮮半島問題と言えば、それは主に北朝鮮の諸問題を指した。だが今後は、THAAD配備によって、韓国が北朝鮮と同様の「火薬庫」となっていく。
朴槿恵大統領を罷免しても、新たな大統領が誕生しても、韓国の苦悩は終わらない。
【今週の東アジア関連推薦図書】
『中国激動』
著者=加藤直人
(日本僑報社、税込み2,052円)
東京新聞(中日新聞)の中国総局長、上海支局長などを歴任し、今年1月より本社論説委員に戻った加藤氏による、5年に及ぶ65本の珠玉の中国コラム集だ。5年前の重税論争から始まり、上海郊外の水郷地帯「七宝」のみやげ物屋に習近平バッジが売られている最近の現象まで、独特の感性で中国の「断片」を喝破していく。すべてのコラムに中国語訳がついているので、中国語学習者に役立つし、また中国人が「日本人ジャーナリストの視点」を知ることもできる。