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大統領は憲法違反を犯したか

3月10日午前11時、李貞美憲法裁判所長代行が、20分あまりにわたって、韓国国会で弾劾を受けた朴槿恵大統領が憲法違反を犯したかどうかの「大韓民国憲法裁判所決定」を読み上げた。

私はインターネットのNAVERの生放送テレビで、その模様を見た。いつもはNAVERを開くと、そこから韓国のテレビ局を選ぶのだが、この日は全局が弾劾裁判の「決定」を生中継していたため、どのチャンネルを見ても同じだった。

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李所長代行はまず、「憲法上、弾劾訴追は、公務員がその職務執行で憲法や法律に違反したという事実によるものである」と前置きした。大韓民国憲法を繙くと、たしかに第65条にその規定が記されていた。

そして、李所長代行は第一に、朴槿恵大統領が行った人事に憲法違反があったかについて述べた。

「提出された証拠を総合しても、崔順実被告の私的な利益追求の妨げになったから(不当な)人事を行ったと認定するには不足していて、長官の更迭理由や秘書室長が6人に辞表を提出させた理由も明確ではない」

このように、朴槿恵大統領の憲法違反を否定したのだった。

 

第二に、朴槿恵大統領が憲法違反を犯して、言論弾圧を行ったかどうかである。

「すべての証拠を総合しても、(社長を解任したとされる)『世界日報』に対して、具体的に誰が圧力を行使したのかは明確ではなく、朴槿恵氏が関与したと認定するだけの証拠がない」

第二の点でも、朴槿恵大統領の憲法違反を否定した。

第三に、2014年4月16日に起こった「セウォル号沈没事故」に際して、朴槿恵大統領が憲法違反の行為を行ったか否かだ。

「朴氏は憲法上、大統領としての職責を誠実に遂行する義務を負っているが、誠実な職責遂行義務のような抽象的な義務規定の違反を理由にして、弾劾訴追するするのは難しい。政治的な能力のなさや政策決定上の誤りといった職責遂行の誠実さの有無は、それ自体では訴追の事由とはならない」

第三の事案に関しても、3たび朴槿恵大統領の憲法違反を否定したのだった。

第四に、朴槿恵大統領が崔順実被告を国政に介入させたことが、憲法違反に当たるかどうかだ。

「朴槿恵氏の指示もしくは放置によって、職務上の秘密に当たる多くの文書が、崔順実被告に流出した点は、国家公務員法の秘密厳守義務に違反したものである」

つまり、国家公務員法の守秘義務違反には当たるが、憲法違反だとは述べていない。

第五に、朴槿恵大統領が「ミル財団」と「Kスポーツ財団」に関して、憲法違反があったかどうかである。

「朴槿恵氏は安鍾範被告(前大統領政策調整首席秘書官)に対して、文化とスポーツに関する財団法人を設立するよう指示し、大企業から486億ウォンの拠出を受けて『ミル財団』を設立させ、288億ウォンの拠出を受けて『Kスポーツ財団』を設立させた。両財団の運営に関する意思決定は、朴槿恵氏と崔順実被告が行い、財団に資金を拠出した企業は、まったく関与できなかった。

憲法は、公務員を『国民全体に対する奉仕者』と規定し、公務員の公益実現の義務を謳っている。朴氏の行為は、崔被告の利益のために大統領の地位と権限を乱用したものであって、公正な職務遂行とは言えない」

再び大韓民国憲法に照らし合わせると、第7条1項で、「公務員は国民全体に対する奉仕者であり、国民に対して責任を負う」と記されていた。

だがこの規定は、多分に一般の公務員を対象に書かれたものと思われる。なぜなら大統領に関しては、第66条から第85条まで、わざわざ20条分も使って、別個に細目規定を定めているからだ。だが、この66条から85条までの規定に対する朴槿恵大統領の憲法違反は、李代表代行の口からは指摘されなかった。