米国の金融アドバイザーとブローカー120万人の懲戒に関する記録を包括的に調査したところ、女性の金融アドバイザーが不正を犯した場合、男性よりも厳しい処罰を受け、再就職先を探すのに苦労するということが明らかになった。
全米経済研究所(NBER)が発表した論文によると、金融仲介業で不正を犯した場合、女性は男性よりも20%高い割合で職を失う。問題のある行動をとるのは、男性が女性の倍以上であるにもかかわらずだ。
シカゴ大学やスタンフォード大学、ミネソタ大学で教えるこの論文の著者らは、この差を同業界での「偏見による差別」の表れであると指摘した。
また、「金融アドバイザー業界は男性のアドバイザーに二度目のチャンスを与えることに前向きな一方で、女性のアドバイザーは業界から干されがちだ」とも記している。
この研究は、米証券業界の自主規制機関である金融取引業規制機構(FINRA)が2005年から15年にかけて蓄積したデータベース上のすべてのアドバイザーとブローカーについて調べたものだ。その数は金融と保険業界の全労働者の約10%にあたる約120万人に及ぶ。
平均すると、男性の金融アドバイザーは約11人に1人が過去に不正を行ったことがあるのに対し、女性は33人に1人であることが調査で明らかになった。
■男性優位の業界体質
投資助言サービスは長い間男性優位の業界だ。米国では女性の金融アドバイザーは全体の4分の1にとどまっており、この比率は過去10年間変わっていない。
投資ルール違反などのブローカーによる不正行為は近年、同業界の頭痛の種だ。こうした中、FINRAは有害な行為を厳しく取り締まり、一部のアドバイザーが米国の一般人をカモにしているという世間の認識を変えようとしている。
論文には、不正を犯した場合、女性は男性よりも首になる確率が50%高く、その後長期間にわたり失業し、1年以内に業界内で再就職できる確率は30%低いと記されている。
また、男性幹部の占める割合が高い証券会社は、女性の不正行為をより厳しく処罰する傾向があることも明らかになった。管理職に就くアドバイザーの80%以上が男性で、女性の幹部がいない会社の場合、女性のブローカーは不正で男性よりも首になる確率が42%高い。この論文は「男性幹部は不正行為に関して女性よりも男性に対して寛容であるようだ」と指摘している。
消費者保護の推進派であるエリザベス・ウォーレン上院議員は、ブローカーの不正行為をなくすようFINRAに圧力をかけている。同氏は昨夏、FINRAに書簡を送り「苦労してためたお金でこれから投資しようとする家庭を守る」ために行動を起こすよう求めた。FINRAは昨年、証券会社の企業文化や倫理(規定)について全面的な見直しを行ったのに続き、1月には顧客を高いリスクにさらしたブローカーについて「特に厳しく監視する」と述べた。
By Anna Nicolaou
(2017年3月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)
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