首相に離脱通告権限 27日にEU伝達有力視
【ロンドン矢野純一】英議会は13日、欧州連合(EU)からの離脱通告の権限をメイ首相に与える法案を可決した。メイ氏は月末にもEUに離脱を正式に通告し、原則2年間の交渉が始まる。英主要メディアは通告日は「3月27日」が有力と報じている。欧州の単一市場と関税なしで取引する権利を失う英国は、多岐にわたる分野で過去に例を見ない困難な交渉に臨む。
交渉は2019年春には終える予定。交渉では、英国とEUとの関係の枠組みを決める離脱協定や、新たな通商協定などを結ぶ必要がある。加盟国の同意があれば交渉延長は可能だが、期間内に合意できなければ、英国は自動的にEUを離脱することになる。
メイ氏は交渉の基本方針を示した1月の演説で「EUから完全に離脱する」「他に例のない英独自の協定を結ぶ」と強調。EU加盟国が享受する「人、物、金、サービス」の四つの移動の自由についての通商協議もゼロから始めるとした。
また、ブリュッセルで開かれた9日のEU首脳会議後、離脱協定と共に通商協定も2年間で合意することを「楽観している」と述べた。一方で、デンマークのサムエルセン外相は通商協議には「15年はかかる」としており、英・EU間で交渉に対する基本認識に大きな開きがある。
英議会の外交特別委員会は12日、「交渉が難航して(交渉期限の)2年が過ぎた後、何も決まらない可能性がある」とする報告書を発表。政府に対し、交渉が不調に終わった場合に備えることを求めた。
離脱を巡り、メイ氏は国内にも難題を抱える。EUへの残留を望む北部スコットランド自治政府のスタージョン首相が13日、14年に続き2度目の独立を求める住民投票の実施を来週、自治政府議会にはかることを発表。一方、与党保守党の重鎮がメイ氏に対し、国民の信を問う総選挙を行い、離脱交渉に臨むべきだと発言。国内政治でも今後、難しい政権運営に直面する。
メイ氏に離脱通告権限を与える法案は下院で先月8日に可決された後、上院で修正がかけられ、下院に差し戻された。下院では原案に戻して再可決し、13日夜に開かれた上院でも原案のまま可決。エリザベス女王の承認を得て成立する。