ゴッホとゴーギャン展
2017年1月3日〜3月20日
愛知県美術館
中日春秋(朝刊コラム)中日春秋カタツムリの殻は、いつもピカピカしている。じめじめした場所で暮らしているのに、実に清潔である ▼カタツムリの殻の表面には、とてつもなく細かい凹凸がある。だから油汚れが付いても油と殻の表面の間に水が入り込んで、油を浮かせてしまう。そんなカタツムリの殻の構造から、汚れにくく掃除のしやすいタイルが生まれたそうだ ▼大きな羽音を立てずに飛び、獲物を仕留めるフクロウの羽を参考にしたら、新幹線のパンタグラフの騒音が、三割以上も減った。先端にギザギザがある蚊の針をまねたら、刺す痛みが少ない注射針が生まれた(石田秀輝ほか著『地球が教える奇跡の技術』) ▼そういう「自然の造形の妙」から教わった発明品の中でも、これは歴史的傑作の一つだろう。このほど日本化学会の化学遺産に指定された、おなじみの蚊取り線香である ▼上山英一郎(一八六二〜一九四三年)が最初に作った蚊取り線香は細い棒だった。四十分ほどしか持たないから、安眠などできぬ。苦心する英一郎に「渦巻き型なら:」と勧めたのは、妻ゆき。蛇がとぐろを巻いているのを見て、形を思いついたと伝えられる ▼物理学者・寺田寅彦は<科学者になるには自然を恋人としなければならない。自然はやはりその恋人にのみ真心を打明けるものである>と説いたが、あの絶妙な渦巻きもまた、自然の真心の形なのだろう。 PR情報 |
|
Search | 検索