【萬物相】勝者の宴のあとに韓国社会が直面する現実

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 欧州の近代史で処刑された国王は3人いる。英国のチャールズ1世、フランスのルイ16世、そして、ロシアのニコライ2世だ。当時の各国民衆の反応h異なった。チャールズ1世が死んだ際の目撃談が英国に伝わる。「数千人の嘆きが響いた。それまで一度も聞いたことがない、二度と聞きたくはない声だった」という。その日、ロンドンは沈黙の夜を送った。

 ルイ16世の処刑時には、パリの広場は歓声に包まれた。その後、王妃までもが同じ刑場に立たせられ、民衆の熱狂と興奮は絶頂に達した。革命裁判所には祝いの手紙が殺到した。「国民の血を貪欲に飲んできた傲慢なオーストリアの女の首がついに落ちた」――。パリの通りには数日にわたり祝杯の酒の香りが漂っていたという。この日の勝者の宴はすぐに死の宴へと変わった。革命と反革命が繰り返され、数年間に同じ広場の断頭台だけで4万人が王と王妃と後を追った。

 チャールズ1世を刑場に立たせた革命の主役、クロムウェルは、勝利と敗北が順に訪れる歴史の法則を知っていた。国王の処刑を主張しながら、「我々が逆賊、反逆者になることは知っているが、やむを得ず神の摂理に従うしかない」と嘆いた。処刑当夜、王の遺体を密かに訪ね、「残酷な宿命よ」と言いながら悲しんだという話も伝わる。英国もまた、革命と反革命を経て、多くの血が流されるのを避けることはできなかった。その経験と反省が39年後、現在の英国を形成した名誉革命へとつながった。

 朴槿恵大統領の弾劾が決まった10日、普段から弾劾を支持していた友人からメッセージを受け取った。「夕方に家族とチキンで一杯やる」というのだ。それだけにとどまらず、外電は「弾劾決定後、韓国がチキンを食べて祝っている」と伝えた。不義に対する風刺か、敗者に対するあざけりか。広場では人々がシャンパンを開ける姿も見られた。翌日には数万人が広場に集まった。祝いの歌が流れ、祝砲も響いた。

 彼らが歓呼しているその時、ため息をつく人々が韓国社会にはいた。法治主義を拒否するわけでも、民主主義を否定するわけでもない。特定の個人ではなく国を憂う人々、考えが異なるために敗者にされた人々だ。弾劾後の政治変動、安全保障危機、経済危機への不安で落ち着かない人も少なくない。大統領弾劾はないに越したことはない不幸な事件だ。声を上げて笑うようなことではない。勝者の宴はいつまで続くのか。宴が長引くほど、社会の亀裂は深まる。パーティーが終われば、現実は間違いなくやってくる。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員
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