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不道徳なヤツほど道徳を説きたがる

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 森友学園の理事長の会見、見ましたか? あっ、見てないなら、ムリに見る必要はありません。理性も知性もない狂信者の演説は聞くに堪えません。聞いてると吐き気がしてきます。
 根拠も論理も具体性もないたわごとをわめき続け、自分を正当化したつもりになってるだけ。100%の自己弁護。100%の自己憐憫。100%の責任転嫁。悪質なクレーマーと同じ思考回路です。
 二言目には日本、日本というけれど、あんたは日本代表じゃない。教育勅語や明治天皇を持ち出すけど、あんたは天皇の代理人でもない。
 経歴詐称や書類改竄など、平気でウソをつきまくる。差別をする。自分より立場が弱い者を恫喝し、おエラいさんにはとことん卑屈にふるまえる。こんな、道徳のカケラも持ち合わせてない人間に、道徳を教える資格なんてありませんよ。
 まさに、私が『みんなの道徳解体新書』で指摘したとおりです。英語や数学や体育は、それを得意な人が先生になってこどもに教えます。でも道徳にかぎっては、道徳のことをなにも知らない不道徳なヤツが教えてもいいんです。ズルやインチキをしてるヤツほど、善人の皮を被って、こどもに道徳を説きたがるものなんです。
 会見では、産経新聞までもが自分を批判したと怒ってました。じつは私も、3月7日に各紙がどう報道してるのか確かめたとき、産経もあの土地取引に関しては批判してるのを知って、意外に感じたんです。てっきり、エセ右翼フレンズをかばってると思ってたもので。そこはちょっと安心しました。右や左や保守やリベラルに関係なく、まともな常識のある人はみんな、あれはおかしい、フェアじゃない、と思ってたわけです。
 となると、あの土地取引を問題ないとし、国会への証人喚問も拒否し、理事長を擁護し続けた自民党の非常識ぶりが際立ってきます。前にもいったけど、法に反しなければなにをやってもいいという考えは、道徳ではありません。それが通るなら、道徳教育は不要です。幼稚園児に法律を教えればいい。「ぼくたちは、法の抜け穴を探しまーす!」と唱和させたらいい。
 たとえ法に反してなくても、えこひいきや不公平だとわかったら、それをやらないのが道徳です。そんなあたりまえのこともわかってない自民党にも、道徳を語る資格はありません。

 ついでにもう一点。土地取得に関しては批判しても、森友学園の教育については「教育理念はいろいろあっていいし、私学だから問題ない」などと擁護する人がいますけど、それはまちがいです。だったら逆に、私学なら反日教育をしてもいいのですか?
 たとえ私学であろうと、極端な愛国教育と極端な反日教育、どちらも許されません。なぜなら、こどもは教育を選べないから。こどもは親が選んだ教育を強制的に受けさせられます。もし、その教育が極端に偏向していたとしても、こどもにはそれを批判する能力もないし、自分からやめることもできません。だからこそ、教育はできるだけニュートラルでなければならないんです。教育理念はいろいろあるといっても、それは常識の範囲内での「いろいろ」です。森友学園のやってることはあきらかに常識外れです。
 オトナになってから自分で思想信条を選び直せる余地を残しておくのが、正しい教育です。幼いころから極端な思想教育を受けた子が、オトナになってもその影響力から抜け出せなかったら、それは教育ではなく洗脳です。
[ 2017/03/13 23:09 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告