大韓民国の大統領が強い態度で「ノー」と言うべき問題が幾つかある。それは北朝鮮による核とミサイルによる挑発、北朝鮮に住む同胞への人権弾圧、国連による対北朝鮮制裁に違反する行為などだ。これらは絶対に容認できるものではない。さらにわれわれの主権を無視しTHAAD(米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル」)配備の取りやめを求める中国の干渉にも「ノー」と言うべきであり、日本の歴史問題、独島(竹島)領有権問題も見過ごすことはできない。さらに米国による不合理かつ行き過ぎた通商圧力にもノーと言うべきだ。
一方ですでに韓米間の合意を経て配備され、稼働に向けた最終段階に入ったTHAAD、そして「最終かつ不可逆」として国家間で合意し署名した韓日慰安婦合意については話は別だ。これらを今から「ノー」と言って拒否すれば同盟国との葛藤を引き起こし、国際的な信用を失墜させてしまうため、大韓民国の国益という観点からも深刻なマイナスとなってしまう。われわれはかつての盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権内部が「対米自主派」と「韓米同盟派」に別れて対立し、米国との関係をいたずらに悪化させたことを思い起こさねばならない。文氏は「当選すれば直ちに開城工業団地と金剛山観光を再開する」と明言している。これらは国連による制裁に違反するのはもちろん、北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)委員長の息を吹き返させ、米国とも深刻かつ無用な対立を引き起こすだろう。この状況を最も喜ぶのは他でもない、金正恩氏だ。
ところが文氏はこの指摘に対しては一言も説明しようとしない。国民の多くは文氏が米国に「ノー」と言うべきでないことに「ノー」と言い、北朝鮮と中国には逆に「ノー」と言うべきことに「ノー」と言えないのではないかと今から心配しているのだ。