今月10日に憲法裁判所が弾劾を認める決定を下してから2日が過ぎた昨日、朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領は韓国大統領府の官邸を去り、ソウル市江南区三成洞の自宅に戻った。自宅に到着した直後に発表したメッセージの中で朴前大統領は「私に与えられた大統領としての召命を最後まで全うすることができず、申し訳ないと思っている。この全ての結果については私が抱いていく」と述べる一方で「時間はかかるだろうが、真実は必ず明らかになると信じている」とも言及し、憲法裁判所の決定はあくまで受け入れられないとする考えを示唆した。これでは国民の期待と懸け離れていると言わざるを得ない。
われわれはここ数カ月間、大統領の弾劾をめぐって数十年に1度の大混乱を経験した。国が完全に二つに分裂し、双方が大規模集会を開いて国民の誰もが国の将来を憂えた。また憲法裁判所が結論を出した後の世論調査を見ても、およそ90%の国民が「今や葛藤と対立を乗り越え、国が一つとなる道へと進むべきだ」と回答した。これは国が混乱に陥ることは国民も望んでいないことを意味している。
分裂を乗り越えるに当たり重要なことは、朴前大統領がどのような形で大統領の職から引き下がるかという点にある。朴前大統領も当然悔しい心情を味わっているはずだが、朴前大統領自身はつい先日まで大韓民国憲法の最後の守護者であり、また憲法裁判所による弾劾の決定は憲法に定められた手続きに従って進められた。朴前大統領は自らその憲法によって大統領職を追われる形になったが、前職の大統領として憲法を守る姿勢だけは変えてはならない。そのような姿勢こそ国民が最後まで記憶にとどめたい朴前大統領の姿だ。
今回の弾劾を通じ、最貧国から世界10位圏の国に上り詰めた大韓民国に誇りを抱いてきた国民は心に大きな傷を受けた。前回の大統領選挙ではその国民の多くが朴前大統領を支持し、朴前大統領も自らを支持してくれた国民に心配を掛けたことを申し訳なく思っているはずだ。だとすればたとえつらくとも今の苦しい気持ちを乗り越え、国民に向け自らの口で「憲法裁判所の決定を受け入れる」と明言し「国民が一つになって大韓民国を守ってほしい」と呼び掛けるべきだ。今この瞬間、その言葉は失意に沈んだ国の将来を明るく照らすほどの大きな力があるのだ。
1974年にウォーターゲート事件で弾劾され、任期途中で職を追われた米国の故ニクソン元大統領は辞任する際「今も私の全身は本能で(辞任を)拒否している」「しかし大統領として米国の利益を守らねばならない」とコメントした。米国の歴史に刻まれたこの言葉は、大韓民国の歴史にとっても必要な言葉だ。