民進党 政権奪取の気迫乏しい
民進党は結党後初の定期党大会を開いた。旧民主党と旧維新の党が合流して約1年を迎えるが、政権奪取の足がかりが得られたとは言いがたい状況だ。
安倍内閣との対立軸を意識することは大切だが、政策で付け焼き刃の対応をするようでは逆に信頼を損なう。このままでは万年野党になってしまう危機感を持つべきだ。
蓮舫代表は「国民に(安倍内閣と異なる)選択肢を示す政党だと伝えたい」と強調した。了承された活動方針は「人への投資」を優先し、教育無償化の実現に取り組む姿勢などが盛り込まれた。
安倍内閣の内政は給付型奨学金制度の創設や、同一労働同一賃金に向けた働き方改革など、リベラル色の強い民進党に接近している。それだけに与党との違いを具体的な政策でどう説明していくかが課題となる。
今国会、民進党は森友学園への国有地売却やテロ等準備罪の新設をめぐる問題点の追及など、政権の監視に一定の存在感を発揮している。
だが、それは民進党への期待感につながっていない。野党第1党として、政権を何が何でも目指す気迫が乏しいのではないか。
とりわけお粗末だったのが、原発政策をめぐる混乱である。
蓮舫氏はこれまで「2030年代」と幅があった原発稼働ゼロの目標時期を「30年」と期限を切り、活動方針に明記しようとした。
ところが支持団体である連合などの反発を受けると、あいまいな表現で妥協し、「原発ゼロ基本法案」の策定という形で収拾してしまった。 再稼働への世論が依然として厳しい中、「脱原発」を党の旗印とする狙い自体は理解できる。
だが「30年」を具体的に裏付ける政策をどこまで議論し、用意していたのか疑問がつきまとう。共産党を含む野党選挙協力の大義名分として飛びついた面もあるのではないか。
党首の方針を徹底できない統制不足も旧民主党と同様だ。東京都議選での民進党惨敗を想定した蓮舫氏の責任論がすでに党内の関心を呼んでいる。このことを執行部は深刻に受け止めるべきだろう。
旧民主党政権が招いた失望を回復することは並大抵ではない。
たとえば、税と社会保障の一体改革に関する責任ある構想を示していくことは政権を担い得る能力をアピールする重要な要素となる。
党内では単純な所得再配分ではなく、すべての人が能力に応じて負担し合う仕組みを構築して社会保障の信頼度を高めるビジョンが検討されている。「1強自民」に本気で立ち向かうのであれば、こうした議論を地道に積み上げるべきだ。