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元気回復! 水の飲み方 大革命
話題 健康

元気回復! 水の飲み方 大革命

2007年5月9日(水)
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最近「水」は大ブーム! 水を飲むための「ウォーター・バー」が登場したり、スーパーの店頭などでは飲料水サービスが広まるなど、健康のために水を飲むという人も増えています。

とはいえ、ほとんどの人の水の飲み方は「喉が渇いたら飲む」程度。ところが、専門家からは、「ただ“渇いたら飲む”だけでは、体内の水分を保つには不十分」との指摘が! 一方、むやみに飲み過ぎると「水中毒」で命の危険もあるといいます。

そこでガッテンが水の飲み方を徹底研究! ノーベル賞も受賞した新発見が解き明かす「新しい水の飲み方」とは?

新発見! 体の中に水の穴

2003年、アメリカの科学者が人間の体の細胞に「アクアポリン(水の穴)」と名付けられた新物質を発見した功績で、ノーベル化学賞を受賞しました。このアクアポリンがないと、人間は涙を流すことすらできないといいます。「体の中の水の穴」って、一体どういうこと!?

今回のお役立ち情報
01

「大発汗!のどのかわきの水(ミズ)テリー」

暖房器具と加湿器を使って、まるで熱帯地方を思わせる蒸し暑さにした部屋で行う「ホットヨガ」。大汗をかくことで新陳代謝を高める、いま話題のエクササイズです。

10~20代のヤングチーム、60~70代のアダルトチーム各4名ずつにホットヨガに挑戦してもらい、40分間のヨガでかいた汗の総量を、運動前後の体重減少で調べました。

その後、失った水分を取り戻したと思うまで十分水を飲んでもらい、その飲んだ量と汗の量を比べました。すると、飲んだ水の量は、かいた汗の量の半分にも満たないという結果になりました。

各チーム1人当たりがかいた汗の量と、飲んだ水の量の平均

かいた汗の量

飲んだ水の量

ヤングチーム

512ミリリットル

113ミリリットル

アダルトチーム

525ミリリットル

250ミリリットル

なぜ、ずっと少ない水分補給で満足してしまうのでしょうか? 「喉の渇き」の仕組みを調べると、不思議なことが分かりました。

02

「カラカラ飛んでけ大実験」

しばらくの間水分を控えてもらい、ノドが十分渇いた4人の男女に協力してもらい、「水を飲まずにノドの渇きを癒す方法」を探る実験を行いました。

まず、コップ1杯の水で口をゆすぎ、飲まずに出してもらったところ、最初レベル5だった「渇き度」が、レベル1や2まで大幅に下がりました。

さらに、「小石をなめる」「洗濯ばさみで唇を挟む」という実験をしてもらうと、4人の渇き度の平均が最初のレベル5の半分以下に下がりました。飲むという行為は口を通して起こるものなので、口の周りを刺激することによって、脳が実際に水を飲んだと判断(錯覚)したのです。

ノドの渇きが錯覚によって癒される仕組み

飲んだ水はいったん胃で留まり、少しずつ腸へ移動して、腸から血液へ取り込まれます。

その間、ある程度の時間がかかるため、血液中の水分の量が元に戻るまで脳がノドの渇きを感じ続けると、渇きが癒されたと感じるころには水を飲みすぎてしまっていることになります。もし血液中の水分が過剰になると、「水中毒」と呼ばれる危険な状態になり、死に至ることもあります。

そうした危険を避けるために、口やノドに「冷たい」「ぬれた」という感覚を感じ取るセンサーがあり、水が入ってきたと感じ取ると、いったん脳が感じるノドの渇きを癒して飲み過ぎを防ぐ仕組みがあるのです。

なぜ洗濯ばさみでも渇きが癒された?

専門家の見解によると、ノドの渇きを上回る感覚刺激(痛みなど)によっても、一時的に渇きが紛らわされるといいます。仕事が忙しい時などにノドの渇きを感じにくくなる理由も同様と考えられます。

錯覚だけで水を飲まなくても平気なの?

錯覚によってノドの渇きが癒えるのは、あくまでも一時的な効果で、体内の水分量が不足している限り、刺激がなくなると再びノドの渇きを感じるようになります。

03

「水(すい)らなかった!ガッテン脱水大調査」

ノドの渇きだけに頼って水分を摂取しているとどうなるのでしょうか? お米の流通会社で働く男性・Tさん(42歳)にご協力いただき、1日の体内の水分量の変化を、正確な体重測定で調べました。また、トイレでの排尿量や、食事時などに摂取した水分量も調べました。

その結果、起床後から夕食前までは、起床時の体重より常に体重が少ない状態で、水分不足だったのです。

では、日中の大半が水分不足の状態なのに、なぜ何事もなく生活できているのでしょうか? 実はそこで活躍しているのが、ノーベル賞受賞の最新研究で発見された「アクアポリン」だったのです。

04

「穴(あな)フシギ!新発見・水の穴」

アクアポリンは非常に壊れやすい物質であるため、超低温でカチンコチンに固めて顕微鏡(極低温電子顕微鏡)で観察することで、ついにその姿が捉えられました。

その実体は、内部に小さな穴が開いた筒型のたんぱく質です。この穴は、1秒間に数十億個もの水分子が通り抜けることができます。この「水の穴」が体内にあるからこそ、肌に水分が補給されたり、ものを食べる時に唾液が分泌されたりするのです。

この「アクアポリン(水の穴、という意味)」が体内の「ある場所」に水の通り道を作ることで、飲んでいる水の量が少なくても、脱水症状にならずに済んでいました。その「ある場所」とは、血液中の水分を濾過して尿を作る腎臓です。

05

「脱水から身を守るアクアポリンの働き」

血液中の水分が不足すると、脳は「脱水状態」を検知し、特別なホルモン(抗利尿ホルモン)を分泌して、腎臓に脱水を知らせます。すると、腎臓の細胞内にあるアクアポリンたちが、腎臓内で作られた尿(原尿=げんにょう)が流れる管の表面に移動し、「水の穴」を取り付けます。この穴を通じて、尿の中からきれいな水だけが取り出され、水分の減った血管に注ぎ込まれるのです。脱水状態が解消されると、アクアポリンはまた細胞内に戻ります。こうしてアクアポリンは、脱水の危険から私たちの体を守っていたのです。

細胞はその表面が脂の膜で覆われており、通常は水がほとんど通り抜けられません。しかし、脱水状態になると、アクアポリンが移動してこの膜にはまりこみ、その穴を通じて尿の中からきれいな水だけが取り出されます。

アクアポリンの内部に開いた穴の大きさが、ちょうど水分子1個がギリギリ通り抜けられるサイズになっているため、水分子より大きい尿中の老廃物などは、通り抜けられないのです。

06

「年をとるとアクアポリンの機能が衰える」

ところが、いつもアクアポリンが正常に働いてくれるとは限りません。

年をとると、腎臓はホルモンによる脳からの指令への反応が鈍くなり、さらには腎臓の細胞内にあるアクアポリンの数自体も減ってしまいます。その結果、尿から水分を取り戻すことで脱水症状を緩和することが難しくなるのです。その分、積極的に水分を摂らないと、脱水症状に陥りやすくなります。

つまり、1日に摂るべき水分量を決めて、意識的に飲むことが重要になってくるのです。

アクアポリンの機能の衰えはいつから?

個人差もありますが、最近の研究では60~70歳代にかけて、腎臓の機能の衰えとともにアクアポリンの数も減少していくと考えられています。

若い頃と同じように、「渇いたら飲む」という意識だけで水分を摂取していると水分不足に陥りやすく、放置すると脳こうそくや心筋こうそく、熱中症の危険が高まります。

07

研究者による解説

体内の水分が不足すると、血液の粘り気が強くなり、脳こうそくや心筋こうそくの危険性が高まると考えられます。また、体温調節がうまくいかず、熱中症などにもなりやすくなります。

暑くも寒くもない気候で、安静にしている時に、1日に失われる水分量は、尿はおよそ1400ミリリットル、呼吸・皮膚からの蒸発はおよそ900ミリリットル、便に含まれる水分としておよそ200ミリリットルで、1日合計約2500ミリリットルになります。暑い時や運動時に汗をかくと、これに加えてさらに1日1リットル程度水分を失います。

1日に摂取するのが望ましい水分量の目安

1日3食の食事中に約1000ミリリットルの水分が含まれているため、最低でも残り1500ミリリットル分は水分として摂取する(飲む)ように意識することが望ましいといえます。

失いがちな水分量をある程度知った上で、「失う前に“先取り”して飲む」のが理想的です。一度にがぶ飲みすると、尿として出てしまいやすいので、「“小分け”に飲む」ことをおすすめします(夜間頻尿につながる場合もあるので、飲み過ぎにはご注意ください)。

「先取り」「小分け」の水分摂取を、脱水大調査にご協力いただいたTさんに実践してもらいました。日中に失いがちな水分量を、あらかじめペットボトルに入れて持ち歩いてもらい、仕事の合間や食事中に小分けに飲んでもらいました。その結果、水分不足状態になっている時間帯が大幅に減ったのです。

どんな飲料を「水分」として飲めばいい?

アルコールは利尿作用が高く、飲んだ以上の水分が尿として排出されるので、水分摂取の目的には適しません。カフェインを多く含むコーヒーなどの飲料も、高い利尿作用があります(麦茶やほうじ茶などはカフェインが少ない)。

糖分を多く含むジュース類や清涼飲料水は、糖分の摂りすぎに注意してください。