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長野山岳救助、打撃大きく 防災ヘリ墜落1週間
松本市の山中で県消防防災ヘリコプター「アルプス」が墜落し、搭乗した九人全員が死亡した事故は十二日で一週間を迎えた。宮崎県日向市で十人が死亡した一九九〇年の事故に次ぎ、平成に入ってから二番目に死者が多いヘリ事故となった。県警は業務上過失致死の疑いで捜査を開始し、現場検証や残された映像を分析して原因究明にあたる。県は山岳救助を担う貴重な人材とヘリを失い、立て直しは前途多難だ。 アルプスは五日午後一時半すぎ、県営松本空港を離陸。鉢伏山付近の尾根で隊員がヘリから降下し、負傷者に見立てた隊員を救出する訓練を計画していた。訓練前に、塩尻市の高ボッチ高原の臨時ヘリポートに隊員を一人降ろす予定だったが、その際の無線連絡がなく、離陸から十五分ほどで消息を絶った。墜落現場はヘリポートから北に五キロで、百メートル北西のカラマツ林には機体が接触した痕が見つかった。 回収したビデオの映像には、進行するヘリの高度が徐々に下がっていき、窓に木々が迫ってくる様子が写っていた。県警は映像を分析し、高度が下がった原因を調べている。 墜落したヘリ「ベル412EP型」の定員は十五人で、一時間半分の燃料を積んでいた。県によると、山岳救助や訓練では通常、五人前後が搭乗するが、事故当時の九人は普段より多かった。過去にも数回、同じ規模の訓練があったという。 捜査する県警だが、残された証拠は多くない。ヘリはフライトレコーダーやボイスレコーダーを積載していなかった。訓練の記録用に隊員のヘルメットに着装されていたビデオの映像は二十分前後で、音声は記録されていない。事故原因の調査には、機体を回収する必要があるが、墜落現場は尾根上で積雪もあり、回収の見込みは立っていない。 事故で死亡した操縦士の岩田正滋さん(56)は総飛行時間が五千百時間のベテラン。残り二人の操縦士は県が養成中。全国的にヘリ操縦士は不足しており、ベテラン操縦士の確保は難しい。実際の救助にあたる消防隊員も八人中、七人を事故で失った。消防関係者のショックは大きく、人材補充も簡単ではない。 県消防防災ヘリが担っていた役割について、県は民間事業者への委託も視野に検討を始めた。現在、六県と結ぶ「相互応援協定」も拡大する方向で協議している。 (沢田佳孝) PR情報
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