こんにちは!大学で心理学を学んでいるひぐらしです。
僕Disney映画がめっちゃ大好きなんです。その魅力は別の記事でまとめてあります。(過去の記事:ディズニーのアニメーション映画が絶賛される3つの理由)
そして、いよいよ『アナと雪の女王』が地上波、しかもノーカットで放送されます!!これは見逃せない!!!(本日21時放送!!フジテレビです)
ディズニー映画の中で最も大好きな作品の一つです。そして、この『アナ雪』実は思っている以上に
深い
のです。
そこで今回の記事では、『アナと雪の女王』を100倍、いや1000倍楽しんでいただくために、心理学を交えた解説記事を書きました!!(ということでネタバレしていますが)
ぜひ、ご覧になる時のお供にぜひ!!
もくじ
『アナ雪』の正しい見方
それでは、ストーリーの流れに沿って説明していきます。
Frozen heart に気をつけて
『アナと雪の女王』の元々の題は『Frozen』です。「凍ってしまった」ということですね。
氷の魔法を使えるエルサですが、まちがってアナの頭に氷をぶつけてしまいます。意識がなくなっていくアナを助けたのは石でできたトロールでした。そんなトロールが言っていた言葉があります。
頭でよかった。心が凍ってしまったら大変だ。
これ実は私たちの現実世界のことをたとえているんですね。(こじつけじゃないですよ!物語を見ていくとちゃんとこのとおりになっているんです)。
「凍る」というのは、「心の病」になってしまうことを表しています。病という言葉が重すぎたら、心の寂しさや苦しみを表しているということです。
この映画の中で、「氷」は苦しみや寂しさ、満たされなさを表すモチーフとして描かれています。それは時に、怒りや動揺に変わることもあります。この「氷」の動きに注目すると面白いです。
「頭が凍る」とは、「考え方が固まってしまうこと、偏ってしまうこと」を表しています。要は、頭で考えていることがうまく働かなくなるということです。
こうなると、ゆくゆくは「心の病」に発展してしまいます。
しかし、頭が凍っても治療は比較的に簡単なのです。認知行動療法という確立された方法があるからです。認知行動療法で変えるのは、その人の考え方と行動です。とても効果的で効率的なプログラムがあります。
それに対し、「心が凍る」と治療は難しいものになります。心が凍るとは、「愛情や受容された経験が少なかったり、自尊心や自己肯定感が低くなること」を表しています。
この場合、治療はかなり難しいです。それはパーソナリティにも関わる部分にもなってくるのです。
『アナ雪』では、「凍った心」はどうなおせるのでしょうか?
「真実の愛」でしたね。上の説明から、なぜ「真実の愛」が必要かなんとなくわかってきませんか?
一番最初の歌でも歌われていたように「Beware the frozen heart=氷の心に気をつけろ」なんですね。
それでは一体誰の心が凍ってしまうのでしょうか?
凍ってしまうエルサの心
見逃しがちなのですが、凍ってしまうのは「エルサの心」です。アナだけではないのです。
そして、エルサが治めるアレンデール王国は
エルサの心の中
を表しています。詳しく説明しましょう。
氷の魔法を使うエルサは、城の中に閉じ込められてしまいます。召使の数も減らされ、十分な「きずな」を作ることができなかったのでしょう。決定的だったのは、両親の死でしょう。
そして、強まっていく自分の力に恐怖が生まれていきます。コントロールできない自分に不安がいっぱいになります。
そうしてだんだんと心を閉ざしていくのです。これが「心が凍ってしまう」下地になります。
そして、エルサの「心が凍ってしまう」引き金となったのが、アナとの喧嘩、そして、人々の恐怖の目です。
先ほど、「心が凍る」というのは、「愛情や受容された経験が少なかったり、自尊心や自己肯定感が低くなること」と説明しました。まさに、エルサの心の状態そのものです。
こうして、エルサの心の中を表すアレンデール王国は氷に包まれるのです。アレンデール王国が凍ったのは、「エルサの呪い」ではありません。エルサの心の中そのものを表しているのです。
そして、この凍った心を溶かすために必要なのが、「真実の愛」。これは最後まで覚えておいてください。
アナもエルサと同じような境遇に置かれていました。
エルサの戴冠式で、城の外に出ることのできたアナは、ハンス王子に一目惚れしてしまいます。結局間違いだったのですが…
なんだかこれって、女子校に通ってた女の子が大学入って悪い男にだまされるのに似ているな〜って思いました。
アナのファーストキスが取られていたら大変でしたね。ただそれだけです笑
「Let it go ありのままの〜」じゃ心は凍ったまま
逃げ出したエルサは山に氷の城を建てて閉じこもってしまいます。
そこで歌われる「Let it go」は社会現象になるほど、有名になりました。しかし、その裏にある「エルサの悲しさ、苦しみ」に気づいている人はほとんどいません。
なぜ、苦しいとわかるか。それは
アレンデール王国の氷が溶けていないから
なんです。「少しも寒くないわ」と言いながら、エルサの心の中は凍ってしまったままなんです。
つまり、あの歌はエルサのただの強がりなんです。心の中にある満たされない気持ちを抑圧しているだけなんです。
実は、その抑圧された気持ちを表しているキャラクターがいます。あなたは誰だかわかりますか?
アイデンティティという言葉あります。日本語では「その人の特徴、その人がどう生きるか」ということを指して使われます。
「ありの〜ままの〜」「私は〜自由よ〜」と歌うエルサは、アイデンティティの塊のように見えますが、心理学的に見るとそれは間違いです。
アイデンティティには、「他者からの承認」というものが必要なんです。つまり、他の人から見た「その人の特徴、その人がどう生きるか」と自分が思っているものが一致する必要があるのです。これがないと、アイデンティティが確立しているとは言えません。
「私は〇〇です!」
というだけでは、アイデンティティになりません。
「私は〇〇です!」
「確かに彼女は〇〇です!」
となって初めて、アイデンティティが成立するのです。これを見ても、一人ぼっちになったエルサが実は自由ではないんだということがわかります。
自分で氷の力を受け入れるだけではなく、人にも受け入れてもらう必要があるのです。
オラフはエルサの本当の気持ち
「ぎゅっと抱きしめて〜」
が口癖のオラフ。アナとエルサが子どもの頃作っていた雪だるまに命が吹き込まれたキャラクターです。
エルサから生まれたオラフは
エルサの本当の気持ち
を表しています。
これは、精神分析学という理論をモチーフにしています。幼い頃に「満たされなかった気持ち」を無意識に押し込めることを「抑圧」といいます。そうした気持ちをあまりに抑圧してしまうと「不安」が生まれ、心が凍ります。
オラフは、子供だったエルサの「満たされない気持ち=愛情の不足」から生まれています。エルサはこの気持ちをずっと自分の中に閉じ込めていました。
だからオラフは「ぎゅっと抱きしめて〜」と言っているんです。ここまで読み解いてくると、ぞくぞくしてきませんか?
というわけでオラフは物語のキーマンになるわけです。ただのふざけたキャラクターじゃないのです。そしてオラフは、エルサの「満たされない気持ち」を満たすために、アナをエルサに引き合わせようとしているんですね。
そして、オラフが言ったセリフ
真実の愛っていうのは、自分より相手を思いやることだよ
アレンデール王国の氷が溶けた理由を説明する大切なセリフです。
追い詰められたアナの選択
いよいよ、物語はラストスパートです。エルサの魔法が心に当たってしまったアナは、息も絶え絶えになってしまいます。アナの心は物理的に凍ってしまったわけですが、「真実の愛」が必要になる。
そこで、最後の二択を迫られるわけです。
- 走ってくるクリストフ
- 殺されそうになるエルサ
アナはどちらに行くべきか。
アナはエルサの元に向かうわけです。
これを「やっぱり、男よりもおねちゃんの方が大事よね」というブルゾンちえみ的解釈をすると間違いになります。
そうではなく、これはアナの立場からみる必要があります。
アナから見た時
- クリストフ→真実の愛で自分が助かる
- エルサ→自分は凍ってしまう
という二択になっているわけです。そして、アナはエルサの元へ行くことを選んだ。つまり
自分の命を捨てることを選んだ
のです。
これが、オラフの言っていたまさしく真実の愛です。自分よりも相手を思いやった、ということなんです。
それに気づいたエルサの「凍った心」は溶けていきます。だから、アレンデール王国の氷が溶けたわけなんですね。別に、呪いがとけたということではないんです。「凍った心」が溶けたんです。
エピローグーもう一つの『Let it go』
他人から受け容れられたエルサは、不安がなくなり、自分の力もコントロールすることができるようになりました。心理学的に言えば、「愛着・基本的信頼感・被受容感は大事」ということですね。
そしてエンディングでは、もう一度『Let it go』が流れます。
- 一人で強がっていた時に歌った『Let it go』
- 大切な人たちに自分を認められた後に流れる『Let it go』
同じ歌ですが、まったく違う意味がこもった歌です。
あなたはどっちの『Let it go』が好きですか?
ディズニーが狙って脚本にしたのかわからないですが、エルサの境遇が、LGBTの人に似ているんじゃないかなと思いました。
隠していたものが、バレてしまう。そして、周りの人から白い目で見られる。
そして、大切な人に自分を無条件に受け容れられる。
これを狙って脚本にしていたらディズニーには敬服です。そうでないとしても、「ありのままの自分を認めて欲しい」と思っていた人たち全ての、心の支えになったことは間違いないと思います。本当に素晴らしい映画。