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陸自PKO撤収 不透明さ残る政府説明

 政府は南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に従事する陸上自衛隊の施設部隊を5月に撤収させる方針を決めた。派遣から5年を経て活動に区切りが付いたからだという。

     安倍晋三首相は厳しい治安情勢であっても「自衛隊にしかできない活動だ」と意義を訴えてきた。それだけに今回の撤収決定は唐突に映る。

     南スーダンは独立後に政府軍と反政府勢力の対立が激化し、内戦状態にある。昨年7月に陸自部隊が活動する首都ジュバで大規模な武力衝突があり約300人が死亡した。

     国連は民族間の「大虐殺の危険」を指摘し、政府軍の「民族浄化」に反発する閣僚や軍幹部が相次いで辞任するなど、治安や政治の情勢は混乱を深めている。

     こうした不安定な現状と、停戦合意などを前提とするPKO5原則など自衛隊派遣の制約に照らし、活動継続が困難だと判断して撤収を決めたのなら、理解できる。

     国際社会の平和と安定のための自衛隊派遣には意義があるが、治安情勢の悪化が進み、武力衝突に巻き込まれる危険性があると判断すれば、未然に回避するのは当然だ。

     しかし、政府による撤収理由には不透明感が残る。

     政府は「国造りが新たな段階に入った」という点を強調している。治安改善を任務とする新たなPKO部隊が展開し、国民対話に向けた政治プロセスが進展しているという。

     菅義偉官房長官は「治安の悪化は要因になっていない」と言う。しかし、国連安保理は昨年8月、ジュバの治安が悪化しているからこそPKO部隊の増派を決めたはずだ。

     南スーダンPKOを巡っては、昨年の武力衝突の様子を陸自が日報で「戦闘」と報告した。政府は「法的な戦闘行為ではなく衝突」と説明したが、すり替えだと批判された。

     政府はジュバ周辺は「比較的安定している」として野党の撤退要求を拒んできた。今回の撤収判断の理由に治安情勢を含めると、これまでの説明とそごを来す恐れがある。

     むしろ治安がより悪くなる前に撤収に踏み切ることで政権運営へのリスクを摘み取っておきたいというのが本音ではないか。南スーダンは米国の支援で独立したが、国際貢献に関心を示さないトランプ政権の発足が日本の判断を容易にしたとの見方もある。

     今回の撤収で日本が参加するPKOはなくなる。世界では16のPKOが展開中だが、従来の停戦監視や復興から、武力を使ってでも虐殺から住民を守るように変わっている。

     世界はなおPKOを必要としている。法秩序を保ちながら日本がどう国際貢献を果たしていくべきか。真正面から議論するときにきている。

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