スイスに出張するたびに心配なのが「殺人的に高い物価」だった。韓国料理店のビビンバが1つ3万ウォン(約3000円)以上した。フランス国境に隣接するジュネーブに出張した時は、フランス側のホテルに泊まり、毎朝スイスに渡って取材したこともある。スイスのホテルの部屋代があまりにも高かったからだ。韓国人からすれば不便なことが非常に多い国だったが、さまざまな国家評価ランキングで首位になるところを見ると、それなりの理由があるのだろう。
米メディア「USニュース・アンド・ワールド・リポート」が80カ国を対象に「最高の国」をランキングしたところ、スイスが1位になったそうだ。国力・企業環境・社会セーフティーネット・生活の質・自然環境・観光魅力度などについて全世界の2万人に聞いた結果だ。2位以下はカナダ・英国・ドイツ・日本・スウェーデン・米国の順で、韓国は80カ国中23位だった。
スイスが特に高い点を得た項目は市民権だった。人口800万人のスイスは直接民主主義が取り入れられた独特の政治制度を持っている。国民投票は年に4回行われる。誰でも自ら提案した法案で10万人以上の支持署名が得られれば、国民投票に付することができる。一種の「集団リーダーシップ」を具現化したものだ。このほど韓国政界に「サプライズ」として登場した基本所得制は、スイス基本所得(BIS)という団体のアイデアを模したものだ。彼らは従来の福祉制度をなくし、成人1人当り300万ウォン(約30万円)ずつの基本所得(ベーシック・インカム)を支給しようという法案について13万人の署名を集め、国民投票に付した。しかし、「働く意欲を失わせ、莫大(ばくだい)な財源を工面するのが難しい」という反対意見の方がはるかに多く、否決された。並の市民意識ではない。