幻覚、錯覚の原因と対応

幻覚や錯覚とは

実在しないものを感じる幻覚と見間違う錯覚

認知症では幻覚を訴える人が多く見られます。幻覚とは簡単に言うと、実際には無い物を感じるものです。五感すべてに見られるものですが、特に訴えが多いのは、実際にはそこにないものが見える幻視や、実際にはない音や声が聞こえる幻聴となります。また実際にある物を、別の違う物と見間違ったり聞き間違えたりする、錯覚が起きる事もあります。

幻覚や錯覚は、脳に異常がなくても起きる場合はあります。誰もいないのに誰かがいた気がしたとか、誰も呼んでいないのに、呼ばれた気がしたなどの経験がある人はいるのではないでしょうか。また、虫だと思っていたらゴミだったとか、携帯が鳴ったと思ったらテレビの音だったなど。ただ、脳に異常が出てくると、これらの訴えが頻回になります。また幻覚などははっきりと見え、錯覚では間違えでは?という考えは出来なくなり、確信となってしまっています。


幻覚や錯覚が起こる原因

目や耳が悪い事や不安に感じる環境

目が悪い、耳が聞こえにくいといった時に、見間違い聞き間違いは起こりやすくなります。また怖いとか不安に思う環境では、錯覚しやすいと言われます。脳に異常がなくても、壁のシミや傷が人の顔に見えたりする場合がありますが、よくよく見ればシミや傷だとわかり自分の見間違いだと訂正出来ます。それが問題になるのは、そうだと思い込んだものが間違いであると、訂正が出来ない事なのです。また妄想がそこに重なると、もっと確信となってしまいます。

レビー小体型認知症の主な症状

また幻覚はレビー小体型認知症では、良く見られる症状となります。レビー小体型認知症とはアルツハイマーに続いて多く見られるもので、脳の神経細胞がたくさん集まった部分に、異常なたんぱく質が溜まってしまい、初期段階でも幻覚を見る事があるものです。その為認知症だとは思っていない時に、知らない人がいたなどと訴え、幻覚だと気付かず慌てる事も。その他お年寄りに多い病気であり認知症とも関わりがある、パーキンソン病の薬の副作用でも幻覚を見る場合があります。

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幻覚や錯覚の訴えの実例

知らない人や子供、虫や蛇がいる

認知症で訴えの多い幻視は、家の中に知らない人がいるというものです。子供がいると言ってみたり、怖い顔の人などリアリティのある表現をする場合があります。幻聴ではその場にはいないはずの息子さんの声がしたとか、自分をのけものにする相談をする声が聞こえたなどと言ったりもします。

また虫や蛇がいるというのもよく聞かれます。虫や蛇は壁などの模様や傷がそう見える錯覚からである場合もありますし、自分の身体を虫が這いあがってくるなどは幻覚となります。また虫や蛇などが見えるといった場合、その場所を踏みつけたり、叩いたりする行動が見られる事もあります。

亡くなった人を見る事もあります

レビー小体型認知症では、かなりリアルに、そしてぎょっとするような幻覚を訴える事があります。もう亡くなっている両親がいるとか、庭の物干し竿に生首が乗っていて、こちらを見ているなど。聞いてみると両親が亡くなった事を覚えており、生首が普通は物干し竿の上にあるものではない事はわかっているのですが、はっきりとご本人には見えているので、言い切ります。でも本当にそうであるならもっと驚いて叫んでもよいところですが、怖くはないようで、冷静に「あそこから見ている」などと話す事があります。


幻覚や錯覚が起きた時の対応

否定は混乱を招きます

幻覚で実際には何もなくても、本当にそこに人がいるとか、虫がいる、また自分を呼ぶ声を聞いたとご本人は思っていますから、否定したり怒ったりしないでください。レビー小体型認知症では初期に見られ、幻覚以外にあまり目立った認知症の症状が出ていない場合があります。そんな場合は、幻覚を否定されると、不安が強くなったり混乱したりして、幻覚が酷くなったり認知症の他の症状が出てきてしまう事があります。

大丈夫だと言う言葉で安心させる

幻覚はずっと見えている訳ではないようですので、もし「知らない人がいる」と言われたら、「お客さんが来られたのかもしれないけど、もう帰っていない」などと言って安心させるのが良いでしょう。また虫や蛇などは一緒に追い払う仕草をして「もういないから大丈夫だ」と言ってみる。それでもまだそこにいると言った場合は「ここですか?」と、いると言っている場所を手で押さえてみると「逃げた」とか「消えた」となる場合が多いです。


幻覚や錯覚が起きた時の改善策

話を聞き、体調をチェックする

何か不安があるのかもしれませんので、話を聞いてあげてください。また体調が悪いという場合もありますので、熱がないかとか、水分が足りていないのではないか、また便秘になってないかなどをチェックしてみましょう。

見間違わない工夫をしてみる

壁の傷やシミなどの錯覚しやすいものは、隠せるようにした方が良いでしょう。外に干しておいた服がヒラヒラしているのを見て、人がいると言う事もあるので、レースのカーテンなどで明るさは保てても、外が丸見えにならないものをつけてみる。但し、カーテンが揺れる事で錯覚を起こす場合がありますので、空気の入れ替えなどで窓を開けるならご本人がいない間に、窓を開ける機会が多いなら、レースのカーテンは止めた方がよいです。また目が悪い人の場合、部屋の電気を明るめに変えてみてください。

受診して医師に相談してみる

あまり幻覚が頻回になったり興奮が見られたりする時は、お薬で改善出来る場合がありますので、医師に相談してみてください。まだ認知症の診断がされてない方でも行動に疑問があれば、早めに受診される事をお勧めします。


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