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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

気まぐれな災厄

241/241

砂浜


 そして、レオナは目をつぶったまま飛び込み、砂の上に転がって落ちた。
 目を開けるとそこは、砂浜だった。

「……あらま。本当に外、ね」

 きょろきょろと見回す。サキュバス村のあるフロアのように「そう見える部屋」ではなく、本当に海で、砂浜だった。
 リュックが落ちている。これが旅行セットだろうか、中身を見ると保存食と水の出るコップの魔道具、ポータブルオセロが入っていた。
 ちなみに保存食にはお米がはいっており、これには思わずニッコリした。

「なるほど。こっちはこれでオシマイと。……さて、それじゃあセツナ達にも見つかっちゃったし、また旅に出るとしますかねー。しばらくは気ままな一人旅っていうのも捨てがたいけど……それにしてもここ、どこかしら?」

 そこは、まぎれもなく砂浜。いくらなんでもツィーア山にあったダンジョンからはかけ離れ過ぎている場所だ。関門を突破するたびに部屋を移動したりはしたが、どちらかというとグルグル回っていてあまり距離は移動していなかったはずだ。
 4部屋、いや、3×3で9部屋くらいだろうか? 同じ部屋をぐるぐると行き来していたと思う。中身は都度変わっていたが。

「……それにしても終わりがコレって、結構しょっぱいわねぇ……ん?」

 と、リュックから紙が1枚落ちる。拾ってみると、日本語で『残念! 正解は『欲望の洞窟』でした!』と書かれていた。……久々に日本語を読んだ気がする。

「あー、そういえばそんな名前だったわね。――紙を燃やせ、【ファイアボール】」

 くすくすと笑いながら、レオナはその紙を魔法で焼き尽くした。

「さて、それじゃあ適当に旅に出るとしますか。……とりあえず、あっちかしら?」

 レオナはリュックを【収納】にしまうと、あてもなく歩き出す。
 久々に楽しかったわね、と、レオナは呟く。
 その顔は、どこか寂しそうに、しかし優しく微笑んでいた。


  *

 レオナは去った。

「……はぁ、疲れたなぁこれは」
「お疲れ様、ケーマ」

 何がつかれたって、今回は、ゴーレムを通じて喋りっぱなしだったので本当に疲れた。いつもの比ではない。
 ……我ながら良く司会役が務まったもんだ。案外やればできるもんだなぁ。

 しかしこれでレオナは帝都近くの砂浜(・・・・・・・)に置き去りだ。
 たとえ戻ってくるにしてもしばらくはかかるだろう。……まぁ、しばらくは戻ってくる気はなさそうだが。

『おーい、ケーマ』
「ん? ああ、イッテツか。悪かったなこっちの都合で手伝ってもらっちゃって」
『いや、良いけどよォ。今回は白星(・・)とは認めねェからなァ?』
「おや、これで1勝1敗だと思ったのに」

 ちなみに、今回の対レオナ接待の裏では、サブダンジョン『白の砂浜』とイッテツとの間でダンジョンバトルを行っていた。
 ……正確には、ゲート開けて放置し、レオナがゲートに飛び込んだらこっちが降参(サレンダー)してゲートを消すだけ、という、ただそれだけの形式だけのダンジョンバトルである。

 レイとキヌエは『白の砂浜』でダンジョンバトルを開催してもらっていて、ネルネはこっちの裏方として進行手伝い。マスタールームでは俺とロクコの2人きりだったりする。イチカとニクは宿のお仕事だし。

『さすがにコレで1勝は貰えねェだろ。ククク』
「だろうな。イッテツならそう言うと思ってたよ。まぁその、ありがとうな?」
『なァに、良いって事よォ。賢者の石も貰っちまったしなァ、ありゃァ激レアのいい赤さだ、レドラもお気に入りだぜェ?』

 今回の手伝いの報酬として、レオナからもらった賢者の石をひとつイッテツにおすそ分けしたのだ。タダで貰ったものを横流しして手伝ってもらう、実に安上がりでWinーWinな関係と言えよう。
 あ、でもお釣りだとかでウチのダンジョンの領域の近くにあったイッテツの領域をだいぶくれた。ツィーア山、ほとんどイッテツの領域だから拡張できる限界が近かったんだよな。大道具を置いておける場所と今後ダンジョンを伸ばせる先がもらえて助かったぜ。

『つぅか、アレ、なんだよケーマ』
「アレっていうと?」
『アレを遠くに追い出すためだけに今回のダンジョンバトルしたんだろォ? それだけのためにダンジョンバトルしようって考えるオメェも大概だが、一瞬しかウチのダンジョンに入ってねェけどアレがかなりヤバそうだってこたァ分かったぜェ?』
「……あー、レオナのことか。ダンジョンコアとダンジョンマスターが合体した何からしいぞ? コアの番号は知らん、聞いてない」
『はァ? なんだそりゃ』

 イッテツはモニターの向こうで首を傾げた。そうだよな、俺だってなんだそりゃって思う。

『まァいいや。また今度ちゃんとダンジョンバトルしようぜェ?』
「気が向いたらなー」
「あ、ちょっとまってケーマ。112番(イッテツ)に聞きたいことあるのよ」

 と、切り上げようとしたところでロクコが割り込んできた。

112番(イッテツ)って子供居るの?」
『あ? 子供?』
「レドラとの子供よ、子供。レオナに孫が居たから、他はどうなのかなって」
『おォ、居るぞ? 一番上が300歳ちょいだなァ。孫も居るぜェ?』

 あ、居るんだ子供や孫。そいつは初耳だな。
 レドラとイッテツのラブラブっぷりを見てたら不思議じゃないが……いや、むしろ新婚夫婦のような反応してたのが不思議というか?
 『火炎窟』なだけにいつまでもアツアツの夫婦ってことか?

『ドラゴンは寿命がなげぇからな。大体死ぬまで生きる。むしろ死んでも生きる奴はいる』
「アンデッドドラゴンね! その発想は無かったわ」
『あァ。で、長生きな奴で万単位生きてる実例も居るし、コアの寿命は知らんがむしろ俺の方が先に死ぬかもなァ? あ、でもそン時はレドラも一緒か。ハッハッハ』
「お父様は不老不死って言ってたけど、1番コアでも600歳くらいだっけ?」

 規模がでかいな。人間は良くて100歳くらいだというに。

『で、聞きたいことってソレかァ?』
「ううん。ダンジョンコアとその他の種族での子供の作り方を教えて欲しいんだけど」
『「ぶふぅ!?」』

 俺とイッテツは合わせてふきだした。

『ばっ、オメェ、そういうのは、その、レドラに聞け!』
「あ、それもそうね。じゃあまた今度フェニつれて遊びに行くわ」
『つーかなんで俺に聞いたァ?! オメェには頼りになる姉ちゃんが居るだろ! 人型コア同士で女同士、そっちの方が詳しいに決まってンだろ!』
「ケーマがハク姉様には絶対聞くなって言うから仕方なくよ」

 だからってイッテツに聞くのか……その突拍子もない行動は誰に似たんだ。俺か? いや、俺はここまでじゃないはずだ。

「ちょ、ちょっとまてロクコ。……お前、その情報を知ってその、もしかして俺と子供を作る気か?」

 俺がそう聞くと、ロクコは顔を赤くしてはっと驚いた後、赤い顔のまま上目遣いに睨んできた。

「逆に聞くけど、他に誰と作れって?」
「そういう問題じゃなくてな、その」
「……べつに今すぐ作ろうってワケじゃないわよ。そういう時期になっていざ分からないとなったら困るでしょ? それじゃ112番(イッテツ)、またね」

 少し怒った様子でぷいっとそっぽを向くロクコ。

『お、おゥ。ケーマ、その、なんだ。達者でな?』
「ああ。……うん、ええと……うん」

 俺はイッテツとの通信を閉じた。
 ……まぁ、今すぐじゃないならいいか? いや、余計な知識はハクさんの逆鱗に触れるかもしれん、止めるべきか。

 あれ、その前に俺とロクコって夫婦だったっけ?


(全く関係ないけど、本好きの下剋上が完結してしまった……これから平日のモチベーションをどうやって保てばいいんだ……)

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