6年前。
ニューヨーク滞在中に早朝、携帯電話が鳴った。
「長谷川さん、すぐに支局に来てください」
アメリカに滞在している日本人に向けての日本語放送。私の役目はそのキャスター。
ただ、日本から流れてくる信じられない放送を流すしかなかった。

その二日後、仕事が入った。
ニューヨーク支局から、日本に向けて「世界がこの震災をどう報じているか」を伝えてほしいとのこと。

私は夜8時前くらいからの中継。スタジオには小倉キャスターや伊藤アナ。
ウォールストリートジャーナルやNYタイムズをボードに張り付け、赤線を引き、テレビカメラに向かって訴えかけた。

「日本にいるすべての人は絶対に言えないことを今から言います。これは海外に駐在している僕の役目だと思う」

「アメリカの新聞を見てほしい。全ての新聞で同じように報じています。『あれほどの災害でわずか3万人ほどの犠牲で住んでいる日本人は本当にすごい』と。今の日本で、悲しみに暮れる日本ではこの言葉は言えないと思いますが、世界は『たった3万人』と報じている。多くの国々が日本をリスペクトしていることを忘れないでください」

「1000年に1度と言われる大災害で、この範囲で犠牲が済んでいることは、世界的にはとても驚きなのです。数年前のスマトラでは16万人が死んだ。日本人が普段から防災訓練などを真面目にしている成果だ、と伝えています」

「ウォールストリートジャーナルも、NYタイムズも、みんな書いている!」

「日本は必ずこの災害から復活するだろうと!」




17年半のアナウンサー生活。
最も多くの賞賛を頂いたリポート。「涙が出た」と数百通に及ぶメッセージを頂いた。瞬間視聴率は22%を超えた。
恐らく、私の局アナ時代に伝えた2500に及ぶニュースの中で、5本の指に入るリポートだったと思う。

あれから6年。

海外のメディアに、私たちの国・今の日本はどう映っているんだろうな…。