早期発見の利点が強調される乳癌検診 「過剰診断」の危険性を指摘する声も
2017年03月10日 23時20分 ニューズウィーク日本版
2017年03月10日 23時20分 ニューズウィーク日本版
2017年03月10日 20時15分 ニューズウィーク日本版
ブローリーも、乳癌の過剰診断率はだいたい15〜25%と推定されていると指摘する。
「過剰診断の事例はとても少ない」と断言するのは、放射線医学会・乳腺画像診断委員会を率いるデブラ・モンティチョーロだ。女性を混乱させるという意味で、こうした論文は「有益ではない」とも彼女は言う。
一方、無用な治療は女性の健康を害するだけだと批判するのは、患者団体「乳癌と闘う全米連合」会長のフラン・ビスコ。放射線は心臓に負担をかけ、細胞を癌化させる恐れもある。ビスコによれば、副会長だったカロリーナ・ハインストローサも初期乳癌の治療に使われた放射線のせいで悪性の肉腫ができ、50歳で命を落としている。
検診のリスクを理解したくても、たいていマンモグラフィーについて耳にするのはいいことばかり。「この数十年、女性は早期発見の利点だけを説かれてきた」とビスコは言う。
検査で何らかの異常が見つかれば生検などの精密検査を受けることになり、そこに過剰診断のリスクが潜む。乳癌検診の在り方に問題はないのか。米厚生省の医療研究品質局は、40〜69歳の女性が乳癌で死亡するリスクはマンモグラフィーで25〜31%ほど減るとしている。
最も強力にマンモグラフィーを推奨する放射線医学会は、40歳以上の女性に毎年1度の検診を勧めている。腫瘍は「小さく、治療が楽なうちに」発見するべきだと、モンティチョーロは力説する。
一方、政府諮問機関の米予防医療対策委員会は09年に、50歳以上の女性には隔年のマンモグラフィーを推奨すると発表した。