早期発見の利点が強調される乳癌検診 「過剰診断」の危険性を指摘する声も
2017年03月10日 23時20分 ニューズウィーク日本版
2017年03月10日 23時20分 ニューズウィーク日本版
2017年03月10日 20時15分 ニューズウィーク日本版
<乳癌検診は早期発見の利点が強調されてきたが、不必要な治療につながるリスクも無視できない>
マンモグラフィー(乳房X線検査)で腫瘍が見つかった女性のうち、およそ3人に1人は必要のない治療を施されている。増殖が遅く、基本的には無害なはずの腫瘍まで、この検査では引っ掛かるからだ――。
デンマークの研究チームが学会誌「内科学会紀要」にそんな論文を発表し、乳癌検診の功罪をめぐる議論が再燃している。
アメリカ癌協会の最高医療責任者で、この論文に対する見解を同誌に載せたオーティス・ブローリーによれば、この研究はマンモグラフィーで命拾いしたと信じている女性の一部が、実際には必要のない手術や放射線治療、化学療法で健康を害している可能性を指摘するものだ。
顕微鏡下では同じに見えてもあらゆる乳癌に同じリスクがあるわけではない。初期の腫瘍でも命取りになるものもあれば、それ以上は増殖せず、むしろ縮んでいくものもある。全ての小さな病変を一律に致死的と考えるのは「人種によって容疑者を絞り込む捜査手法」に似ていると、ブローリーは書く。
「見つかった癌を全て治療することで、救われる命はもちろんある」と、ブローリーは語る。「だが『治す』必要のない女性まで治してもいる」
そうした「過剰診断」の危険性は、専門家の間で昔から取り沙汰されている。だが乳癌検診を受ける一般女性の多くは、そんな議論を知る由もない。
【参考記事】パーキンソン病と腸内細菌とのつながりが明らかに
見直される検診の在り方
検診推進派の米放射線医学会は、マンモグラフィーが不必要な治療につながる可能性を認めつつも、過剰診断はデンマークの研究が指摘するほど多くないとみる。