政府は10日、首相官邸で国家安全保障会議(NSC)を開き、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊の施設部隊の活動を5月末をめどに終了することを決めた。安全保障関連法に基づく「駆けつけ警護」など新任務が付与された隊員約350人が撤収する。国連南スーダン派遣団(UNMISS)司令部への要員4人の派遣は継続する。
安倍晋三首相はNSC終了後、記者団に「南スーダンの国づくりが新たな段階を迎える中、自衛隊が担当しているジュバでの施設整備は一定の区切りをつけることができると判断した」と説明。そのうえで「人道支援を充実するなど南スーダンの平和と発展のためにできる限りの貢献をする」と強調した。
菅義偉官房長官は記者会見で、施設部隊の派遣が今年1月で5年の節目を迎えることを見据え、昨年9月から撤収を検討していたことを明らかにした。政府は昨年11月に安保法に基づく駆けつけ警護などの新任務を付与したが、閣議決定から約4カ月で撤収を決めた。
南スーダンでは首都ジュバで昨年7月に大規模な武力衝突が生じるなど、治安情勢の悪化が懸念されていた。部隊の撤収判断の根拠となったとの見方もあるが、菅氏は「ジュバは比較的落ち着いており、施設部隊の要員は安全を確保している。活動終了の判断は総合的に勘案した結果で、治安悪化を理由とするものではない」と否定した。
日本政府は今月9~10日に柴山昌彦首相補佐官を現地に派遣し、国連と南スーダン政府に施設部隊の撤収方針を伝達。同国のキール大統領からは、自衛隊の活動への高い評価と感謝の意が伝えられた。首相は「隊員たちを送り出した家族に心から感謝する」と語った。
南スーダンでのPKO活動は現在、日本が参加する唯一のPKO。日本政府は2012年1月からインフラ整備を任務とする陸上自衛隊の派遣を始め、これまで現地で活動した施設部隊はのべ3854人に上る。