大阪府豊中市に開校予定だった小学校の設置認可の申請を取り下げた森友学園の籠池泰典理事長が3月10日午後、記者会見した。「しっかりとお話しさせていただきたい」。そう切り出した籠池理事長だが、その口から出てきたのは、疑惑についての丁寧な説明ではなく、メディア批判の言葉だった。
共同通信や朝日新聞、読売新聞、産経新聞の名前を挙げて批判したほか、記者の質問の仕方に注文をつけて、質問に答えなかったり、朝日新聞記者の回答を拒否したりといった場面もあった。
申請取り下げについて、籠池氏は次のように説明した。
まず、土地に埋まっていたゴミの処理問題について、「マスコミ報道により、処理先が見つからなかった」「報道の中で過熱をしてしまって、野党議員が朗々と追及されたことで、工事が捗らなかった」。
さらに「報道・国会論議で、寄付金が集まらなくなった」と述べた。
そして、「この2つが(許認可の)重要な要件だったはずだ」と続けた。
つまり、マスコミ報道によってゴミ処理に問題が生じたことと、寄付金が集まらなくなったことが響いて認可の見込みがなくなったので取り下げた、という説明だ。
だが、実際に指摘されている問題は別のものだ。時事通信によると、大阪府の松井一郎知事は3月9日、「(申請)書類に信ぴょう性がなく、契約書も虚偽。審議会メンバーが(認可で)大丈夫だという意見をまとめるとは考えにくい。メンバーも非常に懸念している」と話した。
籠池氏は会見中、多くの時間をマスコミ批判に費やした。
「私たちも一生懸命対応してきたが、私と、家族の信条のことが中心に放送されることになって、何か私の方を袋だたきにされてるような感じになった」
「子どもさん方が脅威に思う。保護者の方が脅威に思う。そういうことが皆さん方は仕事をされてたんだと思うんだけれども、やはりそういう風な状況になってきたということは、みなさん方、反省していただきたいと思っております」
籠池氏は語気を強めながら、こう語った。
小学校設置を希望している保護者がいることについても「報道してくれない」と恨み節を述べ、次のように続けた。
「社にとって必要なものだけ、報道するのが、報道の自由なんでしょうか。違うんじゃないんでしょうかねえ。プライバシーと報道の自由。プライバシー。この人は昔こんなことしてた、だから悪いことしてんねんともっていきようというのは、人間性に対して失礼なんじゃないでしょうか。基本的人権を守ってないんじゃないんですか」
「一般市民の方が、我々の報道を見られて、色々思っていらっしゃることがあるんじゃないでしょうか。これは、ブーメラン効果になるんだと思います。本当に気をつけていただきたいと思います」
籠池氏は「自分が見て判断をしていかないと。それが学習指導要領でいうところの『考える力』『判断する力』そして『自分で結論を出す力』だ」とも述べていた。
籠池氏はこの日、「私は逃げも隠れもしませんから、いついつに会見をすると言ったら会見するわけですので。日程を決めていただければ会見をしたわけです」と述べていた。
だが、自ら開いた会見で、籠池氏は記者の質問をはぐらかす場面が目立った。
たとえば、自身が大阪府に提出した書類で経歴詐称があったのではないかと、記者に指摘されると、「どうして、資料が流出するのかなあと。民間企業であれば、コンプライアンス違反」などと府の批判を始めた。
記者から「資料が流出したこと、経歴詐称があったことは関係ない」と反論されると、しばらく沈黙。その後、記者に所属を尋ね、朝日新聞だという記者に「朝日はもういい。朝日はうそを書く。朝日はダメ」と言って、回答を拒否した。産経新聞についても「えげつない報道をされた」と批判した。
記者からの質問がまったく途切れない中、籠池氏は「時間だ」と立ち去った。