韓国の憲法裁判所は10日、国会に弾劾(だんがい)訴追されていた朴槿恵(パククネ)大統領(65)について罷免(ひめん)を宣告した。朴氏が支援者のチェ・スンシル被告(60)に機密文書を流出させたことなどを違法行為と認定。「国民の信任を裏切り、憲法守護の観点から容認できない重大な法違反行為と見なければならない」と、裁判官8人の全員一致で決定した。
朴氏の罷免に伴って、次期大統領選は60日以内に行われる。投票日は5月9日が有力視されている。
韓国で大統領が弾劾訴追によって罷免されるのは初めて。1987年の民主化以降、大統領が任期途中で辞任するのも初めて。憲法裁判所による罷免決定は即時、効力が発生する。大統領の権限は次の大統領が決まるまで、引き続き、黄教安(ファンギョアン)首相(59)が代行する。
国会は昨年12月9日、朴大統領に対する弾劾訴追案を可決した。憲法裁では今年1月3日から2月27日まで計17回の弁論が開かれ、チェ被告ら25人に対する証人尋問などが行われた。
国会側は、朴大統領が秘書官を通じて機密文書をチェ被告に流出させ、チェ被告が政策や政府高官人事に介入したと指摘。憲法で定めた国民主権や法治主義に反すると訴えた。文化やスポーツに関する財団の設立・運営や中小企業への支援などについても職権乱用に当たるなどとして、罷免を要求。朴大統領側は国会側の主張を否定し、弾劾訴追の棄却を求めていた。
韓国の調査機関「リアルメーター」が6~8日に実施した次期大統領選に関する世論調査によると、進歩(革新)系で最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)前代表(64)が、支持率36・1%でトップを独走している。保守系には現時点で文氏と競い合えるだけの有力な候補はおらず、候補者調整を本格化させる。
野党系の候補は慰安婦問題で日本側との再交渉を求めている。大統領選の結果によっては、日韓関係にも影響が及ぶ。
一方、ソウル中央地検は、朴氏への捜査に本格的に着手する見通しだ。ソウル中央地検は文書流出などをめぐって朴氏をチェ被告や秘書官らとの「共犯」と位置づけている。韓国では憲法の規定で大統領は在職中に刑事訴追されないが、朴氏は罷免されたことから、検察は近く事情を聴取し、立件するとみられている。(ソウル=東岡徹)
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朝日新聞国際報道部