東日本大震災の復旧・復興の現場で、全国の自治体職員が活躍している。この6年で延べ9万人以上が駆けつけた。

 阪神大震災がボランティアの活動領域を広げたように、東日本大震災は自治体職員の出番を増やした。津波で流された市街地の再建などで、行政の知識と経験が求められたからだ。

 その結果、自治体同士の支援連携が劇的に拡大、深化した。

 関西広域連合のカウンターパート方式が一例だ。大阪府と和歌山県が岩手県を、兵庫、鳥取、徳島県が宮城県を、京都府と滋賀県が福島県を担当した。支援内容の重複を避けつつ、継続的に対応してきている。

 名古屋市による岩手県陸前高田市への「行政丸ごと支援」など、さまざまな自治体間の協力関係も生まれている。政府が派遣費用などを実質的に負担している下支えも大きい。

 ただ、派遣元の自治体は応援態勢を縮小しつつある。住宅や商店が再建されて復興の姿が見え始めているのに加えて、熊本地震での応援要請を受けている事情もある。

 しかし、東北の復興事業はなお進行中だ。震災6年の朝日新聞の被災自治体・首長アンケートでは、「復旧復興が遅れている理由」のトップが「職員の人手不足」だった。さらに減らされれば事態は深刻だ。

 この6年間で、自治体職員が即戦力として復興に貢献できることは証明された。とくに都市計画や建築、下水道などの技術職は、将来の大災害の復興現場でも欠かせない。

 だから提案する。

 全国1700余のすべての自治体に、災害時に援助しあう相互支援協定を網の目のように張り巡らそう。すでに一部の自治体同士で締結されているが、それを日本中に広げるのだ。

 まずは、都道府県や政令指定市、人口20万以上の中核市から始めてはどうか。

 なるべく同規模の自治体をパートナーに選ぶ。同時に被災しないよう、遠隔地の二つ以上と提携する。送り込む人材、物資の計画を準備しあう。定期的な職員の相互訪問も必要だろう。顔見知りで土地勘があった方が、対応しやすいはずだ。

 全国知事会や全国市長会などが、マッチングを主導できるのではないか。むろん政府も資金面を含めて協力すべきだ。

 自治体が互いに連携を深め、支援態勢を準備しあう仕組みを、全国規模でつくる。

 そんな「人間による国土強靱(きょうじん)化」こそが、東日本大震災から学ぶべき対策だと考える。