【取材日記】THAAD対応、息をひそめている企業と沈黙している韓国政府

【取材日記】THAAD対応、息をひそめている企業と沈黙している韓国政府

2017年03月09日15時42分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
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  「ブランド名は絶対に公開されてはいけません」

  8日、ある企業の関係者は丁寧に要請した。高高度防衛ミサイル(THAAD)体系の配備をめぐって中国が全方向的な報復に出たことに対する対策を尋ねた時だ。彼は「『韓国企業がこれぐらいの被害を受けました』と明かす瞬間、もっと大きな被害をこうむる可能性がある」とし、「中国現地のネットユーザーとメディアが韓国メディアをモニタリングしていると聞いた」と話した。

  ただ、この企業だけのことではないだろう。集中砲火を受けているロッテの場合、思うことがあっても口に出して言えない。THAAD敷地の提供という元凶(?)で中国人に目をつけられているが「やられても、やられていないように」ポーカーフェイスを維持しているだけだ。ロッテはこの日まで中国内ロッテマート99店舗の中で55店が営業停止された。

  沈黙を貫こうとする韓国内とは異なり、現地の事情は緊迫した様子だ。前日までは「何もなかった」という中国威海市のある企業の駐在員は「ロッテ百貨店の前で数百人が集まって不買デモを繰り広げた」とし「中国政府がデモを直接主導したわけではないが、事実上放置することで露骨に圧迫しているようだ」と伝えた。

  今の雰囲気から見てTHAAD報復は簡単に収まりそうでない。THAAD配備の段階が進まれるほど、報復もそれに従って水位を高めるかもしれない。韓国観光産業と中国現地に進出した韓国企業の被害がそれだけに大きくなっていくという意味だ。損失が数兆ウォンに達するという展望まで出ており、企業は薄氷の上を歩くかのような気分で事態を注視している。

  だが、このような切迫したことを韓国政府はよく分かっていないようだ。この日、柳一鎬(ユ・イルホ)副首相兼企画財政部長官は経済関係長官会議で「最近、中国の経済措置に対してTHAADに関連した報復とは言い切れない」と明らかにした。「一連の状況を注視しながら韓国企業と国民の被害を最小化する。中国と経済・外交的努力を強化する」と付け加えたが、企業家には先の言葉がもっと記憶に残った。過度な危機意識を助長しないための「善意のうそ」と信じたいが、政府に期待をかけていた企業は虚しいほかない。柳副首相の言葉を聞いたある企業家は「明快に話せない事情があるなら、いっそそのような発言はせず『外交的努力をする』と言った方がよかったのではないか」とした。

  この機会に中国依存的な事業構造を変えて市場の多角化に乗り出すべきだという根本的な解決策は至当な話だ。だが、それが一朝にしてなるものだろうか。今、この差し迫った危機の中で企業が頼れるところはそれでも政府しかない。外交的努力を注ぐと同時に「政府が企業のために努力をしている」という確信と信頼を与えてほしいと、企業は願っている。

  チャン・ジュヨン/産業部記者
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