News Up 消せるのか? 恥ずかしい「デジタル・タトゥー」

News Up 消せるのか? 恥ずかしい「デジタル・タトゥー」
動画サイトやソーシャルメディアに投稿された、悪ふざけの動画や恥ずかしい静止画などに関するトラブルが、最近も話題になっています。
いったんネットに投稿された情報は、元を消してもコピーが何回も投稿されるなどしてなかなか消すことができず、これを「入れ墨」に例えて「デジタル・タトゥー」とも呼ばれています。
「若気のいたり」ではすまない深刻な状況に、解決策はあるのでしょうか。
ことし1月、愛知県の警察署に18歳の少年がバイクで乗りつけ、持っていた消火器を噴射し、その場で逮捕されました。動画サイトにはこのときの様子を仲間が撮影したとみられる動画が投稿され、ネットで「炎上」騒ぎになりました。
北九州市では、中学生の男子生徒がモノレールのホームからレールの上に飛び降りて、歩いたり寝そべったりする様子を仲間が撮影してツイッターに投稿し、男子生徒は先月、威力業務妨害の疑いで書類送検されました。

後を絶たない動画投稿トラブル

ことし1月、愛知県の警察署に18歳の少年がバイクで乗りつけ、持っていた消火器を噴射し、その場で逮捕されました。動画サイトにはこのときの様子を仲間が撮影したとみられる動画が投稿され、ネットで「炎上」騒ぎになりました。
北九州市では、中学生の男子生徒がモノレールのホームからレールの上に飛び降りて、歩いたり寝そべったりする様子を仲間が撮影してツイッターに投稿し、男子生徒は先月、威力業務妨害の疑いで書類送検されました。
「ネット民の関心を買おうとして」「悪ふざけで」などの理由で、過激な行動を動画サイトやソーシャルメディアに投稿する行為は今も後を絶たたないどころか、エスカレートする傾向が見られます。
また、そうした犯罪行為ではないにしても、一時期「バカッター」などとして話題になった恥ずかしい動画や画像、何らかのミスで個人の情報を含む動画などが投稿されてしまったものなども少なくありません。
いったん投稿された動画や静止画は、投稿者が削除してもすぐにコピーが転載され、消すことがなかなか難しいのが現状で、これを「入れ墨」に例えて「デジタル・タトゥー」とも呼ばれています。

拡散した動画や画像を消すには?

インターネット上に恥ずかしい動画や画像などが拡散してしまった場合、どのように対処すればよいのか。ネットの炎上問題に詳しい中澤佑一弁護士に取材しました。
手段のその1は、正面から、ブログや掲示板の管理者や、ソーシャルメディアの運営会社に削除を要請するものです。ただし、ブログなどによっては削除を求めたことがブログを書いた人などに通知される可能性がないか注意が必要で、さらに炎上してしまうおそれもあるため、ネットでの話題が沈静化するなど、ほとぼりが冷めてから手続きを始めたほうがよいということです。
削除に応じるかどうかは、管理者や投稿された内容しだいで、個人のプライバシーに触れる内容を含む動画や顔写真などは削除されやすい一方で、犯罪行為のような社会的に非難される行動については、削除が認められづらいということです。

検索サイトへの対策は

手段のその2は、インターネットの検索サービス事業者に、検索結果からの削除を求めるというものです。
いったん拡散した動画などを消すことは困難ですが、検索で見つからなければ、多くの人に見られるのを防ぐことができます。
こうした事案を数多く扱ってきた神田知宏弁護士によりますと、例えば本人が知らずに、あるいは操作ミスなどで投稿された恥ずかしい動画がきっかけで、名前や顔写真まで暴露されてしまったケースでは、裁判所に申し立てれば削除が認められる可能性があるということです。
一方で、自分の意思で恥ずかしい動画や画像などを投稿した結果、炎上したようなケースは、削除が認められにくいとみています。

最高裁の判断とは

その根拠は、先月示された、最高裁判所の判断です。最高裁は、検索サービスの事業者の「表現の自由」よりも、当事者の「プライバシーの保護」が明らかに優先される場合には削除できるという、初めての基準を示しました。
つまり、自分の意思で動画などを投稿した場合は、プライバシーの保護の重要性は低く、社会的に非難される行為を公表する意味の方が重要性が高いため、削除が認められにくいというのです。
一方、自分の意思ではなかった場合は、プライバシーの保護が前提となり、それに比べて情報を社会に公表する必要性が低ければ、削除しても「表現の自由」を侵害するおそれが少ないため認められやすいということです。
こうしたことを考えると、みずから悪ふざけで投稿した動画や画像の削除は認められづらく、しかもいったんネットに拡散したものを削除するには、膨大な手間や費用がかかります。
また、ある程度は削除できても、すべて消せないことも考えられます。
生涯にわたって残り続けるかもしれないだけでなく、被害が広がっていくおそれもある、デジタル・タトゥー。
中澤弁護士と神田弁護士は、動画や画像を投稿する時は、どのような影響が出る可能性があるかをよく考えたうえで投稿するよう、注意を呼びかけています。

※デジタル・タトゥーについてのご意見や、体験などをお持ちの方は、NHKの情報窓口「ニュースポスト」までお寄せください。