籠池氏まくしたて 疑問一切明確にせず
「皆さんお願いしますよ本当に、私に、この学校を開設させてほしい」。学校法人「森友学園」が開校を予定している「瑞穂の国記念小学院」(大阪府豊中市)に対する大阪府私学課の現地視察を前に、学園の籠池泰典理事長が9日、建設現場入り口付近で報道各社の取材に応じた。府や国に説明した工事費が食い違う点など、問題が続出している学園。ただ、籠池氏は自説を強調するばかりで、一連の疑問に明確に答えなかった。【千脇康平、遠藤浩二】
建設中の小学校予定地。開校予定日が3週間後に迫る中、今も土砂を運び出すダンプカーがひっきりなしに出入りし、土ぼこりが舞っている。午後1時50分ごろ、私学課の職員5人が視察に到着。約束の午後2時より15分ほど遅れて籠池氏が姿を現した。
籠池氏は報道陣に囲まれながら、問いかけを無視して敷地内に入ったが、突然振り返って大声で話し始めた。「認可妥当(適当)がなければ建物も建てなかったんです」。府の私立学校審議会の設置認可審査に言及する籠池氏。報道陣が質問しようとしてもそれを遮り、自説を語り続けた。
国有地を格安で取得して敷地を確保し、一時は安倍晋三首相の昭恵夫人が「名誉校長」に名を連ねた新小学校計画。国会でも論戦になっているが、籠池氏は「野党の議員さんが一生懸命なのは分かるけど、他に言うこと、他の重要な国論の話をすることはないのか」とまくしたてた。
学園を巡る問題が次々と明らかになる中、籠池氏本人は一部のメディアを除き、取材に応じてこなかった。報道陣は繰り返し、食い違う工事費の問題を質問しようとしたが、逆に籠池氏は「このような騒動、もうこれは既に4年前から仕組まれていた」と言い出し、保護者とのトラブルや国有地売却を巡る訴訟について話した。「今から大阪府のお役人の話を聞いてきます。また戻ってきますから」と言い残し、敷地に入っていった。
午後2時からの視察は2時間の予定だったが、午後3時ごろ、私学課職員が厳しい表情で退出してきた。「視察は打ち切った」。しばらくして籠池氏が再び姿を見せた。今度は工事現場の柵越しに話し始める。
「府の方は原本を持って来るように言うが、言われていなかった。中も見ずそそくさ帰った。なんなんでしょうね」。府への不信感をぶちまけた。
籠池氏は勢いよく自説を述べる一方で、学園を巡る疑惑に質問が及ぶと、途端に明瞭さを欠いた。
小学校建設費用を巡り、学園が金額が異なる3種類の契約書を作成し、国や府などに示していたことが判明している。費用はいくらなのか。籠池氏は「7億5000万円」と言い切ったが、金額が異なる理由については「それについてはですね、ちょっとまたね……」と言いよどんだ。認可を得るために書類を作り分けた疑惑があるが、「それはない。全くない」と否定した。
学園は他にも私学審で不可解な説明をしている。児童確保を不安視する委員が多いことを気にしたのか、新しい小学校が愛知県の進学校「海陽中等教育学校」に推薦枠を設けることで合意した、と説明した。ところが中等教育学校側は「事実無根」と否定した。
籠池氏は「我々のコンサルタントが書きミスをしたというしか言いようがない」と釈明。推薦枠確保に努力していると言いたいのか「現在進行形。先の長い話ですから」と話した。ただ、ミスについては「本当に申し訳ない」と陳謝した。
私学審に提出された書類では、籠池氏自身の経歴が事実と異なることや、指導役とされた教員がその後に辞退していたことも明らかに。報道陣は説明を求めたが、籠池氏は「必ず答えます」。そうつぶやいて一方的に切り上げ、軽乗用車で立ち去った。
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「正常な検査ができない。視察は中断しました」。大阪府私学課の担当者は午後6時から記者会見した。
私学課によると、工事費の金額が異なる3種類の契約書があることについて、仮設事務所で籠池氏に説明を求めた。
籠池氏の妻が突然、携帯電話を取りだして私学課職員を撮影し始めた。「やめてください」。制止する職員を妻はなじり、撮影し続けた。職員は検査は困難と判断。午後4時までの予定を1時間ほど切り上げ、午後3時ごろに中断した。【鳥井真平、村上正、米山淳】