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ストーリー性のある写真ってなんだろう

こちらから言及していただいていたようなのでちょっとストーリー性について考えてみる。
www.kikikomi.info


一口に言ってしまえば「ストーリー性」っていうのは時間を感じられるとか、何かを想起させられるっていうことなんだと思うんですよね。つまりストーリー(以下ループ

じゃぁどうやって時間を感じさせるか、映っているもの以上のことを見る側に想像させるか、なんですが。
ストーリー性は正直テクニックではないと思います。かと言って勘でできるものかというと、それも違う。僕もあんまり得意じゃないんですが、少なくとも頭を働かせていなければできないものであるのは確かです。

ま、難しい話はともかくとっとと作例にいきましょう。

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左はただきれいなだけの桜です。右はどこかノスタルジーを感じる夏の景色。ストーリー性を感じるのはもちろん右です。
どちらもただ景色を撮っただけ、むしろ左のほうが撮影は大変でしたが、ストーリー性という点でいえば圧倒的に右のほうがいい写真です。なぜか?
この写真の中には対比があるからですね。つまり暗いところと明るく色鮮やかなところが一つの写真の中にある。暗いところで明るいものを見るとひとはほっとします。安堵感になにがしかの記憶が刺激され、「右の方はストーリー性がある」と思うのでしょう。
こうやってトンネルの中から明るい方を撮影するテクニックはトンネル構図なんてよばれ、ストーリー性のある写真を撮るテクニックの一つに数えられています。

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ホイで次。左はなんてことないストリートスナップです。右もストリートスナップですが、和気藹々とした雰囲気が伝わってくるようです。
違いは? 右側の楽器隊は視線を合わせているし、表情も体の動きもあります。なんとなくその場の雰囲気が感じられるのはこういった動きがあるからです。いまひとつストーリー性に結びつかないのは、この瞬間の雰囲気以上のものを想像する余地がないからでしょうか。

表情の対比からストーリーは生まれる


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急に雨が降ってきた街角です。傘を持つ女性と、傘に手を添える男性。女性はちょっと身を引いていて驚いているように見えます。傘をとられそうだったのか、男が急に入ってきたのでびっくりしているのかわかりませんが、二人がいること、二人の表情の対比からいろいろと想像が膨らみますね。

見つめ合えばストーリーは生まれる

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おしゃべりできないだけじゃないんです(古
見つめ合う人々の間には必ず関係性があります。たまたまあっただけなのか、古い知り合いなのか、今恋が芽生えているのか、気さくな会話を交わしているところなのか、いろいろとありますが関係性に想像の余地があるということですね

みんなと違う方向を見ている人にはストーリーがある

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カーブを曲がってくるグループを見る一行の中、左寄りのところにいる男性だけが自転車の向かう方向を見ています。レースに出場している人と知り合いだったのか、何か見るべきポイントが有ったのか、単に僕が変なカメラを持っていたので気になったのかはわかりませんが、彼だけが違うところを見ている。なぜなのか? そこに想像の余地があります。これがストーリーです。

レンズを見つめる人にはストーリーがある

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貧しい身なりの、不許可で雑誌を売っている男性です。英語は通じないようでした。カメラに向かって渋い顔をしています。
レンズと彼の間に関係性があります。というか僕と彼の間に関係性が生まれてしまった瞬間です。
モデルがレンズを見つめるのはふつうにある構図ですが、ただなんとなくにっこりと笑っているだけではストーリーはありません。でもみんながにっこりと笑ってポーズをとるからこそ、そうでない写真には、被写体と撮影者の関係が現れるのです。関係性はストーリーです。

あちら側とこちら側の対比にストーリーがある

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永代橋から望む豊洲方面です。豊洲方面のタワーマンション群と、その手前の下町側をあるく犬を連れた老人。新しい街の象徴、巨大な建物、そして小さな犬と老人の対比は場所を知らないとストーリーが浮かびにくい部分もありますが、知れば想像できる余地がたくさんあります。

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単純に大きさの対比であってもストーリーの生まれる余地があります。釣り人が遠くに霞む巨大な橋を見るとき、なにを思っているのか? なんにも考えていないかもしれませんが、もしかすると何か考えているかもしれません。そこに何かしらのストーリーを見出すことができればよいのです。

「ありえない」「なぜそんなことに」にはストーリーがある

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狛犬に生えた青々とした苔。苔が生えるまでに一体どれだけの時間がかかったのか、時間の経過を見る側に思い出させるとストーリーが生まれやすくなります。

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アユ釣り解禁後の多摩川のとある水門。どうやってそこまでいったんだ、なにしてんだ(たぶん鮎釣り)、よくそんなところに行くなぁという小さな子どもの後ろ姿から彼らのその日について想像が膨らみます。そうですね、これがストーリーです。

光の指す方にストーリーがある

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宗教施設に差し込む光というとそれだけでなんとなく厳かなイメージがありますが、その光の先に頭も白くなった老夫婦がいるとなるとさらに想像がふくらみます。ただ疲れてすわっているだけかもしれないけれども、もしかすると敬虔なクリスチャンで祈りを捧げているのかもしれないし、説話に耳を傾けているのかもしれない。


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また、光は時間経過を感じさせる効果もあります。影が長く伸びるのは光が指しているから。光の指す方角に影はできる。影がながければ冬の夕暮れ、あるいは朝。影が短く色が濃ければうだるようにあつい夏。光と影だけで季節と時間がイメージできます。冬の夕暮れ時、みんなかえるところなのか、それともこれからどこかへいくのか、朝から歩き回って疲れたなぁとか空気が冷たいなぁとか、そんなことを考えているかもしれない。頭のなかに思い浮かべるイメージはストーリーです。

被写体と同じ気持ちになる

巨人の足元

被写体の背中を捉えることで、被写体飲みているものと同じものを見ているような気持ちになることがあります。被写体の前には何があるかでストーリーがうまれてくることがあります。また被写体の仕草で想像を巡らせることもできます。困っていたり怒っていたり手を振り上げていたり上を見上げていたり、指を指していたり、仕草には感情があります。仕草には関係性があらわれます。仕草には時間が現れます。ストーリーがあります。

何かしている人にはストーリーがある

Akihabara
たとえそれが何気ない街の一角であったとしても、何かをしている人は何か考えて何かをしているのですから、当然そこにはストーリーがあります。はっきりとなにをしようとしているのかわからない時こそ、想像の余地はあります。想像の余地は、そう、ストーリー性です。



というわけでストーリー性のある写真を撮るには?でした。
要は対比を見つけ、妄想を膨らませようということです。でもこれを見つけるのがほんとうに大変。テクニックがあればきれいな写真はとれますが、ストーリー性を見つけるには頭が必要です。いっぱい考えて、いっぱい心を動かされ、そして偶然に笑いましょう。