【動画】マイクロソフトの「HoloLens」=西田宗千佳、竹谷俊之撮影
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 今回は少し未来の話をします。筆者は、遠くない将来、私たちが情報と接する際の常識が、大きく変わると予想しています。とはいえ、それは数カ月後や1年後のことではなく、最低でも数年は先のお話。世界中の企業が、その「数年先」に向けて、いま技術開発をしています。

 今回紹介する「Microsoft HoloLens(マイクロソフト・ホロレンズ)」(写真1)は、その数年先の未来を今日見せてくれる、いわば「今手に入る未来の道具」です。ホロレンズが見せる未来とは、一般に「Augmented Reality(AR、拡張現実感)」と呼ばれるものです。マイクロソフトは若干概念を広げた上で「Mixed Reality(MR、複合現実感)」と呼んでいます。

 MRとはどんな可能性を秘めたものなのか。そして、我々の生活をどう変えてしまうのか。ホロレンズを使ってわかった「未来予測」をお伝えしましょう。

 今回は、ホロレンズを使った様子を動画にしています。記事を読んだ後、動画を見ていただくことをおすすめします。(ライター・西田宗千佳)

■マルチディスプレーよ、さようなら?

 ホロレンズは1月から日本でも販売されていますが、あくまでも「開発者向け機材」という扱いです。一般向けの機器として売るには、機能や品質の面でまだ課題が多く、価格も高いからです。今は日本語入力もできないのに、33万8000円(税別)もします。筆者は自分で購入しましたが、多くの読者の皆さんには、仮に記事を読んで魅力を感じたとしても、購入はおすすめしません。今回記事にするのは、ホロレンズが手元になくても、それが目指す世界をきちんとご紹介したい、と考えたためです。

 ホロレンズに関してはマイクロソフトもデモ動画などを公開していますが、筆者はそれらがホロレンズの本質を表していないと感じます。使えば使うほど、その考えは強くなる一方です。

 ホロレンズと、それがもたらすMRが生み出す未来とは、「情報がどこにでも置ける」「現実と情報が混在する」世界です。

 すぐにはピンとこないと思いますので、実際に試してみましょう。

 一部の人は、パソコンでより多くの情報を表示するために、ディスプレーを複数、机の上に置いています。作業卓を複数用意し、それぞれに書類を置くようなイメージでしょうか。昔は株式ディーラーがやっているイメージでしたが、今のパソコンでは簡単にできるため、ディスプレーを2台つないでいる人もいるでしょう。筆者の友人には「六つつないでいる」という強者(つわもの)もいます。これを「マルチディスプレー」と言います。

 マルチディスプレーの欠点は、情報量を増やすのにコストがかかることです。たくさんのディスプレーを買わねばなりませんし、それだけ設置面積も電気代も必要。そして、縦方向にディスプレーを置くのは意外と難しいので、自分より「上」の空間はあまり使えません。

 ですが、ホロレンズならどうでしょう?

 ホロレンズでは、一般的なアプリを「空中に」平面のウィンドーとして配置できます。例えば、資料やウェブ、SNSの画面など、配置しておきたいものを貼り付けていけば、マルチディスプレーと同じことが簡単に実現できます。しかも、空中にも置けるわけですから、自分の目線より上の空間も活用可能です。

 「何を言っているのかわからない」という方も多いでしょう。写真2をご覧ください。これは、ある日の筆者の作業風景です。机の上のノートパソコンやタブレットは本物ですが、それ以外は全て仮想のもの。横1メートル、縦2メートルくらいの空間を有効に活用できます。これをマルチディスプレーでやろうとすると、液晶ディスプレーを何枚も置かなくてはなりません。

 しかもホロレンズの場合、重量は579グラムで、カバンに入る大きさです。これをかぶれば、どこにいてもマルチディスプレーと同じ環境が手に入ります。

 これはまだ序の口です。

 今は、各ウィンドーを自分の周囲に配置しました。でも、実際にはそうでなくてもいいのです。

 スケジュールを把握するために、壁にカレンダーを貼っている人は多いのではないでしょうか。また、自室や廊下、トイレなどに、ポスターや写真を置いている人もいるでしょう。それらは、みなホロレンズで代替できます。例えばリビングの壁にカレンダーアプリを貼っておけば、パソコンやスマートフォンのカレンダーアプリがそうであるように、予定の情報は自動的に更新されます。廊下の壁に写真アプリを貼っておくと、自分が持っている写真を定期的に切り替えながら表示してくれます。

 しかも重要なのは、それらを「貼った」場所をホロレンズが覚えているということです。部屋の外の廊下に写真を貼ったとしましょう。部屋の中にいる時は、廊下は部屋の壁に隠れているので見えません。しかし廊下に出ると、貼ってある写真アプリが見えてきます。自宅やオフィスの中に本物のポスターやカレンダー、置物を置くのと同じように、アプリを配置できるようになるわけです。マルチディスプレーどころではなく、家全体がディスプレー代わりになってしまうのです。

■穴を通って「別の世界」に行くことも可能

 空間全体をディスプレーにできるので、こんなこともできます。ここからの二つの事例については、ぜひ動画をご覧ください。

 写真3は、Valorem C…

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