高齢者のQOL(生活の質)を向上させる大きなカギ
口腔ケアには、虫歯や歯周病、口臭の予防だけではなく、生活にリズムを作り、食べることや話すことをサポートして、QOL(生活の質)を向上させる目的もあります。自分の口で「おいしく食べる」ことは、大きな楽しみであり生きる意欲につながります。
おいしく食べられるようになれば気力も回復します。寝たきりでほとんど反応が見られない高齢者の場合でも、口の中がきれいになればピンク色の粘膜がよみがえり、表情も明るく見えます。さらに、誤えん性肺炎のリスクも低くなります。
このように、口腔ケアは口の中の問題だけでなく、全身の健康、心理面への影響も大きく、高齢者のQOL(生活の質)を向上させる大きなカギを握っています。
【理事長:渡辺徹のワンポイントアドバイス!!】
- 高齢者の直接死亡原因の8~9割は肺炎です。
- 誤えん性肺炎を予防する効果がある食事の体位、口腔清掃、発声訓練などのリハビリを家族の人、介護者は知っておく必要があります。
- 恵生会では誤えん性肺炎予防の啓蒙活動として、出張セミナーを無料で行っています。
恵生会としての取り組み
誤えん性肺炎を予防するには、「効果がある(誤えんを起こしにくい)食事の体位」や「口腔清掃、発声訓練などのリハビリ」などについて、ご家族や介護者が知っておくことも大切です。恵生会では、誤えん性肺炎予防の啓蒙活動として、無料の出張セミナーを行っています。
高齢者の直接死亡原因の8~9割は肺炎です
日本人に多い死因として、がん、心筋梗塞・虚血性心疾患、脳血管疾患に次いで肺炎・気管支炎があり、その9割を65歳以上の高齢者が占めています。つまり肺炎を予防することは、高齢者の健康管理にとって、とても重要な問題なのです。
誤えん性肺炎の現状
高齢者の肺炎は、口の中の細菌が唾液などに混じって肺へ入り込むことで発症する、「誤えん性肺炎」の割合が高いとされ、中でも、気づかないうちに唾液や胃液などが肺に入る「不顕性誤えん」によるものが多いと言われています。つまり、誤えん性肺炎を起こした人の多くは、寝ている間など、本人も気づかない間に誤えんを起こしているのです。
口腔ケアで誤えん性肺炎を予防する
ある調査では、特別養護老人ホームで専門的口腔ケアをする人としない人に対して2年間の追跡調査を行った結果、口腔ケアした人はしなかった人に比べて、肺炎にかかった人数、死亡者数が明らかに低いと報告されています。しかも期間が長くなるほど、発症率の差は明確になりました。
口腔ケアの具体例
- 口腔清浄/ブラッシング、粘膜の食物残さの除去、歯垢や歯石除去など
- 義歯の着脱と手入れ
- 口臭の除去
- 口腔乾燥の予防
- 口腔の痛みの軽減
- 口腔出血の防止
口腔リハビリの具体例
- そしゃく・摂食・えん下のリハビリ
- 歯肉・頬部のマッサージ
- そしゃく筋、口腔周囲筋、舌の運動
- リハビリテーションとしての言語訓練
- 口腔内の観察 など
嚥下障害チェックリスト
- 口の端から食べ物がこぼれる
- 口の端からよだれが出る
- 飲み込みが悪くなった
- むせる、咳き込む
- 食べ物がのどにつまった感じがする
- 息が鼻からもれる
- 飲み込んだときに声がかすれる
- 食事の時間が長くなる
気になる方は訪問診療(応診)部までお問い合せください。