南三陸さんさん商店街、初日1万5000人…東日本大震災から6年
東日本大震災から6年。復興を目指して前進している被災地の現在を「進む」と題して今日から3回にわたり連載します。第1回目は宮城県南三陸町に今月3日完成し、大盛況となっている「南三陸志津川さんさん商店街」。
東日本大震災の被災地、宮城県南三陸町で今月3日にスタートを切った「南三陸志津川さんさん商店街」が、連日大にぎわいだ。震災後、年間30万人が来場した仮設商店街「南三陸さんさん商店街」を常設商店街として新設。仮設商店街23店に5店が加わり28店に。飲食店のみならず、コンビニ、土産店、理髪店、整骨院なども立ち並ぶ。
初日に訪問した約1万5000人のほとんどが町外在住者だった。地元で鮮魚加工の「マルセン食品」を営みながらまちづくり会社を運営する三浦洋昭社長(58)は「予想以上に来ていただいてびっくりしています」と振り返った。三浦さんは会社の工場、社屋、自宅など沿岸に所有していた7棟すべてが全壊。介護施設で生活していた祖母を失う悲しみも味わった。どん底からの復興が、ついに形となり、感慨深げだ。
死者620人、行方不明者212人の犠牲者が出た南三陸町。津波が迫る中で防災対策庁舎から防災無線で避難を呼び掛けた町の危機管理課、遠藤未希さん(享年24)も犠牲者の一人だ。約7000戸の建物が損壊した沿岸部は壊滅状態。「南三陸さんさん商店街」は、地元の事業者32店が復興を願って集結し、震災11か月後の2012年2月25日にオープン。週末には商店街中央フードコート特設ステージで様々な催しを開催した。
新たな商店街は新国立競技場を手がけた建築家の隈研吾氏が設計。地元産のスギを使った木造平屋6棟からなる。仮設商店街の南東約600メートルの約2万平方メートルの高台に建てられた。商店街からは震災遺構としての整備が進む町の防災対策庁舎が見える。来場者に最も人気なのは、やはり海鮮料理の店だ。まぐろ丼などを売り物とする「山内鮮魚店」の前には長蛇の列ができていた。
年間80万人の来客を見込むが、集客に見合う周辺整備は遅れている。現在1車線の国道45号線の拡張工事が終わるのは来年。北側に300台収容できる駐車場の完成まで、1年半かかる。三浦さんは「遠方から来ていただいた方をがっかりさせないよう、一日も早く環境を整えたい」と話す。
仮設の時には課されなかった固定資産税も今後は課税され、家賃は4倍に跳ね上がる。仮設では出店していた弁当店など4店は、常設となるのを機に廃業の道を選んだという。「これからは仮設の時のような半端な思いではできない。参加28店舗は運命共同体です」と三浦さん。周辺ではまだ重機による造成が進む町で、復興へのシンボルを目指していく。(甲斐 毅彦)