憲法裁判所は何を審理しているのか。韓国の憲法65条1項はこう定めている。
「大統領が、その職務執行に際して、憲法または法律に違反した時は、国会は弾劾の訴追を議決することができる」
この規定に基づいて弾劾審理が始まった。「弾劾」か「棄却」かを決めるポイントは、憲法上は、「職務関連性」「憲法または法律の違反」の2点だ。だが、これでは、大統領の弾劾が簡単に決まりかねない。
ポイントは「違反の重大性」
憲法裁判所は、過去に、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領(当時)の弾劾審理をして、これを棄却した際、「違反の重大性」という3つ目の基準を示した。今回も、この3点を基準にして判断することになる。
憲法裁判所はこれまでの審理で、5つの争点もまとめている。
①大統領の長年の知人だった崔順実(チェ・スンシル)氏による国政壟断(ろうだん)が国民主権と法治主義に対する違反だったかどうか。
②大統領の権限乱用があったのか。
③言論の自由への侵害があったのか。
④生命権保護義務の違反があったのか。
⑤賄賂など刑法違反があったのか。
朴槿恵大統領と崔順実氏がかかわったとされる問題は多岐に及んでいる。国政や人事への介入、財閥に対して財団への寄付をさせたこと、公文書が流出したこと・・・。
さらに新聞社の人事への介入、セウォル号事故が起きた日に大統領の行動が不明だとされること、財閥への資金拠出の強要なども争点だ。
①~⑤の争点を3つの基準に当てて判断するということだ。
さて、ではどういう判断になるのか。ポイントは何と言っても「違反の重大性」だ。曖昧と言えば、これほど曖昧な基準もない。
みんな「弾劾」と言うが、理由を聞くと?
韓国で法律の専門家に「弾劾なのか、棄却なのか?」と聞くと、ほとんどが「弾劾ではないか」と答える。
だが、「どういう事項が"重大な違反"なのか」と聞いても、明解な答えが返ってこない。
おそらく、数多くの疑惑の中で、一部の公文書が崔順実氏に流出していたことは立証されているはずだ。だが、「国会機密」で「重大性のある文書」が含まれているのかは分からない。