株式会社ベネッセコーポレーションの『進研ゼミ中学講座』は、東京大学 薬学部の池谷裕二教授が中学1年生を対象に行った「勉強時間による学習の定着・集中力に関する実証実験」において、実施協力を行った。
今回の実験結果から、「長時間学習”よりも短時間で集中して行う“積み上げ型学習”の方が、学習の定着・集中力に対して効果がある」ことが判明した。
実験では、中学1年生29名を、事前テスト(75問)の結果に基づいて学力が均等になるように3グループに分けている。(①「60分学習」グループ(10名、60分×1セット) / ②「45分学習」グループ(10名、45分×1セット) / ③「15分×3 (計45分)学習」グループ(9名、15分×3セット、7.5分休憩×2回))
実験の内容としては、3グループそれぞれに、中学1年生の範囲に加えて、中学2年生・3年生の範囲である未修英単語を覚えてもらうというもの。当日・翌日・1週間後の3回に分けて事後テスト(各75問)を実施して、学習の定着度合いを調べるとともに、実験中は教室に設置した定点カメラ・目線カメラと、脳波計(2名)で集中力の推移を計測した。
この記事の目次
実験結果の要約
「15分×3 (計45分)学習」グループの上昇スコアが「60分学習」グループの117.2%に
- 実験後に実施した事後テストの点数を比較
- 1週間後の事後テストにおいて、「60分学習」グループの上昇スコアが16.00点、「15分×3 (計45分)学習」グループの上昇スコアが18.75点→「15分×3 (計45分)学習」の上昇スコアは「60分学習」の117.2%に。
- 「15分×3 (計45分)学習」グループの方が、学習が定着している結果に
- 休憩リフレッシュを小刻みに入れる短時間積み上げ型学習が定着に有効な可能性がある
こまめな休憩は集中力に関係する「ガンマ波パワー」の回復を促し、集中力維持に貢献すると科学的に判明
- 定点カメラの映像分析結果では目立った差異は観測されなかった。
- 集中力に関与している前頭葉のガンマ波が40分以降に急激に低下→集中力が40分程度しか持続しない可能性を示唆
- 「15分×3 (計45分)学習」グループは休憩を挟むことでガンマ波のパワーが回復。学習時間を通して集中力は一定のレベルを維持
- 短い時間の学習のあとに休憩・リフレッシュを挟むことで集中力を維持している時間を増やし、少ない学習時間でも同等以上の点数を出すことが出来たと考えられる
この結果を受けて、東京大学 薬学部の池谷教授は、
「休憩時間を挟んだ「15分×3 (計45分)学習」グループの方が長期的な記憶固定には有効である可能性がある。
また、 「15分×3 (計45分)学習」グループは、「60分学習」グループよりも合計学習時間が短いにもかかわらず、効果が得られているのは興味深い。
休憩を挟むことは集中力の維持に寄与し、より少ない学習時間にも関わらず長期的に見て高い学習効果を発揮する可能性が示唆される。」「ただし、今回の実験は小規模の調査のため、統計学的な有意差を得るためには今後更なる大規模な実験を行う必要がある。」
と考察している。
実験概要
■テーマ:『勉強時間と学習の定着・集中力に関する実証実験』
■実施日時:
[事前テスト・学習] 2017年2月2日(木)[事後テスト] 2017年2月2日(木) / 2月3日(金) / 2月10日(金)
■実験内容:中学1年生28名を対象に、英単語75問の事前テストを実施し、学力が均等になるように以下3グループに分ける。
- 「60分学習」グループ(10名、60分×1セット)
- 「45分学習」グループ(10名、45分×1セット)
- 「15分×3 (計45分)学習」グループ(8名、15分×3セット、7.5分休憩×2回)
- 中学1・2・3年生の範囲の英単語150語を、グループ毎に学習時間を変えて覚える。
- 実験中は定点カメラ・目線カメラで身体の動きや目線をモニタリング。※2名は脳波計を用いて実験中の脳波を測定。
- 実験の当日・翌日・1週間後に、学習した英単語の中から75問を出題する事後テストを実施。