【クアラルンプール聯合ニュース】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏がマレーシアで殺害された事件に絡み、北朝鮮とマレーシアの対立が激化している。国交断絶の可能性も指摘されるほどだ。特にマレーシアでは、北朝鮮が7日に自国に滞在するマレーシア人の出国を禁じたことで反北朝鮮ムードが一気に広がった。
マレーシアのナジブ首相はインドネシア訪問を切り上げて帰国すると、国家安全保障会議の緊急会合を開き強硬対応を宣言した。現地メディアによると、ナジブ氏が国家安全保障会議の緊急会合を開くのは2009年の首相就任後初めて。
ナジブ氏は「事実上わが国民を人質に取る行為は国際法と外交慣例を無視するものだ」と北朝鮮を強く非難。マレーシア国民の無事帰国に総力を挙げるとした。
ジャマルディン青年・スポーツ相も自身のツイッターで、北朝鮮に出国禁止措置の即時解除を求めた。
マレーシア華人協会(MCA)の関係者は「北朝鮮がおこがましくもマレーシア市民を人質に取った。マレーシア人は団結して北朝鮮に対応すべきだ」と主張した。
ソーシャルメディアでは「マレーシアは国際規範と法に基づき強力に対応すべきだ」「北朝鮮の嫌がらせに屈することなく、マレーシアが団結すべきだ」などの意見が相次ぐ。ただ、外交関係はまだ維持されているだけに、対話を求める意見もある。
現地のある専門家は、北朝鮮に影響力を行使できる中国に仲介の役割を期待する。別の専門家も「国連に持ち込むこともできるが、時間がかかる上、北朝鮮が国際機関の圧力を無視するのはほぼ確実だ」として、中国の働きかけの必要性を指摘した。
一方、マレーシアは北朝鮮からの不法滞在者の取り締まりに乗り出した。サラワク州の当局が7日、北朝鮮労働者37人を不法滞在の疑いで逮捕した。
現地の北朝鮮人の間には不安と動揺が広がり始めている。現地紙「ザ・スター」は、ジョホール州の北朝鮮労働者が帰国や第三国行きを希望していると報じた。
マレーシアに滞在する約1000人のほとんどが、炭鉱や建設現場、飲食店などで働く出稼ぎ労働者とされる。