【ワシントン=芦塚智子】米政府がサイバー攻撃への対抗措置に動き出した。26日に成立した暫定予算法に中国製のIT(情報技術)機器の政府調達を制限する条項を盛り込んでいたことが28日分かった。製品に仕込まれた部品やソフトを利用したスパイ行為やハッカー攻撃を防ぐ狙いだ。
米国では民間の通信インフラから中国企業を排除する動きも出ている。サイバー攻撃を否定する中国側は撤回を求めており、米中の対立に拍車がかかりそうだ。
中国の企業や子会社が製造や組み立てた製品の危険性を2013会計年度(12年10月~13年9月)の暫定予算法の条項に盛り込み、調査を義務付けた。対象となるのは商務省、司法省、航空宇宙局(NASA)など。パソコンなどIT機器やソフトを調達する場合に米連邦捜査局(FBI)などと協力して「サイバースパイ行為や破壊工作の危険性」を審査する。
この条項について中国外務省の洪磊副報道局長は28日の記者会見で「中国企業への差別的な措置」としたうえで「米中の相互信頼のためにならない。経済貿易関係の障害となる。米国にはこうしたやり方をやめるように求める」と反発した。
一方、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は28日、ソフトバンクによる米携帯電話3位のスプリント・ネクステルの買収を審査している米政府が、中国の通信機器メーカーの製品を使わないことを承認の条件とする方向だと報じた。
同紙によると、米政府は買収承認にあたり、ソフトバンクとスプリントが主要な通信網に使う機器を購入する際には当局に事前に通告し、安全保障上の懸念がある場合には協力を義務付ける見通し。